旦那様と執事な神様
さて土曜日から数えて3作目の
話は相変わらずの恋愛モノに
なりました。
またツッコミどころが多いと
思いますがどうかお付き合いください!!
「旦那様、本日のご朝食をお持ちしました」
と後ろから今日の朝ごはんが入った皿を置かれる。
「ありがとう、月詠さん」
俺は朝ごはんを持ってきた女性、月詠さんに
お礼を言った。
「いえ、これも執事たるもの当たり前です」
そう燕尾服に身を包んだ月詠さんは表情を変えずに
言ってきた。
ーー美少年と見間違える程端正な顔
ーー身長が高く、スレンダーな体型
ーー髪はセミショート
更に現在燕尾服に身を包んでいるためか
男性と間違えられやすい。
「ところで月詠さん」
「はい、なんですか?」
「ーー今、俺達2人きりなんだけど」
「……ッ!? それがどうかしましたか?」
一瞬、表情が変わったがすぐに戻し
まるで何事も無かったの様に振る舞う月詠さん。
「だから、さ甘えてくれてもいいんだけど……」
「旦那様は旦那、私は旦那様に仕える執事です。
それ以上でもそれ以下でもありません」
「月詠さん……?」
俺が笑顔で月詠さんを見ると
「……わ、私は旦那様のか、彼女です」
顔をほのかに赤らめ恥ずかしいながら言ってきた。
「うん、そうだよね。よく言えました」
僕は月詠さんの頭を撫でた。
「だ、旦那様!? こ、これは一体何を!?」
さっきまでのポーカーフェイスはどこにいったのやら
一気に顔を赤くする月詠さん。
「いやなんか頭を撫でたくなっただけだよ。
撫でられるの嫌?」
「い、いえ!! そんな事は全く!?全く無いです」
「なら、よかった……嫌だったらどうしようって
思っていたんだ」
「そ、そんな訳ありえません!!
逆に私ごときが旦那様に頭を撫でてもらえるなんて
申し訳ないです」
「"私ごとき"じゃないでしょ?だって月詠さんって
ーー神様なんだから」
「今の私は神ではありません。旦那様に仕える
執事であって……」
「月詠さん?」
「旦那様のか、彼女です……恥ずかしいですよ……」
今俺の隣で顔を赤らめ照れている執事兼彼女である
月詠さんはれっきとした神様である。
しかもあの月読命という偉い神様であるから驚きだ。
確か男の神様だった様な気がするけどそんな細かい事は
途中から考えるのをやめた。
だって……
「だ、旦那様はわ、私を虐めて楽しいんですか……?」
といつものクールな表情とは真逆なジト目で見てくる
月詠さんを見ていたらどうでもよくなってくる。
……可愛いのは正義だからね。
「ごめんって月詠さん」
なお呼び方だが本来の名前である月読命から
月読命
→月読
→月詠さん
という経緯を経て、今に至る。
意外と月詠さん自身は気に入っているらしく
文句を言われたことは無い。
……逆に月読命さんと呼ぶと俺しか分からないぐらいだが
不機嫌になる。
では、何故俺がそんな偉い神様とこうして付き合って
いるのだろうか?
元々、俺の実家はかなりの金持ちだった。
そこに執事として何故か月詠さんが働いていた。
俺は昔から月詠さんがカッコいい姿が好きで
いつからか彼女を恋愛の対象として見るように
なっていた。
……色々と見合い話がやってきたが全部断っていたのも
月詠さんと付き合いたかったからだ。
だが父と母が死んでからしばらくして
俺の実家は謀略によって一気に没落してしまった。
沢山いたメイドや執事達も次々にいなくなり
残ったのは月詠さんだけになった。
当時の俺はかなり自暴自棄になり月詠さんに
お暇を出そうとした。
優秀な彼女ならどこでも大丈夫だと思い
お暇を出そうとした。しかしその日俺は彼女から
驚愕の真実を告げられた。
"私はどこにも行きません!!
何故なら旦那様を執事の身分ですが
お慕いしているからです!!
ですのでこれからも私が旦那様のお側に
仕えさせていただくことをお許しください……!!"
俺はその時月詠さんがこんなに感情的になるのを
初めてみた。
“こんな俺でいいのか……?”
