月に代わって
きくゑは丸薬の効果によって追手の位置をぼんやりと捕捉出来た。
時間が経つにつれてはっきり分かってくる。
上空から見るような感覚。
目を閉じるとさらに鮮明に見える。
拡大縮小の処理速度に一切遅延が無い地図アプリ。
拡大すれば無数の虫の一匹一匹すら見える。
逆に縮小し続けると地球が丸いと分かった。
地球に魅入っていても追手が遠ざかる感覚がある。
きくゑにとっては赤子が消えたまま外に出るのは不自然だったのだが、
追跡を止めてくれて助かった。
敵は神社に何らかの縁があるとは思うだろう。
もう月影は殺せたのだから、
あとは神社がただ捨て子を保護するだけの施設なら引き上げるかもしれない。
赤子など泣くだけで何も説明できないのだから。
それに神社が忍びの組織ならば今度は追われる身となる。
敵に深追いする理由は無かった。
■
きくゑは遠ざかる仇を意識しながら月影の死体を見つめた。
このままでは赤子は消え、引きこもりの神主が死んだ事になる。
神主として葬式を行ったら神主=月影と敵にばれる。
神社の家族が月影の関係者とばれる。
誰かに報告される前に仇討ちする必要があるのだ。
きくゑは境内で月影の忍び装束に着替えた。
凶器の毒クナイを持って神社を出て仇を追う。
きくゑは月影になった。




