巡査になりました Ⅷ
その装置の内部構造は多大なる突起状のセンサーが搭載されていた。そこからは透過性の大きい光線が飛び交い、中の人間の情報をピクセル単位で分析していた。
「おお、凄いですね」
そして情報の分析が終わると、それを知らせる合図が鳴り、琴姫は出てきた。
「これで判定してくれるのです……か?」
中に入った琴姫としては特別何か受けた、あるいは何かをしたという実感が全くなかったのだ。ただジッと装置の中で突っ立っているだけであったから。
「安心なさい。最終的に形にしたのは他の人たちだけど、プログラミング組んだのは私だからね」
さも当然かのように普通のトーンで言った。
成瀬はサイバー警察になる以前からその手の技術はプロレベルだった。本人曰くただの趣味らしい。実際は色々あって此処にいるのだが。
「それで、お願いって何? 事件?」
「二年前なのですが……」
成瀬は聞くや否や小型端末を取り出し検索していた。
「これ?」
一分とかからずに琴姫に画面を見せた。
――――はやっ⁉︎
「そ、そうです」
『琴姫優華 二年前 事件』と検索されていた。そこにはその当時のことが記載されていたのだ。
「これも私が製作したんだけどね。キーワードを入れるだけですぐ見つけてくれるから楽よ」
琴姫は話を聞きつつ、その画面をマジマジと見つめていた。
「これは間違いないんですよね?」
成瀬の技術を疑っているわけではない。しかし、ファイルの中身が熊宮のものなのだ。
「ひめちゃんが言ってるのって、くまちゃんが人質事件になりそうな所を未遂で止めたって話でしょう?」
「俺?」
熊宮も驚いていた。まさか自分の名前が出てくるとは思っていなかったためである。
「やっぱりこの人に助けられたんですか……今思うと少し残念です」
「何でだよ⁉︎」
「そうよね。とんだ変態さんに助けられたら、外見よくてもダメよ」
「成瀬警部まで酷くないですか?」
「さあ、判明したんだし、さっさとお帰り。結果は後日あげるから」
「わ、わかりましたよ。そんじゃあ琴姫巡査、行くぞ」
琴姫はジト目で熊宮の背中を見ていた。
「な、なんだその目は」
「いえ…………何でもありません。行きましょう」
「今の間は⁉︎」
そうして審査は終了した。
帰り道の車内。
「それにしてもあの中から二名しか選ばれないのですか……異世界好きに関しては負ける気しませんけど、不安ですね」
琴姫はしみじみと呟いた。
いくら強みを持っているとはいえ、二百人も集まれば確率は必然的に高まる。琴姫はワクワクしながらも不安な様子で日々を過ごすことになった。