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彼女の消えた、春。  作者: 日下真佑
9/23

9土曜日

いつもありがとうございます。

年齢不詳?の美祈の母との土曜日です。

どうぞお楽しみください!

「お母さん、これ可愛いね」

雑貨屋さんを一通り見た後、隣にある可愛らしい服屋へ行くと、美祈みのりはデニムの膝丈のフレアスカートを見つけて母親を見る。清楚で落ち着いた女性らしいデザインで、美祈によく似合いそうなスカートだ。

母親はそんな美祈に愛おしそうに微笑むと、さっとスカートを手に取り、サイズを確認する。

「みのちゃんはMサイズだから、これでいいね。とっても素敵なスカートね。私もお揃いしちゃお」

まるで女子大生みたいにきゃっきゃっと嬉しそうに、スカートの並ぶ棚を物色すると、Lサイズを見つけて手に取る。うちの母だったら、とてもこんな若い子向きのデザインのスカートは履かないだろう、と弘人は思った。だって、母はもう四十五歳だ。しかし、目の前にいる美祈の母親と名乗る女性は、どう贔屓目に見ても、三十代にも見えない。本当に女子大生と言ったって、通る見た目をしている。

「他に欲しいものある?このブラウスとか、可愛いよね?あ、こっちのニットも似合いそう」そう言うと、母親は美祈がちょっとでも欲しそうにした服を、数枚、さっさと手に取り、レジへ向かった。

「じゃあ、ランチとお茶しようか?」

買い物が終わると、母親は気前よくお昼ご飯をご馳走してくれた。デパートの向かいにあるオーガニックカフェでパスタランチを頂くと、そのまま近くのカフェでお茶をする。お茶が終わると、再びデパートに戻って買い物が始まった。文具に、雑貨に、靴に鞄…母親はぽんぽんと気前よく、美祈のものを買ったり、弘人と美祈とお揃いのものもいくつか買ってくれた。

弘人はその都度母親にお礼を伝えながら、緊張した面持ちで母娘の買い物について行った。これじゃあ、デートじゃなくて、お供だな、と思いながらも、悪い気はしなかった。

 夕方になり、ようやくショッピングが終わると、母親は一人で家に帰ると言い、突然弘人に深々と頭を下げた。

「甘川君、今日は長い時間、お邪魔してごめんなさいね。どうかこれからも美祈のこと、宜しくお願いします」

「いえ、こちらこそ。宜しくお願いします。今日は色々ありがとうございました」

慌てて弘人も頭を下げると、母親は嬉しそうに微笑みながら美祈を見る。

「じゃあね、美祈ちゃん。またね」

「お母さん…」

手を振りながら地下鉄の駅に消えていく母親の背中を、弘人は美祈の隣でじっと見つめた。

それから毎週のように土曜日は、美祈の母親と三人でショッピングをしたり、お茶やランチをした。が、半年くらい経ったある日、ぱたんとそれは無くなった。そして母親が美祈の前に現れることは、二度と無かった。


 それからも、弘人と美祈は秘密の同棲を続けながら、勉強を頑張った。お陰で、無事志望校である大学に合格し、高校の時と同じように、二人で大学の入学式に行った。

 大学に慣れると、二人でファミレスのアルバイトも始めて、大学の講義以外はいつも一緒にいた。そしてあっという間の四年間が過ぎた三月。弘人は無事念願の新任教師として、見知らぬ街の中学校へ赴任することが決まった。

「おめでとう、ヒロ君」

学生最後の夜、美祈はとっておきのご馳走を作って、弘人の角出を祝った。本当は二人とも、卒業式の後、ゼミの仲間達に呑みに行くように誘われていたけれど、弘人も美祈もそれらを全て断って、真っ直ぐ家に帰って来た。

「みのちゃん」

いつものように、美祈を後ろから抱きしめると、背中の半ばまである長い髪に顔を埋める。パーマもカラーもしていない、柔らかくて真っ直ぐな黒髪は、初めて出会った高校生の時のままだ。ほんのり香るシャンプーの香りを堪能するように、弘人はゆっくり目を瞑る。

「ヒロ君…ん…」

髪にあたる弘人の唇の感触に、美祈は思わず声を漏らした。弘人はそんな美祈を愛おしくて堪らない様子で抱きしめると、そのまま慣れた手つきで美祈のワンピースを脱がし始めた。

 


 




 





いつもありがとうございます。

これからも、よろしくお願い致します!

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