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もうひとりの「きみ」  作者: りーり
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序章_prologue

初めまして。りーりです。

ずっとゲームにしたいと思っていたストーリーなのですが、技術がない以上どうすることも出来ないので小説にすることになりました。

良かったらお読みください。

きっとこれが最後だ。君に伝えたい。


早く、早くしないと自我が消えてしまう。


ねぇ、お願い。

もし生まれ変わるならさ、君と対等に接せる存在になりたいんだ。


ゆっくりと時間をかけられる人間になりたい。



(ひかり)が消える前に。




 声が聞こえた気がした。男の子のものだった。

 授業は終わり、部活も終わった。今日も充実した1日だった、と目を閉じる。

 ふと茜色の空を見上げると、さっきの声がまだ響いている気がする。

 余韻だろうか。はっきり聞こえたような、そんな感じ。なのに、振り向いても誰もいないのだ。

 疲れたなぁ。柚蘭(ユウラ)は心地よい春風に身を任せる。

 そんな風にしていると、背後から「わっ!」と驚かされた。


「ユウラ、先に行くなんて酷い!」


 ちっとも酷いと思っていなさそうな、邪気のない笑顔を見て、ユウラはふふっと悪びれもなく笑う。


「アッキーが遅いのが悪いんでしょ。大体、もう最終下校も過ぎてるじゃない」

「あの最終下校とユウラが悪いのっ。何よ6時までって、小学生じゃないんだから」


 ついこないだまで小学生だったくせに。ユウラはクスッとすると、アッキーこと(アキラ)は馬鹿にされている気がしてムッとする。

 すると、生徒指導の教師が校舎から出てきて、「早く帰れよ」とキツめに言うものだから、二人は校門の外へ急いだ。

ラケットケースが走るのに邪魔だ。カラカラ、と揺れる。


「ゴリ石怒り過ぎ!」

「それな! 本当爆笑なんだけど、あの顔っ」


 肩で息をしながら、二人は声をあげて笑った。

 平凡な日々。それが、どんなに幸せなものなのかなんて、勿論当時の彼女らには知る由もない。

 だって太るのを気にせずお腹いっぱい食べられる方が幸せだし、おこずかいをもっと貰えた方が幸せだし、勉強をしなくても元々頭がいい奴は幸せだし、上には上がいて、その上には更に上がいるのだ。

 幸福な人は何から何まで幸福だ――ユウラは淡々と足を動かす。

 水温む季節とはいえ、まだ夕方は肌寒い。昼間は暑いが、一年生の彼女達はウインドブレーカーを身につけていない。

アキラはごそごそとスクールバッグをあさり、「寒くない?」とカーディガンを取り出し、羽織った。

 「ダッサ」。ユウラは馬鹿にしたように言うが、本人は「いーのいーの、どうせ私達しかいないでしょう」と開き直った。

 そんな彼女にユウラは意地悪そうな笑みを浮かべた。


「同じバド部の嶋ちゃんに見られるかもね」

「バッ……!! 何で嶋原が出てくんのさ!!」


 アキラは顔を真っ赤にしてユウラの背中をバン、と力いっぱい叩く。

 「ぐはあっ!」と云う声ともに空気が絞り出される。


「ちょっと、本気で叩くこと無いでしょー」

「ご、ごめんやり過ぎた」


 アキラはシュンとして、自分の手のひらを見つめた。

 彼女は運動神経が抜群な故に、力も平均を上回るほどある。

 この間の体力テストでは、右手の握力37kgというユウラと20kgほど差がある記録をたたき出した。

 男らしい性格も相まって、クラスの男子は自分の事を女子だと思っていない、と本人は口を尖らせるが、人並みに恋愛もするし、女子力だって本当はある。

 彼女のように運動が出来たら……と、ユウラは着いていくためにバドミントン部に入部したのだが、ランニングもロクに出来ないほど、運動神経が悪い。

 始まったばかりだから仕方無いか……見上げた先の通学路の桜は ほぼ散り、青々とした葉が顔を出している。


「……でも、嶋原はユウラのこと好きだって、みんな言ってるよね」


 「根拠のない噂でしょう?」ユウラはため息を隠しもせずに言う「確かに顔はいいけど、背が低すぎよ。やっぱ理想は高身長じゃなきゃ。それに、何か性格も子供っぽいし」。

 アキラは呆れたように目を細めた。


「ユウラが可愛いくせに彼氏できたことないのって、絶対理想が高いからだよね……。大体まだ一年生でしょ、いつかもっとかっこよくなってるよ」

「どーだか。それまで好きでいるつもり?」


 一途すぎ、とユウラは肩をすくめた。本当は、彼女は男にうるさいのではなく、ただ単に彼氏がいらないだけなのだが。

 そして、面倒だったのか話題を変える。


「お腹すいたぁ」

「私も。ユウラのお母さん、ドーナツうまいよね」


 作るのも、ドーナツ自体も。と、アキラは「上手い」と「美味い」をかけたつもりだったが、ユウラは気づかない。

 彼女の母親は、今時珍しい専業主婦だ。柔らかな物腰で、いつも子供の帰りを出迎える、優しい「お母さん」である。

 おやつ作りが得意で、特にドーナツは十八番でもある。部活帰りにユウラが楽しみにしている物といえば、真っ先に母親のドーナツを思い浮かぶだろう、とアキラは思った。




 「それじゃあ」と、彼女達が別れた瞬間、にわか雨が降り出した。

 最近ずっと柔らかな春雨ばかりだったからか、予想外のユウラは困り果て、田舎の上に街灯がないせいで判断も遅れる。

 暗くなっているのに、周りには木々や川ばかりで、何もない。どころか、このままだと風邪をひくなんて言ってられなくなる。川が多いということは、このままこの雨が振り続けると増水して濁流に呑まれるだろう。

 泳ぎすら出来ない彼女は寒さもあり、身震いする。アキラの家は比較的建物があるが、ユウラの家は近づくごとに町から離れるのだ。

 力強い(しずく)が頭皮に打ち付けられ、身体が重い。

 ――とにかく、何か雨宿り出来る所へ。

 必死に走る。目を凝らして下を見ると、あまり整備されていない道路に雨水が近づいている。

 「きゃっ!」、ユウラは水浸しの地面に突っ伏した。ぬかるんでいるため、滑ったのだ。

 そこから静かに見上げると、この田舎には似合わない建物が出現した。


「館……?」


 おそらく雨や曇り空のせいで、今まで気づかなかったのだろう。

 だが、通学路の筈なのに、彼女が見たことのない洋館だった。

 その上、この時間帯――おそらく七時頃だろう――なのに明かりがついていないのもおかしい。

 立ち上がる。身体が重い。水分を含んだジャージを着ているからだろう。一歩。歩く。息が荒い。転んで付着した泥は、既に雨で流されていた。

 屋根はあるとはいえ、しばらく雨は止みそうになく、跳ねた水飛沫や屋根に溜まった雨水がかかり、あまりないのと変わりない気がした。

 何より、寒い。気温も、体温も冷たい。


「すみません! 開けてください!」


 部活のメニューの一つである声出しのおかげで、いくらか大声は出たが、返事はない。

 おまけに、呼び鈴もインターホンも何処にもついていない。

 ユウラは意を決して、館のドアを開けた。


「……!?」


 驚くことに、ドアはあっさりと動き、部屋の様子が確認できた。



 そう、吸い込まれるような漆黒の部屋が。

※ゴリ石の石は、親友の苗字から取りましたが、決して親友がゴリラという訳ではありません、人間です。ご了承ください。

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