2 未花の両親
いつもありがとうございます。
まずは中田亨のストーリーからです。
そのうちもう一組が交差していきます。
宜しくお願いします!
翌日から、二人は当たり前のように一緒に行動することが増えた。
家が隣なので、学校へ行く時は勿論のこと、放課後部活が無い日は、いつも決まって一緒に帰った。休み時間は別々だったけれど、未花はクラスの女子ともあっという間に仲良くなり、楽しそうな笑い声をあげて、きゃっきゃっとはしゃいでいる姿に、亨はこっそり安堵した。
そんな毎日を当たり前のように繰り返すうちに、気が付けばいつの間にか親友みたいに仲良しになっていた。
未花は綺麗な子だったけれど、飾らない天真爛漫な性格のお陰で、女性と付き合った経験の全く無い亨でも、まるで昔から知っていた男友達と同じように気楽に付き合うことができた。
「亨君、今日の数学の授業のところ、分かった?」
ある日の放課後、一緒に乗ったバスの隣の席で、珍しく未花は浮かない顔で聞いてきた。
「分かったよ。未花ちゃんは?」と聞き返すと、ぱっと顔を輝かせて、鞄から教科書を出す。
「私、数学あまり得意じゃないから、全然分からなくて…今日、うちで一緒に勉強しない?」
拝むように突然のお願いをされて、思わぬチャンス到来と嬉しくなった。
未花と他愛もない学校の話や、家のことを話すもの楽しいけれど、もっと仲良くなりたくて、でもどうしたらいいのか、亨には全然分からなかった。
でも、勉強なら得意だ。一緒に勉強して、数学の分からないところを教えてあげたら、きっともっと未花と仲良くなれるかもしれない。
「俺はいいよ。でも未花ちゃんの家は、突然お邪魔してもいいの?」
遠慮しながら聞くも、未花は全く問題ないとばかりに力強く頷く。
「勿論!うちはね、パパとママがいつもいるけれど、友達みたいに気さくな人達だから気にしないで。是非うちで勉強しようよ!じゃあ、このままうちへ一緒に、ね?」
「うん。ありがとう。じゃあ、一応、このままじゃ荷物も多いから、家に帰って荷物を置いてすぐ行くよ」
「了解!楽しみだね!」
わくわくしながら微笑む未花の屈託の無い笑顔に、亨は心から幸せな気持ちになった。
未花の家は亨の家の隣だ。荷物を置いて、数学の教科書とノートだけ小さな鞄に入れると、夜にこっそり一人で食べようと買っておいたポテチを持って、チャイムを鳴らす。すると、未花が可愛らしい声で返事をした。
「はーい、亨君!上がって」
手招きされるまま、挨拶をして玄関を上がると、ふわっと柑橘系のハーブの良い香りに癒される。しかし、
「いらっしゃい。ゆっくりして行ってね」
そう言って出て来た未花の母親の顔を見て、亨は思わず目を見開いた。
何故なら未花は高校二年生だから、今年で十七歳だろうに、何と母親はどう見ても三十歳前後にしか見えなかったから。
しかも、さらに驚いたのは父親だ。玄関を上がって、ダイニングキッチンのテーブルに座る父親はどれだけ凝視しても二十代後半にしか見えない。今日は仕事が休みなのだろうか?まるで学生がどこかへ遊びに行くようなラフな服装で、本を読んでいる。
「お邪魔します」
亨が挨拶すると、すっと本から目を上げて、いらっしゃいと、にこやかに微笑む。
どう見てもまるで、お兄さんじゃないか?
びっくりしながら未花の部屋に入ると、亨は思い切って、未花に尋ねた。
「お父さんとお母さん、凄く若いね」
「うん、亨君が聞いたらびっくりする年齢かもね」
そう言うと、さっと用意していた数学の教科書とノートを開く。
「そんなことより、亨君。数学お願い!これどうしても分からなくて…」
「あ、ああ。そうだよね」
気が付けば腕時計は五時を指している。
あまり遅くなっても迷惑をかけてしまうだろうから、とりあえず勉強は早くやろう。
亨はそう決めると、未花に分かりやすく、今日習ったばかりの数学を教え始めた。結局七時まで勉強して、亨は家に帰った。そして翌日も一緒に勉強して、気が付けば部活の無い日はほぼ毎日、未花の家で勉強するのが日課になっていた。
未花の家に行く度に、彼女の両親はいつもいた。
未花の話では、今は仕事をしていないらしい。病気じゃなさそうだし、とても気さくな良い人達だったことから、いつしか未花の家はお金持ちで働かなくても生活していける、家賃収入みたいなのがあるんだろな、と思うようになっていた。
いつもありがとうございます。
これからも、よろしくお願い致します!