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漫画原作(未作画)

雄太は山に登った【シナリオ形式】

作者: 阿僧祇

一定の制約下で商業誌投稿漫画を想定した原作シナリオを書き、お互いの作品で批評の練習をして物語に含まれたメッセージの答え合わせをする、というお題に対して書いた練習作です。個人的には執筆に当り、ストーリーを楽しませることよりも的確な批評をしやすいように書くことを優先してました。

しかし、数人いた参加者のうち指定されたこの題名から主人公が実際に登山する話を書いたのは僕だけで、ストレート過ぎたのかなあとも思いました;


■主要登場人物


如月浩志:主人公。登山の趣味がある。

田中雄太:如月の親友で、山の仲間。


弁護士:


串田菜由:同僚のOL。のちに田中の妻となる

 ○高速道路を走る車中

  資料を見ている弁護士。

弁護士(M)「…殺人、か。」

運転手(前を見たまま)「やな事件が多くなりましたね。」

弁護士「人殺しにも事情はあるさ。だから弁護士に仕事がくる。」


 ○拘置所

  その車が止まる。

  弁護士、車から出て、コートの襟を立てる。

弁護士「まだ寒いな…」

  そこは拘置所の前だった。季節は晩冬。


T「雄太は山に登った」


 ○山中、夜

  (実は回想ですが、まだそうとはわからないように)

  山に吹き荒れる吹雪。そこは冬の雪山。

  岩棚に簡易テント(ツェルトかメッセナーテントが望ましい)が張られている。 

  テントの中では二人の登山者が、それぞれ寝袋の中に。(如月と田中)

  田中は眠っている。(ように見えるが、実は既に死んでいる)

  如月は田中を一瞥する。

如月「あいにくの天候だ…」「ま、女心と山の天気って言うし。こういうこともあるさ。」「でも、今回の登山にはふさわしい天気だよ…なあ?」


  如月は、上を向いて歌を口ずさみ始める。

如月「♪雪よ岩よ 我らが宿り 俺たちゃ 町には 住めないからに…」

  (上記が望ましいが、著作権の問題がある場合は以下にオリジナルの歌詞

 「♪雪を踏みしめ岩を越え 山男はめざす頂上へ ヤッホー ヤッホー…」)


 ○回想、別の山中…夏山

  (回想のさらに回想…今度は回想に入るとわかるように。)

  如月と田中が岩登りの最中。

  ハンマーでハーケンを打ち付け、

  ロープを握って

  岩場を縦走する。


 ○そして夜

  テントの中、ランタンの灯かりで、如月と田中は地図を見ながら打ち合わせ中。


 ○翌朝、山頂

 頂上の岩の間に、名前を刻んだ小さな木切れが。

木切れ「●●大学山岳部 田中浩志&如月雄太 XX年8月12日」

  山頂で、ボロボロに汚れた二人が夜明けを眺める。

田中「いずれ死ぬんなら、山がいい…自然の中で死にてえなあ。」

如月「同感だ…俺もベッドより山の方がいい。」

田中「気が合うな!」

如月「ハハハ!!」


 ○卒業後(春)

  (以下、サイレントでダイジェスト風に)

  新社会人となった如月と田中は、スーツ姿で上機嫌で桜の道を歩いている。

  

 ○会社

  田中は電話をとりメモ中、如月はバッグを抱えて飛び出していく。


  OL姿の菜由、二人にコーヒーを出す。

  田中と如月、争うように菜由と談笑。

 

 ○町中(夏)

  菜由の肩を抱いてデート中の如月、後ろに向かってアカンベ。

  後ろでは田中が地団太踏んでる。


 ○居酒屋

  悩み顔の菜由。田中が親身に話を聞いている。


 ○夜の町(冬)

  秋が降ってる。

  駅前のイルミネーションの下、菜由が泣いている。

  懇願するような顔の如月。

  しかし、菜由は首を横に振る。


  電車が通過していく。


 ○結婚式

  みんなの祝福を受ける、ウェディングドレス姿の菜由。

  その隣に立っていたのは、田中だった。

  (サイレント、ここまで)


