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婚約破棄三回された公爵令嬢の代筆屋  作者: 富士とまと


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28/51

偽装婚約に驚く二人

「何の話だったんですか?」

 メイシーが、自分とアルの分のお昼ご飯を代筆屋の奥の部屋に運び込んだ。

 現在、3人でテーブルを囲んでいる。

「エディが領地に行っている間のこと。ちょうど二人にも伝えないといけなかったんだよね」

 と、代読屋と代筆屋のことを二人に伝える。二人は、黙々と昼食を口に運びながら私の話を聞いていた。

「それで、他には?」

 メイシーの目が鋭く光る。

「他と言うと?」

 メイシーがちらりとアルを見た。

「店の話なら、わざわざリリィーと二人で出かける必要はありませんでしたよね?」

 エディの言葉を思い出して顔が赤くなる。

 そうだ。私……エディに告白されたんだ。それから……。

「駆け落ちしようって言われた」

「「駆け落ちーーーっ?!」」

 私の言葉に、メイシーとアルが仲良く叫んだ。

「駆け落ちと言っても、偽装駆け落ちだよ。もし、側室になりたくなかったら助けるよって」

 メイシーが、なんだという顔をして「偽装ですか」とつぶやいた。

 一方、アルは怒りに震える顔を見せる。

「何をかんがえているんだ、エディのやつ。知らないわけはないだろうに……」

 なんでそんなにアルが怒るんだろう?

「偽装なんて言葉を使って、計画的にリリィーをだますつもりか?」

「あっ!」

 メイシーが何か気が付いたように口に手を当てた。

「え?何?」

「偽装だろうと、駆け落ちは駆け落ちですから……貴族令嬢が異性と二人で過ごしたという事実が残るので……」

 メイシーの言葉に、やっと私も気が付いた。

「うわー!そうだった!その異性と結婚するか一生独身でいるかしかないじゃんっ!」

 貴族社会って不思議なんだよねぇ。結婚前は異性関係がきれいじゃないとダメってところが徹底してるんだった。

 お手付き令嬢は、もはや嫁の貰い手無し!いや、運が良ければどこぞの後妻には収まるかもしれないが……。むしろ独身でいた方がマシって嫁ぎ先だったりするわけで……。

 エディと結婚する気があれば駆け落ちはあり。結婚する気がなければ……。

「となると、偽装婚約の方か……」

「「偽装婚約ーー?!」」

 また二人が叫んだ。

 そんなに驚くことはないと思うのね。婚約だけなら、もう3回もしてるプロだから。3回も4回もそう変わらないと思うんだ。


 昼食後、メイシーは代読屋の仕事で出かけ、私とアルは外周り。看板の文字書きのお願いだ。とはいえ、脚立に乗って文字を書くのはアルの仕事で、私は念のため脚立を支えているだけ。体を鍛えているからなのか、アルは脚立の上でもぐらつくことなく作業を進めている。

 ぼんやりアルの手元を見上げて気が付いた。

「あ、アル、もしかしてその看板は金具につりさげてあって取り外せるんじゃない?」

「本当だ。取り外せますね」

「じゃぁ、そういう看板は取り外して代筆屋のに持って帰って作業させてもらおう。固定されてる看板だけはその場で書かないといけないけど」

 看板を取り外す許可はすぐにもらえた。明日からは、取り外せる店の看板を朝一番に回収して、店番しながら看板書き。午後に看板の取り付けと、固定看板への作業をしようということになった。うん、少しは効率がよくなった。

「こんにちは」

 店に帰る途中声をかけられ振り返ると、ドナさんと、4,5歳くらいの小さな子供がいた。ドナさんの子供かな?

「看板書きの帰り?」

「はい」

「いつも二人で作業するなんて、仲がいいわね。ふふっ。二人は夫婦じゃないのよね?」

 ふっ、夫婦?え?私たちそんな風に見えるの?

「兄妹です」

 アルが答えた。そうだ、ライカさんにそういう設定で話をしたことあったっけ。護衛とお嬢様なんて言えるわけないもんね。

「そうなの。仲がよい兄妹で羨ましい」

「ママー、早く帰ろう」

 子供がドナさんの服の裾を引っ張った。

「ちょっと待ってて、ほら、これで遊んでて」

 ドナさんが、カバンから緑の小さな野菜を二つ取り出して渡すと、

「お野菜一つ、くださいな~、何のお野菜上げましょう、緑のお野菜、くださいな~」

 と、手遊び歌に合わせて野菜でお手玉を始めた。

「上手いもんだな」

 アルが感嘆の言葉を漏らすと、子供が自慢げに笑って見せる。

「迷惑じゃなければ、またパンをもらってほしいの」

「え?いいんですか?」

「ええ。後で届けるわね」

 ドナさんと別れるとアルがぽつりとつぶやいた。

「違うんだね」

「違う?」

「お手玉をするときの歌」

「ああ、そういえば、野菜の歌だったね。私が小さいころ遊んだ歌は、宝石一つ、くださいな~、どんな宝石あげましょう、緑の宝石、くださいな~って。歌詞は少し違うけれど、節は一緒なんだね。面白いね」

「上手くできないって泣いてたけど、あれから上達した?」

「ん?誰の話?」

「あ、いや、何でもない。さぁ、急いで戻って仕上げようか」

 アルが脚立と看板を持ち上げた。


「あれ?お客?」

 店のドアの前に1人の男性が立っている。

 見たことがある。そうだ、ライカさんの店のお客さんで「貴族らしくない貴族」の男だ。

 貴族がなんの用かな?文字なら自分で書けるはずだけど?

「えーっと、何か御用でしょうか?」

「ああ、代筆を頼みたい」

 なんで、貴族が?


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