御影①「あなたを頼りにはしていない」
I.D.への入会手続きを終えた私は、その翌日に再び会議室0へと呼び出されていた。
昼前に遠矢さんから電話があり、I.D.メンバーの顔合わせを兼ねた集会があるから部室に来るように、といつもの調子で言われたのである。
あのゆったりとした口調の裏で、彼が本当は何を考えているのかは、私にはまだ分からなかった。
部室棟の前まで来ると、そこで隠君に出くわした。
彼は涼しい顔で私を見ると、なんとなく腹の立つ笑顔をこちらへ向けた。
「やあ藍原さん。僕だよ」
「おはよう隠君。今日からよろしく」
三日目にしてやっと隠君のペースが掴めてくる。
要するに、彼は適当なことばかり言っているに過ぎないのだ。
いちいち一言一言に反応していてはキリがない。
「無事入会できたみたいでよかったねー。一回生は今のところ僕らだけだし、助け合っていこうじゃない」
「そうね。あまりあなたを頼りにはしていないけど」
二人でエレベーターに乗り、六階へと上がる。
そう言えば、私たちの他にはもう、一回生はいないのだろうか。
確か八雲さんの話では、三回生は三人、二回生は五人ということだったが、このままだと一回生は二人になってしまう。
いやしかし、入会条件が条件だけに、そうそう入会を果たす者はいないのかもしれない。
そもそも私たち以外に入会希望者自体、いたのかどうかも不明だ。
一応勧誘活動は行っているようだったが、成果はあったのだろうか。
「あのさー」
「なに」
「一昨日、廊下ですれ違ったとき、ちょっと泣いてた?」
「泣いてないわ」




