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秀才彼女とバカな僕の物語  作者: Takuya
第零章 プロローグって大切だよね
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0−2

「沖田、私が君の担任になった以上、今後このような成績が続くようであれば進級テストの推薦は絶対にしないからな」


 ・・・・・・・・・・・マジ??


「ちょっと待ってください!それって僕にちゃんと勉強しろってことですか!!?」

「その通りだ!さっきあんな大声で宣言したのにもう忘れたのか!?」

 

これは想定外だ。あわよくば二年生も進級テストで修了予定だったのに・・・・・。


「わかりました。努力はします」

「話は変わるが明日内のクラスに転校生が来るぞ」

「変わりすぎですよ!」


 軽く項垂れる僕になおも露中先生は間髪いれずに次の話題を持ち込んできた。・・・・・へ?転校生?


「いきなりですね・・・・それもこの時期にですか?」

「うむ。何でも海外から転校して来るそうだ」


 海外・・・・ってことは帰国子女ってことだよな?どんな子なのかな?


 僕は少年のように清らかな期待を抱く。ん?まてよ・・・・


「転校生って男の子ですか女の子ですか?」

「喜べ沖田。君の大好きな女の子だ」

「やったぁぁぁぁ・・・・・って別に大好きではないですよ!!」

「え?君はあれなのか、同性が好きなのか?」

「んなわけあるか!あーーもう大好きですよ女の子!!」

「それはそれでちょっと引くぞ・・・・・」


 疲れるなあこの人は。もちろん僕に同性の趣味はない。健全な男子高校生たるもの女の子が大好きだ。さっき否定したのは一応ね一応。


「実は編入にあたって我が校の中間試験を編入試験として受けてもらったんだ・・・・」


 そう言い、露中先生はファイルからプリントを取り出す。そこに書かれていたのは【笹山月乃】という名前と【五教科目合計点数 500点】という成績だった。へーこの子点数500点だったんだ・・・・・・って!


「500点!!?」


 またしても大声を上げてしまう。でもこれは驚かずにはいられない。500点っていったら全教科満点ってことだよな?えっと僕の点数が125点だから・・・・四倍も違うのか!!


「流石の私でもこの成績には驚いている。なんといってもあの結城を越えたんだからな」


  露中先生の言った結城とは我が二年生が誇る秀才だ。本名は結城唯。一年生の頃の初めのテストから今の今まで毎回一位を取り続けている不動の王者。なんかかっこいいけど女の子だよ。ちなみにルックスは非常に良い!顔よし!頭よし!で学年関係なく彼女に好意を抱いてる生徒が多い。付き合えるならもちろんお付き合いしたい。


「結城さんって今回何点だったんですか?」

「487点」


 充分すぎる点数だった。普通負けないだろその点じゃ・・・・・


 でもそんな結城さんに勝ったえっと・・・笹山さん?だっけ、少し興味がでてきたぞ。


「どんな人なんでしょうかね?」

「それは私にもわからない。そこでだ」


 露中先生は一旦言葉を区切ると、ニヤついた顔で僕を見る。ああ、なんか企んじゃってるよこの人、どう考えても悪い予感しかしない。


「君に少しの間、笹山さんのアシスト係を頼みたい」

「お断りします」


 きっぱり、はっきりと僕は答えた。


「参考までに理由を聞こうか」

「めんどくさいからです」 

「君に拒否権はない」

「あるわ!・・・いや、ありますよ!なにさらっと僕の人権を抹消してるんですか!」


 なんでもはいはいと答えるほど僕は忠実な存在じゃないぞ。そもそも転校生のアシスト係なんかクラス委員長がやればいいのに・・・・ん?クラス委員長?ってクラス委員長僕じゃん!!


「ようやく君に拒否権が無いことを理解できたな」


 何度目かの読心術で心を読まれる。心を読まれていると言うより僕は思ったことが表情に出ているのかもしれない。


 思えば僕がクラス委員長にされたのは修哉のせいだ。修哉という人物は僕の一番仲が良い友達である。修哉のことはおいおい語っていこう、嫌でも登場回数は増えると思うからだ。


「もっと適任がいるでしょう。先生も知っての通り僕は無理矢理クラス委員長にされたんですから」

「そうだな。しかし私が反対すれば君はクラス委員長をやらなくて良かったんだぞ?なぜ私が君を断らなかったのか、それは単純に私は君が適任だと思ったからだ。確かに君の学力は高くない、最低の部類に入るだろう。でもそんな君でも私は他人の痛みを理解できる人間だと思っている。だから私は本田が君を推薦した時、快く受け入れたんだ」


 教師だ。この人は教師なんだなと思った。・・・・・・でも露中先生、見えてますから。露中先生が机の下でこっそり今手に持っている『生徒に伝える言葉』というタイトルの本が。これがなければ完璧だったのに・・・・・


「とりあえずその本はしまった方がいいと思いますよ」

「ばれていたのか」


 悪びれた様子もなく露中先生は本を閉じ、引き出しにしまう。


「もうわかりましたよ、やりますよ僕」


 別に露中先生の言葉に心が動かされたわけではない。チラッと時計を確認したところもう夕方の五時を回っていた。僕は早く家に帰って昨日の深夜アニメを見なければいけないという重大な任務がある。それを速やかに遂行せねば・・・・・まあ実のところ早く家に帰りたいのだ。


「そうか!引き受けてくれるか!」


 笑顔で喜ぶ露中先生。その表情にはちゃんと、面倒ごとを沖田に任せることが出来た!という表情だ。くそ、この三十路教師め・・・・


「ごほっ!」


 グーだ。グーのパンチがお腹に飛んでくる。僕はお腹を抱えたままその場にしゃがみこむ。容赦のないパンチが露中先生から飛んできた。いったー・・・何気に重たいパンチだな、後からくる痛みだぞこれは・・・・


「さて、もう時間も遅いことだし帰りたまえ。詳しいことは明日転校生を紹介してから話そうか」

「・・・・・・わかりました」


 お腹を抑えたまま僕は了承し、職員室を後にする。露中先生から追指導の報告を受けたのはもはや言うまでもない。わかっていたさ・・・・・ちくしょう。


 それから僕は下足箱で靴に履き替え外に出る。陽はもう落ち夕暮れの茜色だった。僕の気持ちはこの夕暮れより暗い。そう夜だ、真っ暗深夜だ。なんで追指導なんか・・・・・


 転校生。


 明日初めて出会う人に僕は少しばかり心を躍らせていた。僕はわりと出会いというものは好きだ。どんな人で、どんな性格で、僕と気が合うのかなとか色々考えると早く会ってみたいと思う。これがアシスト係じゃなかったら二倍会ってみたいんだけどな・・・・・


 でもなってしまったものは仕方ない。露中先生の面子もあるだろうから出来る限り頑張らないとな!てか頑張らないと僕が露中先生に殺されちゃうよ。それだけはごめんだ。


 僕は少しだけ明日を楽しみに思いながら家に帰った。


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