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秀才彼女とバカな僕の物語  作者: Takuya
第一章 こうして始まる彼女との物語
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1−2


 美少女が三十路先・・・露中先生の横に立っていた。


 髪は茶色く肩のちょっと下辺りまであり、綺麗に可愛らしいヘアピンで前髪をとめており、目はパッチリ二重。通りすがりの人たちがみんな振り向くぐらいの整った顔立ちをしている。身長も女子の平均より高めでスラッとした体つき。胸は・・・・まああるほうかな。


 黒板には笹山月乃と書かれている。転校生?そういえば昨日露中先生が転校生が我がクラスに来るよ的なことを話していたな。すっかり忘れてました。


 えーっと、つまり僕は笹山さんの自己紹介の最中に教室へ乱入し、こんな空気を作ってしまったということか・・・・・


「ごめんなさい!!」


 僕は生きてきた中で一番綺麗なお辞儀を露中先生にする。角度は四十五度。全国お辞儀大会が開催されていたら間違いなく優勝は僕だろうというくらいのお辞儀だ。これはキャビンアテンダントもびっくりだね。


「私に謝られても困る。謝られたところで君への制裁はなくならない」


 ちっ、デコピンは確定か・・・・・


「ごめんなさい」


 僕は再び頭を下げる。しかし今度の相手は露中先生ではなく笹山さんにだ。クラスでの初めての自己紹介の最中に僕みたいなこんな冴えない奴に邪魔されたんだから当然怒っているだろう。


「顔を上げてください。私は気にしていませんよ」


 ニコッと笑顔で僕に言う。女神だ、女神がここにいる。今まで見てきたどの女性の笑顔よりも輝いていた。


「あ、ありがとうございます」


 僕はあまりにも可愛い笹山さんに目すら合わすことが出来ない。こんなとき修哉なら気の利いた言葉の一つくらい言うんだろうな。人見知りな僕にはそんなこと天と地がひっくり返ってもできない。


「笹山、お前の席はあそこだ。このバカの後ろだから気をつけるように」


 露中先生は窓際の最後列の後ろを指差す。そこにはいつのまにか僕の席の後ろに新しい机と椅子が置かれていた。てか先生、別に何もしませんよ。


「わかりました」

 透き通るような声で返事をし、笹山さんは指差す方向へ歩いていく。男子連中の目は笹山さんに釘付けだ。


「沖田、いつまでそこにいる?早く席に着け。それと昼休み職員室な」

「う、うっす・・・・・・・・・・・・」


 続いて憂鬱な表情の僕が歩いていく。




 休み時間。笹山さんの周りにはクラスメイトでいっぱいだった。みんな興味津々みたいだ。どこから来たの?とか可愛い!とか俺と結婚してくれ!とか・・・いや最後のはおかしいだろ。とにかく色々な質問攻めにあっている。僕としては迷惑なんだけどなあ。笹山さんは何も悪くないけど、ほらこんなに人が集まったら僕ゆっくりできないじゃない、休み時間なのにさ。騒がしくて頭がどうにかなりそうだ。


「なんだよ暗い顔してさ」


 顔を机に伏せる形の僕に話しかけてくる奴がいた。顔を上げず声だけでこいつが誰なのか分かる。


「うるさいぞ修哉」

 長谷川修哉。それがこいつの名前。僕とは去年からクラスが同じで良く一緒にいることが多かった。だけど、こいつは僕とは対照的でかっこよく、女子からも人気が高い。天は二物を与えず、こいつは頭もいいのだ。いつも成績上位者に名前を連ねている。おまけに運動神経も完璧で・・・・なんか自己紹介してるとムカついてきたな。要は万能な奴なんだこいつは。

 

尚更なんでこいつが僕なんかとよくいるのかというと・・・・・去年の夏、こいつに彼女が出来た。その子は学年で一番可愛いと噂されている及川加奈さん。


 他の男子どもはみんな及川さんを狙っていた。及川さんのことが気になっていると言っていた男子も少なからず僕は知っていた。どういう経緯で修哉と及川さんが付き合ったのかは未だに修哉は僕に教えてくれない。


 当時修哉と及川さんが付き合い始めたというニュースは大スクープとなっていた。その頃の僕は修哉とあまり仲がよくなかった為、へぇーそうなんだとくらいしか思っていなかった。実際そんなに気に留めていなかったし、周りで愕然としている男子どもの部類では無かった僕は普通に高校生活を過ごしていた。


 だがある時僕たちに転機が訪れる。


 その日は何もない普通の一日だった。特に変わった行事も無く、ありふれた一日。何でこんなに夏は暑いんだよ!というイライラなテンションの中僕は放課後帰宅するべく東校舎の横を通っていた。するとその校舎から声が聞こえてくる。僕は頼むから面倒事は勘弁してくれといった感じで恐る恐る陰から覗いてみる。


 そこにはボロボロになった修哉と不良に捕まっていた及川さんがいた。


 僕はかなり焦った。助けるべきか、見て見ぬふりをするか。そこで僕が選んだ行動は修哉を助けることだった。


 僕は急いで東校舎に入り消火器を拾う。それを片手に持ち、不良に全速力で走り、ぶちまけてやった。この時の僕はヤベ、超かっこいいんじゃね?と一人で自画自賛していたのはもはや言うまでもない。


 不意に消火器をぶちまけられた不良は顔を抑えながら怯む。その隙に及川さんを放し、修哉の所へ行かせた。修哉も状況は理解したらしく、悪い!と一言残して及川さんと走り去っていった。


 当然一人取り残された僕も全力で逃げる。逃げ足だけは誰にも負ける気がしなかった僕は見事不良から逃げ延びることができた。


 といった出来事が去年あって、そこから修哉とよく話すようになった。今では親友といえるだろう。ちなみにまだ及川さんとは関係が続いており、仲良くやっているみたいだ・・・・・・ちっリア充め。あの時の不良よ出てこい。こいつに天罰を。


「おい太陽、お前なんで俺を睨んでんだよ・・・・」


 おっといかんいかん。感情が顔に出ていたか、平常心平常心。


「お前に彼女がいるからだよ」

「はっはーん。太陽は彼女が欲しいんだ」


 何を当たり前のことを聞いているんだこいつは。しばくぞコラ。


「ふっ、僕がいつ彼女を欲しいと言った?」


 でもここですんなり肯定すればこいつはますます調子に乗るから否定しておこう。


「そういえば三組の大橋さんがお前のこと気になっているって聞いたぞ?」

「えっ!!?マジで!!?大橋さんが!!やっべすぐ話に行かないと!!」


 僕は席を立ち上がり三組の方へ向かおうとする。ちなみに大橋さんは学年でも可愛い部類に入るおとなしい子だ。去年クラスが同じで少し面識がある。


「帰って来い太陽・・・・・・嘘だ」


 う・・・・・・・・・そ?


 僕は自分の席に戻る。僕は修哉に騙された。ハハ、騙されてやったんだ・・・・グスン。


「な、泣くなよ!俺が悪かったって」

「泣いてないよ!!」


 そう言う僕だが目にはきちんと涙が流れていた。純粋な僕の乙女心(男だけど)は修哉に汚されてしまった。


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