プロローグ1
僕、佐野雄之介は他の人と比べて比較的鼻がいいと思っている。料理や香水の匂いだとかそういった物質の匂いはむしろ鈍感な方だ。なら何をもって自分の鼻がいいと言うのか。
何故なら僕の鼻は他の野郎共と違って女子の匂いに反応しやすいのだ!
ふざけて聞こえるかもしれないが僕は至って真面目だ。
いや、だからって変態という訳じゃない…と思う。少なくとも自分では変態じゃないと思ってる。
まあそんなことはさておき、他の男子より鼻がいいといっても男子より女子の方が脳の嗅覚野が発達しているため、匂いに敏感だそうだ。
女子とは鼻比べ(どちらが匂いに敏感かゲーム)はやったことがないため分からないが引けをとらない自信はある。
何故自分の鼻がいいことに気付いたのかというと、きっかけは中学の入学式。
その日はちょうど雨が降っていた。
雨の日のあの湿っぽい匂いはほとんどの人が嗅いだことあるはずだ。
当日の僕もその匂いがしてあまりいい気分ではなかった。鼻がいいからではなく、ただ単に嫌いな匂いというだけだ。
他の入学生の群れに数人の友達と一緒にくだらない話をしながら歩く帰り道、僕は一本の木に目がいった。そこには降りられず枝に尻込みしている子猫を見つけた。
そう、これが僕の鼻よさに気付くきっかけだった。