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アルの部屋

「そろそろ部屋で休むわね」

 雑巾で拭き掃除を続けるアルに声をかけて、店のドアに手をかける。。

 ガシッ。

 アルが私の腕をつかんだ。

「そっちじゃないよ、リリィー」

 ん?

「リリィーの部屋、こっち」

 腕をつかまれたまま、引っ張られて行く。

 え?

 そっちって……。

 アルは店の奥の扉を開けて、階段を登り始めた。

「あ、あの、アル?」

 2階はアルの居住スペースだよね?

 私の部屋は、ロゼッタマノワールの2階に用意されてるはずなんだけど……。

 階段を上がると2階の廊下。3つ扉がある。

 えっと、アルが使っている部屋意外に余ってるから、私が休憩するための部屋とかあるよってことなのかな?

「ごめんね、ちょっと散らかってるけど……」

 一番奥まで進むと、アルが扉に手を掛けた。

 何?

 ふえっ?

 あ、あの、もしかして、私、アルの部屋に連れ込まれるの?

 ああ、そういえば、私……。男の人と二人っきりなんて……もしかして初めて?

 今まで3度婚約したけれど、会う時には侍女とか誰かに付き添われていたし……。

 あうっ。急にドキドキして来た。

 扉の向こうには、店の質素な作りとは不釣り合いなほど立派なベッドが置かれている。

 清潔そうなシーツが掛けられ、柔らかそうな枕も載っている。

 ベッドの上に、アルの着替えが何着か脱ぎ捨てられてる。

 うわー、脱ぎ捨てられてそのままの服なんて、初めて見た。

 公爵家では、服を脱ぐのも着るのも侍女が付くから、脱いだ服をそのままにしておくなんてありえないもんね。

 思わず目が釘付けになる。

 ああ、いけない。私ったら、はしたない。

 いつの間にか、アルは壁に取り付けられているクローゼットを開けて、その奥の壁をスライドさせた。

 え?クローゼットの奥の壁がスライドして穴が開くの??

「さぁ、こちらへどうぞ」

 中を見れば、赤いじゅうたんが敷き詰められた長い廊下が見えた。

 あれ?

 確か、この部屋、廊下の一番奥で、このクローゼットは建物の外壁の場所だよね?なんで、その奥に廊下が?

「おかえりなさいませ、お嬢様」

 にゅっと、一番近い扉が開き、ロッテンさんが姿を現した。

「ひやぁっ!」

 思わず声が出る。

「本来は、護衛が緊急時に駆けつけるための通路ですが、隣の建物でお店を営むということでしたら、お部屋への出入りはこちらからお願いいたします。ロゼッタマノワールとの繋がりを隠すためにはその方がよろしいかと」

 そっか。

 毎日出入りしてたら、ロゼッタマノワールの関係者って丸わかりだよね。

 こんな風に2階の隠し扉でつながってるとは……。


 ロッテンさんが、アルに綺麗なお辞儀をしてから扉を閉めた。

 ロゼッタマノワール側の扉は、大きなタペストリーで隠れるようになっている。ふむ、なるほど。

「リリィー様、お部屋は整えてあります」

 部屋からメイシーが顔を出した。部屋に入ると、王都にある屋敷の自室とほぼ変わらない。うん、本棚にはしっかり蔵書も並べてある。

 メイシーに「グッジョブ!」と指を立て、早速読もうと手を延ばす。

「リリィー様、長旅でお疲れでしょう」

 伸ばした手をロッテンさんに有無を言わさぬ目で止められた。うん、目だけで、人の動きは止められるんだよ……。

 ど、読書タイムぅ~!

 風呂、着替え、食事、そしてあっという間に布団の中。

 アルのベッドもずいぶん大きくて布団も柔らかそうだったなぁ。

 あれ用意したの、公爵家かしら?だとしたら、護衛に対してずいぶん大盤振る舞いよね?

 子爵令嬢のメイシーでさえ、私のベッドは特別に柔らかくてうらやましぃって何度も言ってるし。

 アルって、ただの護衛だよね?それともメイシーみたいに貴族かな?家を継がない貴族の次男や三男が騎士になるのはよくあることだし。

 それともあのベッドには、高貴な人があそこに寝る可能性も想定してる?

 高貴な人って誰?

 私?

 え?

「私が、アルのベッドに寝るの?」

 自分の考えにびっくりして上半身を起こす。

 昔読んだ小説の一説を思い出す。

 シングルベッドに愛する二人が身を寄せて寝るシーンだ。

 あわわっ。

 ぶんぶんと頭を大きく振って、頭の中に浮かんだ想像をかき消す。

 そうよ、シングルベッドよね。わざわざ事前に大きなベッドを用意してから恋を始めるなんて小説には出てきたことないわ。


「リリィーお嬢様、本日は午後3時よりダンスのレッスンです。それまでにはお戻りください」

 ロッテンさんが、朝食後に今日の予定を伝えて来た。うへー、ダンスの練習か。でも、それまでは自由なんだよね!代筆屋の開店準備頑張ろう!

 昨日ひらめいたのよね!ラブレターを代筆しつつ、どんな出会いでどんな風に恋して、どうなったかって話を聞いたらいいんじゃない?ってさ。

 そうしたら、私の恋の参考になるし、小説家になった時のネタの参考にもなるよね!うふふ。楽しみ!

「じゃぁ、メイシー行きましょう!」

「メイシーは、ロゼッタマノワールを把握していただく勤めがございます」

 あ、そうなの?大変だなぁ。え?本来は私の仕事だったって?ごめん、メイシー。

 食堂を出て、2階の廊下の突き当りのタペストリーをめくり、ドアを開ける。

「あわっ」

「はっ」

 上半身裸のアルの姿がそこにはあった。

 適度に日に焼けて健康そうな肌色。

 鍛え上げられた胸板。胸毛はなくてつるつるしてる。

「リリィ!ごめん、今、着替えようと……」

 アルは、慌ててクローゼットにつるしてあるシャツの一つを手に取って、部屋の奥へと距離を取った。

「これが、小説でよくある、ラッキースケベってやつか……」

 男女が逆な気もするが、実際にそんなラッキーなことあるかぁ!とか思ってた私を許してほしい。

 ある。

 うっかり異性の裸を見てしまうことは、あるんだよ!

 こんな時にはどうしたらいいんだっけな?小説では……。そう、定番の台詞があった。

「わざとじゃないんです」

 あ、しまった。

 わざとじゃないんだって台詞に続きは、「すけべっ」とののしられた上に、良くてビンタ。悪くて鉄拳くらうんだった……。

「わざとでもいいですよ?」

 シャツを身に着けたアルがクローゼットの前まで戻って来た。

 はい?

 こんな返し、私知らない!

「でも、僕以外の裸は見ちゃだめですよ!」

「あ、うん。分かった。ビンタされるといけないもんね!」

「ビンタ?」

 アルが首を傾げた。


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