#6
目が覚めると見たことのあるようなないような天井と向き合っていた。
下の階からは人の話し声と物音が聞こえてくる。
そうか、姉貴の部屋…か。
初めてだった。
このまま、死ぬんじゃないかと本気で思った。怖い。また、さっきみたいになったら…?なんで、なんで俺がこんな目に。なんだったんだ、あれは…。
「あ、ねき…姉貴…」
男が泣いてどうする、俺。
いや、男とか女とか、そこではなく…あぁ、俺はやっぱり姉貴の言う通り子供だ。大人になりきれない、大人の体の小僧だ。
「なんか飲むもんもらってこよう……」
起き上がるとベッドの傍らに俺の荷物がきちんと置かれていた。ふと、今朝の封筒が顔を出しているのに気がつく。
とりあえず、読んでみるか……。
ラブレターではないとわかっているのになぜか緊張してしまうのは日頃手紙なんて手にする機会もないからか。
「____小僧へ。そんな間柄でもないけれど一度呼んでみようと思っていたんだ。
君に説明すべきことがたくさんあるのはわかっている。おそらく君は差出人もわからないこの手紙に対して多くの疑問を抱いているだろうし、自己紹介だってまだしていない。ただ、あいにく僕には時間がないんだ。わからないことは君が敬愛してやまない姉貴さんにでも聞いてくれ。
僕が君にこうして手紙を書くにはわけがある。長くなるかもしれないが、読んでほしい。文字を読むのは嫌いだろうけどね……
まずは何から話そうか。いつか打ち明ける時が来るだろうと漠然と構えていたつもりだったが、いざ便箋を前に君のことを考えていると上手く言葉が出てこないものだな。これを読んだ時の君のことが心配でたまらないんだ。でもきっと、わかってくれるだろう。そう信じている。
前置きが長くなって申し訳ない。
君は僕のことを知らないだろう。
だが僕は君のことをよく知っているんだ。怖がらないでくれ、別に怪しいわけではない。というのも、僕が君という存在をこの世界に生み出したと言っても過言ではないからだ。
君は、犠牲の上に生まれたんだよ。
普通の人間は母親の腹から周りの大人達に祝福されながら生まれてくるものだ。
でも、君は違う。
君は「普通」に生きなくてはならない。そのために君は生きているんだよ。
それが使命で運命で義務で要するに、逃避だ。
全ては、僕が、彼女を殺してしまった時から決まっていた…」