試練2:突然の出会い
ずいぶん更新が遅れてしまってすみません。
では、どうぞ。
結構走り続けた。
気がつくと、森のより奥の方へ入り込んできてしまったみたいだ。さっきより木が多くて、日光があまり差し込んできてないのか結構暗かった。
…とにかく今の状態じゃ、魔物が来てもどうすることも出来ない。ボクは、微量だけど大気中の魔力を取り込もうと静かに深呼吸をした。
スゥー
ハァー
……………あれ?
なんだかずいぶん体が楽になった気がする。
さっきの深呼吸だけで魔力がどんどんボクに流れ込んできた。
「………ひょっとして、この辺りは樹木が多いから、その分魔力が多いのかな?」
大気中の他に、木や草なんかの自然物もわずかだけど魔力を持ってるって事は、幼稚園で教わった。でも、一回でこれだけの魔力が来るって事は、この辺りの樹木は魔力を多く持っているのかな?
まだよく分からないけど、多分そうだ。だけど、これで危ないときはいつでも魔力を回復できる。まさに魔力の宝石箱。
「よーし! そうと分かったら、どんどんいっくぞー!!」
ここからのボクはとっても快調に進んでいった。樹木のおかげで魔力をケチらなくてもいいから、バンバン魔法を使っていった。
トレント1〜2体程度だったらフレイムを掛けてからすぐ逃げて、固まって来たときは(こっちのパターンの方が圧倒的に多かったけど……)ファイヤーの魔法でさっきみたいに黒こげ炭にしてから、すかさず魔力を回復して……の繰り返し。
これで何とかへなちょこのボクでも結構進むことが出来た。
……そういえば、さっき一体だけ、アーチって言う森の精がいきなり矢を撃ってきてびっくりしたけど、すぐに逃げちゃった。何をしたかったんだろう………………
「……結構進んでるはずなんだけど、どっこにも見あたらないなぁ、神殿」
いくら快調でも、目的地にたどり着けなかったら何の意味もない。樹木で太陽の位置が確認できないから、一体今は何時なんだろう………
ガサッ
「ん、またトレントか?」
…………
「…………」
ザッ、ザッ
………違う。トレントじゃない。何か、人の足跡のような音が草むらの奥から聞こえてくる。
ボクはとっさに身構えた。
ザッ、ザッ、ザッ
……………
「今だ! ファイヤー!」
ボワッ!!
「あちっ!!!」
ん、今なんか変な声が聞こえた様な………
ボクはそぉっと近寄って、奥をのぞいてみると……
「あっちち! 何で急にファイヤーが飛んできたんだ?」
そこには、ボクの放ったファイヤーの直撃に、懸命に手で払って消し去ろうと奮闘している女の子がいた。
女の子って言ってもボクよりかはずーっと年上。十三歳位だろうか。…………って分析してる場合じゃなくて!!
「アクアッ!!」
ボクは大慌てで水系の魔法を女の子に掛けた。
バシャー
ボクの魔法は女の子の頭の上で見事に炸裂した。
そのせいで、女の子は赤いチェックの入った黒い服、スカートからマントまですっかりびしょ濡れになってしまった………
「………ありがと」
「あっ、ごめんなさい……あの、大丈夫ですか?」
ボクはおそるおそる聞いてみた。
「ま、特に強いファイヤーじゃなかったから、黒こげの物は出ずにすんだけど」
女の子は一つに束ねた髪を軽く絞ると、小さなフレイムの玉を目の前に浮かばせて服を乾かし始めた。
「あ。貴方も魔法が使えるんですか?」
ボクはちょっとびっくりして、思わず聞いた。
「……まぁ、一応は」
「へぇー。実はボク、今ここで魔導養成スクールの実技試験を受けている最中なんです。ちょっと今は上手く進んでないんだけど……」
最後の方はやっぱり小声になってしまった。だけど、女の子の顔つきはみるみる変わっていった。
「へぇー! 魔導養成スクールの試験かぁ。 貴方が。………実は、私も試験中なの」
「え、何の試験ですか?」
「それは………」
あ、いきなりこんな事聞くのは失礼だったかな。まだ名前も聞いていなかったのに。
「あ、ごめんなさい……名前はなんていうんですか?」
「私はレイズ。……それで、貴方は?」
「え、ボク、ですか………」
ボクはちょっと返答に困った。が、すぐにおばあちゃんから言われていたことを思い出した。
「ボクは………アストです…………」
「アストかぁー。変わった名前」
あのっ、とボクはすかさずレイズに言った。
「実はこれ………本名じゃないんです………。………本当の名は誰にも言わない様にって、おばあちゃんから言われてるんで」
へぇー、とレイズは言った。
「変わってるんだね。分かった、アスト」
何となく、レイズにはやさしそうな雰囲気が漂っているみたい。結構接しやすかった。
「有り難うございます、レイズさん」
「別に、呼び捨てでいいよー。気軽に行こうよ」
レイズは本当にとっても気軽な感じで言った。
「あ、レイズはどうしてこんな所に来たの?」
ボクは案外さっきまで気づかなかった「?」を、やっと言い出した。
「そのこと? それは…………」