“はい、貴方様だから私は好きなのです。
私は貴方様以外には仕えたくありません”
“奇遇だな、俺も月詠さんが好きだ”
“えっ……”
俺達はその時から付き合い始めた。
なお月詠さんが月読命という神様である事を
知ったのもこの頃だ。
……というか何で俺なんかがこんな偉い神様から
好意を抱かれているのか未だに疑問だ。
その後は2人で俺の家の別荘で暮らしていた。
元々、父の遺産の一部をとある場所に隠してあり
没落した際にもこの遺産は見つからずに済んだ。
……まぁ遺産の一部といっても俺と月詠さんの2人なら
一生働かずに暮らしていけるだけの金はあった。
その後、“元”俺の一族の会社を助けた事による
成功報酬と役員報酬をもらい、俺は若くして
隠居生活をしている。
そして今日も月詠さんとゆっくりと隠居生活を
楽しもうとしたのだが……
「ん? なんか外が騒がしいな」
「私が確認してきましょうか?」
「いや、あれは……」
と俺が窓の外から騒がしい原因を見ると
そこには黒塗りの高級外車が止まっていた。
「あちらは確か旦那様の……」
月詠さんが何か言おうとしていると
ドアを勢いよく叩く音が響いた。
「私が相手してきましょうか?
ーーなんなら私が追い払いますが」
「いや、俺も見に行くよ。
ついてきてもらえる?」
「はっ」
俺達は玄関の方に向かった。
そしてドアを開けてみるとそこには……
「御機嫌よう、旦那様」
「やぁ元許嫁」
俺の元許婚がうやうやしくいた。
「貴方様は今更何をしにきたんですか」
と月詠さんは声のトーンは変わらないけれども
明らかに憎しみのこもった目つきで元許婚を見ていた。
「あらら随分怖い女だこと。
旦那様、貴方に話があるの」
「いい加減にしていただけませんか?
貴方はあの時……!!」
「月詠さん、落ち着いて」
「はっ、これは旦那様の前でご無礼を……」
「いや俺はいいよ。
ーーとりあえず話は聞こうか。ここで立ち話は
なんだし中に入りなよ。
月詠さん、お茶の準備を」
「……かしこまりました」
月詠さんは渋々といった様子だった。
そして俺と月詠さん、元許婚とその取り巻き数人は
客間で机を間に挟んで対峙していた。
「で、話はなんだい? 出来れば手短に終わらせたい」
なんせ月詠さんとその大事な時間だからな。
「では、さっそく本題に入るとするわ。
ーー私達、もう一度やり直さないかしら?」
「はっ?」
「貴方様はいきなり来て何を言いだすと思えば……!!」
「だから月詠さん、落ち着いてって……
で、いきなりなんでそうなった?」
「ほら、貴方と私って許婚よね?」
「元だけどね」
俺の一族が没落した際に一方的に許婚破棄を
言い渡された。
「あの時はこちらも大変だったのよ。
それでこちらも落ち着いたし、貴方もかなり
偉くなったじゃないの。だからそろそろ私達
釣り合ってきたと思わないかしら?」
「貴方いい加減にしなさい!!
旦那様が一番辛い時に笑っていた癖に……!!」
「ーー貴方ごとき執事に聞いてないわ。
いや、貴方みたいな男勝りの女には
興味は無いわ」
「……っ!?」
「で、どうかしら? 私達やり直さないかしら?
お互い今度こそ上手くやれるとおもうのだけど?
ーー少なからず、そこの女よりも私の方が
貴方にお似合いだと思うわよ?」
と元許婚がいうと取り巻き達も頷く。
……こいつらは自分の意見は無いのだろうか?
「そうだね……」
と考えるふりをしてチラッと月詠さんを見た。
彼女は若干不安けな表情だった。
月詠さんにこんな表情は似合わない。
ーー照れた顔
ーー困った様に笑う顔
俺はそんな表情を見ていたい。
その為に俺が出来る事は……
「ねぇ月詠さん」
「はい、どうかされましたか?」
「ちょっとこっち来て」
と僕は月詠さんを手招きした。
「は、はい……?」
と不思議そうに俺の方に近づいて来た。
「ちょっと貴方、私を無視しないでもらえるかしら?
そんな男女みたいな執事より……」
「えい」
俺は近づいてきた月詠さんをそのまま抱きしめた。
「……ッッッ!?」
いきなり抱きしめられた月詠さんは顔がこれでもか
というぐらい顔が赤くなっていた。
「あ、あ、あ、あ、貴方、一体何しているの!?」
「ん? 何って彼女を抱きしめているのさ」
「だ、だ、だ、だ、だ、旦那様!?
