#13
その頃から、私はなるべく女らしさを感じさせないように振る舞うようにした。
長く伸ばしていた髪も短く切りそろえて服もスカートは全部捨ててパンツスタイルに切り替えた。
本当は優しい言葉をかけてあげたくてもわざとそっけなく接したりもした。
私とあたしの違いにはなかなか慣れることができなかった。
でも、その方が、小僧は警戒せずに私を見てくれたから。
小僧は元の彼とはかなり違っていた。
けれどたまに、少しだけ小僧が彼に見えることがあった。味覚が子供っぽいところも、ね。
そんな小僧が少しづつ変わっていったのはあの日から一ヶ月も経っていない頃だったと記憶している。
「なぁ姉貴。姉貴はさ…好きな奴とか、いんの?」
男がこの言葉を使うのは、少なくとも少しは好意を抱いている相手に限られていると何かの本に書いてあった。
そんな本も読むのかって?意外?そうかしら。
漠然と、小僧は「姉貴」のことが好きなんだなぁと悟ったわ。
それ以前にも、ひっかかることは何度かあったのだけれど。
あんなに彼女一筋だった人が、あっという間に違う「女」を見ている。
あぁ。やっぱり彼ではないんだな。
私を見て。私だけを見てほしい。
そう願って生きてきたのに、彼が見ているのは私ではないあたしだった。
無理だったの。
彼と小僧が別人だなんて私には思えなかった。
細く整った鼻筋も長く伸びた睫毛も薄く形のいい唇も、全部全部、彼のものなんだもの。