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#8
俺は静かに便箋を開く。
さっきとは違い緊張はしなくて済んだ。
何も変わらない文章をもう一度追いかけていく。
何が言いたいのかはさっぱりわからない。
先に飲み物をもらいに行っておくべくだったなと今更ながらに後悔する。爽やかにリラックスできるものを体が__頭が欲している。
さっきは辿り着かなかった二枚目の紙を開く。
流れ込んでくる無数の文字達を必死に捕まえる。
何度も零しそうになりながら、最後まで目を通す。
捕まえた言葉はすぐには意味を成さず、何度も反響して脳内に響いた。
やがてそれらは、大きな疑問となって俺を支配し始めた。
また、呼吸が追いつかなくなってくる感じがした。
だめだ、落ち着け。
しばらく手紙から目を背け、天井を仰ぐ。改めてみると、やはり見たことのある天井だ。少しずつ元の感覚が戻ってきた。
姉貴の方にゆっくりと向く。姉貴は膝を抱え、少しだけ震えているように思えた。
「なぁ……」
俺のつぶやきに呼応するように姉貴は顔をあげた。まだ瞳は青く揺れていた。
「俺って、誰なんだ?」