こ、こ、こ、こ、これは一体何を!?」
完全にあたふたする月詠さん。
「貴方は私よりもそんな男女を選ぶのかしら!?」
元許婚は顔を真っ赤にして金切り声を上げた。
「俺が一番大変だった時期に君は俺を助けた?」
「あ、あれは……貴方の実力を図ろうとして」
「だろうね。君は見ているだけだった。
ーーでも月詠さんはこんあ俺を助けてくれた。
自暴自棄だった俺にさ。だったら普通どっちに
惹かれると思う?」
「で、でも!! 私の方が社会的にも身分は高めよ!?
そんな男女のどこが」
「ーーそれ以上、俺の大好きな彼女を
貶してみろ? 俺は君を許さない」
と強めに睨んでみた。
「ヒッ……!?」
元許婚は完全にビビっていた。
同じく取り巻きもビビっていた。
その後、元許婚と取り巻き達を追い出した。
「だ、旦那様」
「月詠さん、どうした?」
「……本当にいいんですか?」
月詠さんは申し訳なさそうに聞いてきた。
「いいって何が?」
「あの方の誘いを断ってしまって」
「あぁあれね。あんなんこっちから
断りを入れるよ」
第一、俺の彼女を貶した奴なんて死んでも
付き合いたくないし、結婚なんて死ぬ方がマシだ。
「で、ですが……あの方は家柄も良いですし
見た目も私よりも女性らしいですし……
第一私なんか執事と……」
「何言ってんのさ」
俺は月詠さんの額にデコピンを軽く入れた。
「痛っ」
「俺は月詠さんだからいい。
あんな奴よりも俺は月詠さんがいいんだ」
「ほ、本当ですか……?」
「あぁ、本当さ」
「……信じていいですか?」
「うん、信じてくれ」
「では分かりました。旦那様の言葉を信じましょう。
……そしてありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ
ーーあっ、そう言えば……月詠さん、俺宛に
小包届かなかった?」
「小包ですか……? あっ、そう言えば今日の朝
届いていましたね。取ってきますね」
「うん、お願い」
「かしこまりました」
と玄関の方に荷物を取りに行く月詠さん。
そしてしばらくして戻ってきた。
「旦那様、これは一体なんでしょうか?」
月詠さんは不思議そうにその小包を見ていた。
「実はそれには何も入ってないんだ」
「はい……?では、一体何を……?」
「月詠さん
ーー俺達別れよう」
「えっ……え、え、え……だ、旦那様……」
と一気に泣き出しそうな顔をする月詠さん。
そんな彼女の前に俺は片膝をついて
胸のポケットから隠し持っていた小包を
開けて目の前に差し出した。
「月詠さん、これからは俺の奥さんになって
もらえないだろうか?」
そこには指輪が入っていた。
「……ッ!? だ、だ、だ、だ、旦那様!?
い、い、い、一体これはな、な、何の戯れを……」
「遊びじゃない。俺の正直な気持ちだ。
俺がこんなところで嘘をつく人間に思えるか?」
「い、いえ!? 旦那様はそんな方ではございません!!
で、ですが……私なんかでいいのでしょうか?
ほら私は旦那様に仕える執事ですし……
私なんかよりも相応しい方が……」
「俺は月詠さんがいいんだ。
他の誰でもない執事兼彼女の月詠さんがいい。
それとも俺じゃ釣り合わない、かな?」
「い、いえそんな訳ありません!!
旦那様はとても素晴らしい方でございます!!
……本当に私なんかいいんですか?」
「うん、俺は月詠さんがいいんだ。
もしよければこの指輪を受け取って欲しい」
「はい……私なんかでよろしければ……!!」
と既に泣きそうな月詠さん。
こんな泣きそうな顔すら綺麗だと思ってしまう
俺はかなりの重症なんだろう。
だけど……
「これからも末永くよろしくお願いしますね。
ーー私の旦那様!!」
弾ける様な笑顔をこれからもみたいと思うのは
男として普通なんだろうな。
俺はこの執事兼奥さんの神様とどんな生活を
していくのだろうか。
ただ1つ言える事がある。
それはこれからの人生はとても幸せなんだろう
という事だろう。
ーー隣にこの愛しい神様がいるのだから。
さて今までの短編三作品
楽しんでいただけたでしょうか?
読んでいく中で気に入った神様は
いたでしょうか笑?
一応私が考えたそれぞれの
神様の性格としては
アマテラス
→無邪気で明るい
スサノオ
→男勝りで豪快
ツクヨミ
→冷静だが照れ屋
こんな形になっています。
一応短編として書き上げましたが
もしかしたら連載作品となるかも
しれません。
もしそうなりましたら
どうかお付き合いしてくださると
とても嬉しいです!!