いよいよ試験開始!
ワープ地点は、ただだだっ広いだけの野原だった。(野原というか、「外」と言った方が正しいかも……)だけど、何もない代わりに、そこには沢山の人がいた。
「あっ! 来たよ!」
?? どこかで聞いたことある声………
と、その時。
『ワアアァァァ!!!!!!!』
ドキッ! な、何なんだこの歓声。もとい、黄色い悲鳴は。
「がんばってー!」
「ファイトー!!」
わっ!
ここにいるのは全員、幼稚園の時のお友達だ。クラスの違う子や、園長先生までここに来てる。な、なんか緊張するなぁ。
「おはようございます。良い天気ですね」
ふいに後ろから違う声が聞こえてきて振り返った。
「今日の入学試験は、私と、あと二人の先生達が審査をします。よろしくね」
優しい声のこの先生に、ボクは見覚えがあった。
「あの、貴方って筆記試験の時の………」
「ええ、そうですよ。筆記試験の時の担当でした。」
やっぱり。この青いロングヘアーが似合う美人で優しい先生を、ボクが忘れるはずはなかった。
「あと、今日の実技試験担当の先生と、面接試験担当の先生も一緒に審査をします」
あれ?
今の言葉にボクは妙な違和感を抱いた。奥の方を見ると、さっき言っていた二人の先生が見えた。ん? 「二人」………?
一人は初老の、魔導服に白いケープを掛けた女の先生。もう一人は、真っ黒な髪を一つ結びにした、若い女の先生だ。…………あれれ??
「あの……」
ボクは筆記試験の先生に尋ねた。
「なんですか?」
「えっと……ボクの面接試験の時の先生は来てないんですか? ちょっと気になって………」
ボクの面接試験の時の先生は、確か二人の男の先生だった。だけど、ここには幼稚園の先生達以外で、男の人は一人もいなかった。
「………………」
筆記試験の先生が、急に口を閉じてしまった。
「あ………えっと……あの…」
「ああごめんなさい。今日はその先生はお休みなの。だから、あの先生が代わりに入ったんですよ」
先生は、一つ結びの先生を指差していった。なんだ。ただ休んでただけなのか。
「はい。これ、試験票です」
ボクは試験票を取り出して、先生に渡した。
「あぁ、ありがとう。それじゃぁ、こっちへどうぞ」
ボクは先生について、他の先生の所へ行った。そこは、地面がまっすぐ五メートル位青くなっていた。
「はじめまして」
「こんにちは」
二人の先生が挨拶をした。
「こんにちは。今日はよろしくお願いします」
「じゃぁ、ちょっとこっちに来てね」
そう言われて来たのは、さっきの青い道の一番端だった。そして、先生は向こうの端に立った。
「じゃぁ、その青い道をそのまままっすぐ渡ってこっちまで歩いてきてね」
?? ボクは意味が分からなかったけど、言われたとおりに歩ききった。でも、別に変わったことはなかったけど………
「目立った魔力の反応は無し………と。はい、これで最終チェックは終わりですよ」
………なるほど。
どうやらこれは一定以上の魔力に反応する仕掛けになっているみたいだ。なんかすごいなぁと感心してしまう。
「これをどうぞ」
実技の先生にそう言われて受け取った物は、小さな地図だった。森の中の神殿、荒れ地の塔や、大きな湖なんかが描かれている。
「今日の実技試験の試験課題は、そこに描かれている大地の神殿、幻影の塔、湖底の神殿に隠されている『三つの秘宝玉』を日が沈むまでに探し出してくることです。ちょうどここの森からその荒れ地を通って、湖の方からこの場所へ戻ってくる様になっています」
ボクは地図を見ながら話を聞いていた。
「この地図に描かれている場所の周辺は、強力な魔法結界をかけてあります。先生達は常にこの周辺を見張っているので、何かあったらこの地図にコールドの魔法をかけてください。それが先生達へのサインになります」
話を聞きながら、とんでもない試験だなぁ、と当然思った。だけど、怖じ気づいちゃだめだ、だめだ! ファイト!
「ちょっと後ろを向いてください……」
? 何だろう。
すると、ボクの肩に何かが取り付けられた様な気がした。
側にあった鏡を見ると、それは小さな肩パッドが付いた魔導師のマントだった。
「付けごごちはどうですか? それは、多少のファイヤーやアイスの魔法から身を守ってくれますよ」
実技の先生の話を聞きながら、ボクはほんとに魔導師になったみたいでとても嬉しかった。幼稚園のみんなも、後ろから「かっこいい!」という声を掛けてきた。
「さぁ、この魔法陣へ。いよいよ試験が始まります。がんばってくださいね」
そんな先生の声とともに、魔法陣に乗った。
視界が一瞬ぼやけた……あれ? どうしてだろう?
うーん………やっぱりこの浮遊感にはなれない………………
ワープした所は、ほんとに静かな場所で、ボクは一瞬怖くなった。…でも、みんなが見守ってるんだから、こんな所で怖じ気づいちゃだめだ! ファイト! ボク!
ちょっと自分を励ましてから、地図を開いた。
「目の前の森は……この神殿のある森か。よし、がんばろう!」
ボクは一気に駆け足で目の前の森へと入っていった。
まさか、この森で思いも寄らない出会いをするとは、この時は思ってもいなかった…………………
次話より本編の試験内容へと入っていきます。
どうぞ、これから宜しくお願いします!