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竜の丘の茶藝館  作者: 小津 岬
第一話
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竜紋玉の約束(七)

「おつかいありがとう、リリンちゃん」

 茶を注ぎながらロクハが声をかけた。弟は背負っていた包みを下ろすと、

「それより、こっちを選ぶ方が大変だった」

と土産を卓に置いた。水晶をはめた飾り櫛と、桃色の丸石が連なって揺れるかんざし。華美ではないが実に魅力的な形をしている。ロクハは一目見るなり目を輝かせた。

「わあ素敵! さすが一真様、分かっていらっしゃるわね」

 リリンは碗を取り上げながらぼやいた。

「何がどう違うんだい。あまり変なものは買いたくないが、悩んでるうちに全部同じに見えてくるし疲れたよ」

「いえいえ百点満点です。さすがリリンちゃん」

 うきうきと土産を手にしたロクハは、はたとかんざしを見つめた。

「これ、冥狐めいこさんに似合いそう…… そうね、絶対」

 一人でうなずく彼女を見て、弟の眉がしょぼしょぼと下がった。

「僕は姉さんにと思って……」

 ロクハは慌てて手を振った。

「うん、とっても嬉しい、大事にする! でも、冥狐さんにもこの可愛いのあげたいなあ。いつもお世話になってるもの。ね?」

 小さな姉の頼みに、リリンは肩をすくめた。

「まあ、いいよ。ちょうど来たみたいだし」

 トントンと、軽やかに扉を叩く音がした。すり硝子の向こうで、結い上げた髪が影になって見える。

「ご免下さあい……」

 物憂げに伸びた馴染みのあいさつに、ロクハはにっこりと笑った。リリンがぶっきら棒に「開いてる」と答える。ゆっくりと扉が押される。

「ようこそ、おいでませ」

 二人は、声を揃えて客を迎え入れた。



                           (第一話 了)


最後までお読みいただき、ありがとうございます。

第二話は二つの恋のお話になります。

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