 ○雪山

  雪が積もっているがいい天気。

  如月は、テントを張って、その前で焚き火中。

  顔が、脱力感にあふれている。

  が、その時


田中「オーイ!」 

如月「雄太!?」


 驚いて振り向くと、田中は如月を追って登ってきたのだった。


田中「俺達は、仲間だろ。何があっても。」「結婚しても、転職しても、たとえ死んでも山の仲間だろ!? …お前が嫌じゃなければだけど。」

如月「…嫌なわけ、ねえだろ!」


  二人は肩を抱き合う。

  如月の目に涙。

  二人は歌った。


如月「♪シール剥がして パイプの煙宿り 遥かな尾根に 春風そよぐ…」

  (著作権の問題がある場合は以下にオリジナルの歌

 「♪テントに当たるよ風の歌 明日は向こうの頂きへ ヤッホー ヤッホー…」)


 ○如月の自室

  年月が流れていく

  如月は自室でコーヒーを飲んでいた。カップはわざとコッフェルだ。

  如月、カレンダーを見ながら

如月「最後の山から、もう3年か…早いな。」

  電話が鳴る。

如月「はい…ああ、奥さ…あいつが入院!?」


 ○病室

  如月、拳で壁をたたく。

如月「三ヶ月、かよ…あと!」

田中「こんなことなら、お前に譲って……」

如月「バカヤロッ! 彼女が選んだのはお前なんだ、気弱になるなよ!」

田中「でも…もういっぺん、あの山へ行きたかったよ…」

  如月、思い出したように 

如月「そうか…お前、山で死にたいって言ってたもんな。」

田中「今でもそうだよ。3ヶ月の命を1日と取り替えてもいい、もう一回あの日の出を見たいよ…。」

如月「……。」


 ○列車の中

  如月、登山装備で夜行列車のボックス席に乗っている。

  その対面には、苦しそうに息をしている田中が。


 ○線路

  そして列車は、冬の雪山へ向かう…。

  (2番目の回想終わり)


 ○山中、夜

  吹雪が荒れ狂っている。それはもう悪魔の咆哮のように。

如月「ひどい吹雪だ…」

田中「…でも、子守り歌に聞こえる。俺達は大自然に抱かれてるんだ…」

如月「そうだな。大自然のベッドだ。」

田中「…少し疲れたよ、浩志。」

如月「だろうな…明日は晴れるそうだ。ゆっくり休めよ。」

田中「うん…」


 ○山中、朝

  吹雪がやんで日が昇った。


  テントから出てきた、如月、感動して叫ぶ。

如月「雄太、すごい日の出だぞ! 起きろ!」

  しかしテントから返事はなく、

如月「…雄太?」

  寝袋の中で微笑している田中は目を開けなかった。(死んでる)


 ○町

  担架に田中の遺体が乗せられている。

  如月は手錠をかけられ、警察に連行されていく。

菜由(泣きながら)「人殺し! 殺人者!」

  菜由は如月にとびかからんばかりだが、警察の人たちに制止されてる。

  如月、驚いて振り向く。

  が、呆然として何も言えないうちに、刑事に促される。

  (最初の回想、終り)


 ○拘置所の面会室

  如月、弁護士と向き合っている。

弁護士「なるほどね…」

如月「裁判は、やはり殺人罪ということで決まりそうですか?」

弁護士「雄太さんとあなたの会話は、あなたの証言以外に証拠がありません…仮にあっても、自殺幇助ですけどね。」


看守「そろそろ時間です。」


弁護士「…じゃあ私は帰ります。他に何か言うことはありませんか?」

  如月、少し考えてから

如月「あの女性(ひと)に伝えてください。」

弁護士「何て?」

如月「雄太は山に登った…って。」

弁護士「『雄太は山に登った』? …それだけですか?」

  如月は、すがすがしい表情で微笑して言った。

如月「ええ。雄太は山に登った、と…。」


 ○想像


  笑いながら雪山を歩く、如月と田中の姿。

声「♪山よさよなら ごきげんよろしゅう また来るときにも 笑っておくれ…」

 (著作権の問題がある場合は以下にオリジナルの歌

 「♪登って下ってまた登る また来ようこの頂きへ ヤッホー ヤッホー…」)



   ~ 完 ~



■メッセージの模範解答

この作品のメッセージは、「幸せな死に方とは人によって違う」ということです。

そして「それを理解できる人は恋人や連れ合いとは限らない」という、やや恋愛否定的なサブテーマも描かれています。




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