エピローグ
夕陽けに染まる空と、赤く染まった荒野が広がる景色。視界に映る赤い世界に異物があった。ヒトの形をしたそれらの異物は夕陽に赤く染められているが、その身につけられた革の防具にはもともとのそれ自体の色も見る事が出来る。
地面さえも血で染まった戦場にその男達は、自らの色を残していた。近辺の国では非常に珍しい黒髪と薄茶の瞳を持った男達。その体にはまんぞくな鎧はおろか剣すら身に付けていなかった。
男は今にも消えそうな己の命対する恐怖よりも、その者達に恐怖していた。
男は薄れ行く意識の中で、戦場によくある噂話を思い出した。
曰く、
ー隣国に武器を持たない死神がいるー
ー素手で猛獣を撲殺する黒の化物がいるー
一中隊を暗殺する暗殺者がいるー
ー剣も槍も果ては弓すら避ける優男がいるー
そんな戦場によくあるジョークの数々。己の身を守る盾と敵を打ち倒す剣のみを信じて戦ってきた兵士であった男には、これらの噂話は酒場の下らないよた話にしか聞こえなかった。
「何なんだ。何者なんだお前らは?」
それは答えを求めての問いではなく、眼前の不条理に対する憤りから漏れた言葉だったが、答えが返された。
「俺達か?俺らは格闘者だよ」
望んだわけではないが答えが返された。しかし、その答えは男をより混乱させただけだった。
「かくとう、ぎしゃ?」
混乱する男の様子を見て今度は先ほど答えた男とは別の男が言葉を発した。
「格闘者って言ってもあんたらには分からない言葉だよな。まあ、あっちの世界でも造語になるのか? でも仕方ないわな、俺達はもう格闘技者や武道家とは名乗れ無いものな。そうだな、あんたに分かる言葉で言えば素手の戦士とでもいいのかな?」
素手の戦士? ああやっぱり、悪い冗談だ。
男の意識はそれを最後に失った。