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『悲しみバレンタイン-2』
上村は多摩西署の署長室に呼ばれていた。無精髭の残る顎や頬が、上村のショックを物語っているようで、とても痛々しかった。
「暫くの間、自宅謹慎を命じる」と署長の元田が上村に告げた。
「署長」
「何だね?」
「謹慎を一ヶ月、いや、二月十四日まででいいんです。そこまで先延ばしに……十五年の節目だけでも」
「君は自分の立場を分かってないようだ」
「……」
「君は事件の重要被疑者である藤田哲平を死なせてしまった」
「あれは……」
「過失かも知れない。が、そんな言い訳は、少なくともこの警察内部では通用しないし、世間一般相手には更に通用しない」
「……」
「懲戒免職でもおかしくないところを……謹慎に止めたんだ」
「……」
「これ以上、私に恥をかかせないでくれないか」
「……」
「以上。行っていい」
「……失礼します」と上村が敬礼をし、部屋を後にするのであった。




