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彼女の消えた、春。  作者: 日下真佑
16/23

16すれ違い

いつもありがとうございます。

今日もどうぞお楽しみください!

「…瑞希さん、偶然だね」

つとめて平静を装う声に、何でお前がここにいるんだよ?という苛立ちが微かに含まれているのが分かり、未花は咄嗟に身を竦める。

「あ、あのぅ……ちょっと病院の薬を貰う帰りなんです」

緊張しながら未花が答えると、亨ははっとしたように目を見開き、いつもの教師の顔に戻った。

「そうなんだ。一人なの?お母さんは?」

「母は、隣の店にいます。あの、先生…お話したいことがあるんだけど、ちょっといいですか?」

「いいよ。何?」

作り笑顔のまま首を傾げる亨に、未花は勇気を出して本当のことを伝えることにした。

「あの…先生、最近私、何か先生の気に障ることをしましたか?最近、先生に避けられている気がして…違っていたら、すみません」

一息に言い切って俯く。こんな心の底の気持ちを言葉で伝えるなんて、本当に勇気がいるし、緊張する。

しかし亨は、そんな未花の心とは裏腹に、作り笑顔のまま、冷たい目で未花を見た。

「別に…そんなこと、無いよ。気のせいじゃない?」

「い、いえ。気のせいじゃないと思います。先生は最近何だか、私に冷たくて…やっぱりなんかあるんじゃないかって…もし何か失礼なことをしていたら、ごめんなさい」

「そんなこと、全く無いから。本当に気にしないで」

うっとおしいのか、忙しいのか、半ば怒った口調で言うと、亨は形ばかり未花に微笑むふりをして、さっとレジの横のコーナーへ向かった。どうやら学校で使う文具を物色するらしい。しかし、未花も負けてはいなかった。すかさず亨の前に回り込むと、真っ直ぐその顔を見つめる。

「待ってください。先生!先生は何で私のことを避けるんですか?私、ずっと先生が大好きなのに」

しかし、亨の返事はこうだった。

「瑞希さん、ごめんね。俺は教師だから、瑞希さんの元彼じゃないから」

そう言うと、亨は籠に入れた缶チューハイを手早く元の場所に戻し、未花を振り切るように、足早に店から出て行こうとした。

「待って、亨君!私、高校二年の途中から転校してきた未花だよ?一緒に高校へ行った、小坂井未花だよ?同じマンションに住んでいて、隣に可愛いカフェがあって。亨君も一緒に行ったよね?」

勇気を振り絞って昔の記憶を伝えてみる。しかし亨は一瞬びくっとして息を呑むも、必死で平常心に戻ったらしく、ぶっきらぼうな声で言った。

「知らない。それは多分、俺じゃないから」

「いや、クレープの美味しいカフェに行ったのに、いつもポテトばかり食べたよね?ね?亨君!」

「知らないってば!そんなの。誰か人違いじゃないの?ポテト好きな人なんて、ごまんといるだろ?じゃあ明日、学校で」

あくまで振り切って入口へ向かおうとするのを見て、未花はじわっと涙ぐむ。

何でしらばっくれるの?

いい加減、ちゃんと私のこと見てよ、亨君。

すると、いつの間にか体は瑞希に変わり、気が付いたら亨の後を足早に着いて行った。

「先生、待ってください!」

瑞希が未花の声真似をして何度も叫ぶと、何回目かにようやく、亨は立ち止まった。

しつこいなぁ、いい加減にしろよ?と思う気持ちを押し殺しながら、面倒臭そうに振り向くのを見て、瑞希は目を細める。

「中田先生、ちょっと大事な話があるんですけど、少しだけお時間頂けませんか?」

「ごめんね。今忙しいから、また明日以降で」

逃げるようにドラッグストアを後にしようとする亨を見て、瑞希は思わずその腕を思い切り掴んだ。







いつも読んでくださいまして、本当にありがとうございます。

これからも、どうぞよろしくお願い致します!

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