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僕の歌  作者: 花散里*
2.
11/19

#10

「ごめんねお母さん、お客さん連れてきちゃった。そこのカウンターの隅だけでいいから使っても平気?」


「いいわよ。何か出そうか?」


「うん。あたしこの前入ったやつがいいな、何だっけ、あの赤くて甘いやつ。あなたは?」


「水でいい」


「遠慮しなくていいのよ?お金も気にしないで」


「いや、飲めないから」


「そうなの?意外ね」


よく、言われる。


「そこ、座っていいわよ」


やわらかいこの店の照明のおかげか、この人の表情も心なしか優しそうに見える。騙されてたまるか。


一番端の席に腰かけ、俺はグラスに注がれた水を喉に流し込む。氷に冷やされた水は心地よく体に染み込まれていく。


「一口飲む?美味しいわよ」


「飲めないって言ってるだろう」


「そんなに強くないから大丈夫じゃない?」


そう言って赤いグラスを俺の方に寄せる。


「いらない。甘いの嫌いだから」


「へぇ。大人ね」


「……」


からかっているのか?と疑ってしまう。だがこんなことにいちいち腹を立てていてはそれこそ子供だ。


「ねぇ、なんで入ったの?」


「……暇だったから」


嘘だ。


「嘘」


「は?」


「何か目的があるんでしょう」


「……何が言いたい?」


「知りたいことでもあるんでしょう?ちょうど私もあなたに聞きたいことがあってね」


女の目をじっと見つめる。まっすぐ見つめ返してくるその目に迷いはなかった。そうか、やっぱり女はこういうことに鋭いよな。誤算だ。


「あいつは今何をしている?」


「小僧ならずっとこもって曲作ってるわ」


俺が本当に聞きたいのは……。まぁ、いい。焦らずゆっくり聞き出していけばいいんだから……


「あ、もしかして小僧じゃない方が気になってるの?」


「じゃない方?」


「……あなたはどこまで知っているの」


完全にペースを握られた。まずい。焦るな、焦るな。ここでしくじったら俺のこれまでの綿密な計画はどうなるんだ……あと少しで、全てが終わるのに。

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