試練3:新しい仲間
「えっと………どっから話そうかなぁ………」
さっき出会ったこのお姉さん―レイズは突然腕を組み始めて考え出した。
「やっぱ自分の事から話し…いやいや、それはいくら何でも……うーん、やっぱり試験内容からってそれじゃぁ………あーもうっ!!」
「えっと……大丈夫?」
ボクはおそるおそる聞いた。
「うーん、やっぱりもういいやっ! ねぇ、アストそこ座って」
レイズはボクに近づいてくると(顔がくっつきそうな位に)真剣な声で言った。
「あのさぁ……とりあえず今からざっと説明するけど、質問無しで。あと、変に思ってもちゃんと信じてね。…って自分でなに言ってんだろう…」
「あ…分かったよ………どうぞ、話して……」
僕は近くの岩に座ると、レイズの方に耳を傾けた。
一瞬、森がいっそう静まりかえったかと思うと、レイズが話し始めた。
「えっと………私は、人間とはまた違う『無導使』っていう種族の一人で、その無導使というのは主に―実質これしかしてないけど―輪廻サイクルがうまく廻る様に、霊界から見張っている―らしい……ごめん、実際私もよく分かってないんだけど」
………とーぜんこれを聞いてるボクもよく分からない。輪廻サイクルとは何か、と一瞬聞こうとしたけど、レイズが最初に言っていた事を思いだして、慌てて口を押さえた。
レイズは話を続けた。
「さっき霊界から見張ってるって言ってたけど、無導使の仕事は大半が地上に降りてきて行っているらしい。そこで輪廻サイクルが上手く行われてない所を、私たちが直してる……まぁほとんどサイクルに引っかかって邪魔してる事の方が圧倒的に多いんだけど」
ここでレイズがちょっと一息ついた。
そして、また話し始めた。
「……さっき言ったみたいに、ほとんどが地上で仕事を行っているから、それなりの技術を身につけていないと騒ぎを起こすことがある―人間に私たちの存在知られちゃうと、いろいろまずいから―だから今、無導使になるための試験として地上に隠されている六つの黒水晶を探してるの。で、合格すると……」
「合格すると?」
「………一応半人前としては認めてもらえる」
あ、半人前か……
こんな事思っちゃ悪いけど……
「ざっと話すとこんな所。よく分からなかったでしょ?」
「うん! 分からなかった!」
ガクッ
レイズは岩の上から落っこちた。
「そ………そんなはきはきと言わなくたって……」
「あ、でもレイズも試験でここに来たんだね………って、どうやってあの結界を破って入ってきたの?」
あぁそのこと、とレイズはどこからかさっと変な杖を取り出した。
「これ。これに魔力を入れるととても強い力を生み出す事が出来るの。あんな結界なんてイチコロよ。この先の宝石が強く光るほど、黒水晶が近いって事。だからここまで来たの」
へぇー。
確かに、先に付いている宝石はかなり強い光を発している。
「……ところで、アストはどんな試験を受けているの? こんな暗い森の中をさっきからぐるぐる回ってて………」
「え、どうして知ってるの?」
「時々見かけたから。なんか迷ってそうな表情してた」
うぅ………当たりだ。
「えっと……僕はこの森の中にある神殿を探してるんだけど…………」
「あぁ、それならさっき見たけど」
……えぇっ!!
「どっ、どこで?」
「あっち」
そう言うと、レイズは「あっち」を指差した………。
「あ、あっちかぁ………」
「なんかやたらとアーチがいてうっとおしかったわ。アストは見なかったの?」
あ……そう言えばさっき一回だけ………。
『……………』
「よーしっ。アスト、さっさと立って! 行くよ!」
へ?
「ど、何処に?」
「決まってんじゃん。例の神殿よ」
レイズはなんだかとても張り切っている。
「え………レイズは特に用はないんじゃ…」
「黒水晶がこの近くにあるって事だから、どうせなら一人より二人の方が心強いでしょ?」
確かにそうだけど………良いのかなぁ……?
それに、ボクなんかと付いていって、レイズは別にいいんだろうか? ………こんな事自分で言いたくないけど。
「ところで、あといくつ見つかってないの?」
「あと二つ。もう少しなんだけど、期限が明日の、日が昇るまでだから、急がないと行けないの。アストは?」
「………あと三つ」(ホントの事いうとまだ一つも見つかってないんだけど……)
「よーしっ、さっさと行こう! 案内するよっ」
そう言うとレイズはさっさと進んでいった。
「あ、待ってーっ」
こうして、ボクの試験は少し賑やかになってしまった………。
…………本当にいいんだろうか? ボクの中にはまだ不安が残ったままだ。