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婚約破棄三回された公爵令嬢の代筆屋  作者: 富士とまと


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42/51

アル

襲われる描写があります。苦手な人はこの話のあらすじを後書きに置いておきますので、飛ばして後書きをご覧ください。

 馬車は結構なスピードで進んでいった。2度ほど少しの休憩をはさみ、日が暮れるまで進み続けた。

 一体、どこまで来たのだろう。

 幌馬車の中は月明りもほとんど届かず真っ暗だった。

 疲れているはずなのに、全く眠れない。外では男たちがたき火をして、簡単な食事をとっているようだ。話声が聞こえる。一体何人いるのだろうか。

 小屋で見たのは3人だった。じっと、話声に耳をかたむける。

「ちょっと様子を見てくるか」

 下品な笑い声の男が幌馬車に近づいてきたようだ。

「どれどれ」

 幌の後ろが開き、月明りに照らされて、男の影が馬車の中に入り込んだ。

 中が暗いので、月の光も明るく思える。

「3人しか収穫がなかったと思っていたが、思いもかけず2人増えたんだったな」

 男が、幌に乗り込んできた。

 臭い。

「おい、手を出すなよ、商品価値が下がるだろう」

 馬車に乗り込んだ男に、別の男が声をかけた。

「元々、商品は3つだと報告してあるんだ。残りの2つは、無かったものだから価値も関係ねぇだろ?」

 幌馬車に乗り込んだ男がぎししと笑う。

「くっ、確かに、そりゃそうか。仕方なく連れてきた二人はもともと価値の低い女だったと言えば済む話だな」

 もう一人の男も、馬車へと乗り込もうとする。

 今から何が起きるのか、皆で恐怖に固まった。

「誰にするかな」

 男が、一番小さな少女に手を伸ばした。

「いや、やだ、いやだ……」

 ガタガタと震えて、少女は泣き出す。

「やっ、やめて!まだ成人前の子に手を出すようなことっ」

 ライカさんが声を上げる。

「なんだ、お前がしてほしいのか?積極的だな」

 もう一人の男が、ライカさんに伸びた。

「や、やめてください……」

 小さな声だけど、それでも声を出すことができた。

 目じりには涙がたまっている。

 さっきから、怖くて怖くて、体の震えが止まらない。

 だけれど、みんなを、領民をこんな目に合わせたのは私だ。

 皆が襲われるのを黙って見ているわけにはいかない。それが、貴族の役目だ。

 そして、私は……。貴族は、もうさらわれた時点で汚されたものとみなされる。

 本当に汚されたかどうかなんて、関係ないものとして扱われるのだ。市井の皆は違う。守らなくちゃ。

 怖い。だけど……。

「私が、犠牲になります。だから、皆には手を出さないで……ください」

 震える声で、必死に主張する。

「なんだ、二人相手にするってのか?」

 少女に手を伸ばしていた男が、顔をこちらに向ける。

 臭い。

 一体何の匂いなのか、吐きそうなほどの異臭が、男から発せられる。

「ははー、じゃぁ、さっそくいただくか!」

 もう一人の男も私の横に移動してきた。

 怖い。

 やだ。

 助けて……。

 男の手が伸び、スカートの中に入れられ、太ももを撫でられる。

 何これ、気持ち悪い。怖い。

「すべすべの肌だなぁ」

「だめ、やめて、リリィーちゃん、私が変わるからっ、その子に手出しをしないで!その子は可愛いでしょ、だから商品価値が高いよ、私が一番商品価値が低いから、だから」

 ライカさん、だめ、自分が犠牲になろうなんてそんなこと。

「だめ、ライカさん……」

 気が付けば、涙で顔がぐっしょり濡れていた。声もろくに出ない。

 怖い、気持ち悪い。

「うるせーよ、さっきから!気分が出ねーだろうが!」

 バシンと、頬に激しい衝撃を受ける。

 殴られたんだ。

「ライカさん、ライカさんに触らないでっ!」

「うるせぇって言ってんだろ!黙れ」

 逆側の頬を殴られる。

 あまりの勢いに、幌を貼ってある支柱に激しくぶつかり、折れた。

 折れた支柱の先が、肩をかすめ、服を破って皮膚を傷つける。

「馬鹿、何してんだよ。馬車を壊すなよ」

「こいつが悪いんだ」

「これ以上馬車を壊すわけにはいかねぇ。外でやろうぜ」

 男がライカさんを連れて外に出る。

 臭い男も、私の腕をとって外に放り出す。

「きゃっ」

 両手を縛られた状態ではうまく降りることができずに、そのまま落っこちて地面に倒れこんだ。

 痛い。

 殴られた頬も、切った肩も、打ち付けた体も……。

 男が、そのまま私の体に馬乗りになった。

 痛いよ。痛い……。

 アルなら、自分の体で落下する私をかばってくれるだろう。

 アルなら、怪我をした私を心配してすぐに治療してくれるだろう。

 アルなら、私を殴ったりはしない。

 アルなら……。

 とめどなく流れる涙。

 もう、何も考えられなかった。ただ、月明りの中、アルの瞳を……。青空を思い浮かべていた。


 助けて。


「やめろーっ!」


 蹄の音と、アルの声。

 幻聴?


「ぐあっ」

 私にのしかかっていた男が、うめき声とともに吹き飛んだ。

「リリィー!」

 アルの手が、私の体を救い上げる。

「何だてめぇ!」

 男が、アルに殴りかかろうとする。

 アルは、あっという間に、殴りかかろうとした男も吹き飛ばした。

 ああ、アルが助けに来てくれたんだ……。


 ホッとして、意識を失った。


夜になり、男たちに襲われそうになる。アル登場!助かった。

(あらすじにすると、なんと短い……)

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