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第一話 何処へ行っても数学はしたいです

寺井真、21歳。京都生まれ大阪育ち。

洋楽を聴いたり数学を学んだり犯罪史に触れたりと割と多趣味。

小さい頃から天才ともてはやされたにも関わらず、学校の成績は常に下位10名をキープ。

実のところ学校の勉強ができるわけではなく興味本位で数学を勉強していただけ。

数学の才能だけで大学入試に通用するはずもなくFランへやむを得ず進学。

馬鹿しか集まらない学校に行く気は端からないので一日中自室にこもって数学。


そんな俺は。

20分前、通り魔に刺され命を落とした。



――――――――――――――――――――


「普通に聞いてる分には信憑性の欠片もあらへんのに信じてまうんが余計タチ悪い話やな、おい」


俺の目の前にはやたら体の大きい美女がいた。

身長は目測で3mほど。見た目年齢は20前後。

彼女が言うには、「自分は人の言う神のようなもので、お前は通り魔に刺されて死んだからここに来ている。ここは死者が次の転生先の希望などを言う場所だがお前はどうするのか」ということらしい。


「なんやねん通り魔て...あれか?アキバの通り魔、誰やったっけ...

せや!加藤智大や、ホコ天にトラックで突っ込んでナイフ振り回した奴。あんな感じで俺も殺されたんか?」


「そうね、トラックで突っ込んではいないけどナイフですれ違いざまに刺すような犯行だったわ」


「ほーん。そいつ何人殺したん?俺込みでな」


「12人よ」


「おおー、やるなぁ...池田小の宅間も8人かそこらやろ?これ割と戦後日本犯罪史に残る通り魔なんちゃう?」


「なんで貴方には殺人犯の知識がそうあるのかしらね」


「昔趣味で調べとっただけや、Wikiにも普通に載っとる話やろが」


俺からしたら単なる世間話なのだが女神様には割と引かれた様子。ちなみに戦後日本において死刑判決を食らった中で俺が一番好きなのはオウム真理教の土谷正実だ。頭の良さをうまく使った犯罪をしたという割かし単純な理由だが。


「まぁそんなんどうでもええわ。俺何したらええんやったっけ」


「21で死んだのに物忘れの酷い子ね...

えーと、貴方にはこれから"前までいた世界"とは違う別の世界で第二の人生を歩んでもらいます。

行きたい世界と転生後の容姿、年齢はある程度自由にしていいわ。

それと、なんでもというわけではないけど一つ願いを叶えてあげる。限度はあるけどね」


「割と自由なんやな。自由っちゅうたら俺ワムのFreedomって曲めっちゃ好きやで、ビールのCMに使われてたやつ」


「どうでもいいから早く選びなさい」


「はいはい...

えーと、容姿と年齢は今のまんまでええわ。転生後は...そうやな、やっぱり中世のファンタジー系やろ。ありきたりかもしれんけど、大勢が支持してこその王道やからな。それでええわ」


「承知したわ。願い事は?」


「俺の部屋にある筆箱とノートPC持ってくわ。向こうの世界でも充電したいから電気系の魔法とかあったらほしい。あと、生活に不便せえへん程度の知識と魔法もくれ。

間違うてもノートのHDD初期化とかすんなよ!なんぼ神様でもしばくぞ!」


「わかってるわよ...筆記用具とPCと充電ね。他にはない?あ、言っとくけど向こうにネットなんかないわよ」


「誰がネット使いたい言うてん、話聞いとんのかボケ。

まぁ願い事はそんなけでええわ、準備でき次第頼むで」


「神様に暴言はダメでしょ...

準備に5分ほどかかるわ、少し待っててね」



手持無沙汰な状態での5分というのは短いように聞こえるが割と長い。高校時代に試験勉強を放っぽりだして論文を書いていた時、眠気覚まし用のコーヒー37杯目を運んでいるとうっかり無線LANのルーターにこぼしてしまった経験があった。そのときに腹を満たそうとカップのうどんを作って待たされた五分と言ったらそれはもう長くて長くて気が狂いそうだったことを覚えている。確かあの時は、無心で読経していたら5分過ぎていたのだったか。

そんなことを思い出していると、女神様が体に似合った大きい声をかけてきた。


「準備完了よ。私の足元にある円の中に入りなさい」


「円?あぁよう見たらなんか光っとるな...

ほい、入ったで」


「それじゃ、行くわよ...」


不思議と元の世界に未練はなかった。大学をさぼって研究ばかりしていても名が世間に出るわけでもなく穀潰し扱いされて死ぬだけだったのが目に見えていたからだろうか。


「おう、何時でも来いや――――――」



威勢よく女神に言葉を告げた瞬間、俺の周囲は白い床から広大な田畑へと姿を変えていた。




















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