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ドタバタな朝の時間

 ジリリリリリ……… 


 うぅ……五月蠅い…………  


 カチッ 


 はぁ………眠い……あともう少し……… 



 …………………………… 



 ………!! 


 ガバァッ 


「いけない! わぁーっ! 大変だぁっ!」 

 ボクはベットから飛び起きると大急ぎで顔を洗った。 

 今日がとても大切な日だって事、少し忘れてたぁ!  

 大急ぎで寝巻きのまま階段を駆け下りた。 

「わわっ。早くしないと!」  

 バタァン!

 ボクは乱暴にリビングのドアを開けた。 

「ちょっと、朝から一体何の騒ぎ?」

 立ったまま息もつかずに朝食を口の放り込んでいるボクの様子を見てお母さんが言った。 

「ふぇ、ふぁっふぇひょうふぁ…」  

「食べながら喋らないの!」  

 怒鳴り気味のお母さんの声で、ボクは口に入れていたハムエッグを慌てて飲み込んだ。  

「今日は魔導養成スクールの入学試験の日だよ! そこまで行くのに二時間ほどかかるから、早く準備しないと…」 

 片手にパンを握りしめて、ボクは超早口で喋った。だけどお母さんはボクの慌てぶりを横に自分の皿の後片付けをしている。 

「あれ、どうしたの? さっさとしないとボク……」 

「おばあちゃんが昨日、試験会場までワープの魔法陣を繋げておいてあげるって言ってたでしょ」 

 

 あ………… 


 お母さんの言葉に、ボクは固まった。

 それで、今口にくわえようとしていたパンを慌てて落としそうになった。 

「全く………」 

 お母さんは今のボクにすっかり呆れている。 

「とりあえず、ゆっくりと朝食を食べてから、着替えてきなさい。服はクローゼットに掛けてあるからね」 

「……へへ……はーい」 

 あーあ………朝からこんな調子で大丈夫だろうか。ボクは、今度はしっかりと椅子に座って、ゆっくりと食べかけのパンをかじった。 




 ボクは朝食を食べてからもう一度上に上がって、クローゼットにあった今日の試験用の服に着替えた。この服は魔導養成スクールから配給された物で、特に上着は実際の魔導師みたいに薄めの軽い皮で出来ている。なんだかそれだけでボクはとっても嬉しかった。 

 あ、説明が遅れたけど、魔導養成スクールっていうのは、将来優秀な魔導師を育てるために「魔法」中心の授業を行っている唯一の学校だ。ちなみにボクのお父さんはとても有名な魔導師で、今は家に帰らずあちこちの町や村を旅して、沢山の人を助けている。 

 話を戻して。で、今日の試験というのは正確には実技試験で、その前の筆記試験、面接試験をクリアした人たちだけが受けられるという、超ハイレベルな試験なのだ。ひぇー。 

 肝心のボクの力量だけど………恥ずかしながら、もっともメジャーなファイヤー系、アイス系の魔法も、楽々使えるのが最下位威力に属する「フレイム」と「コールド」だけ。そもそもこの魔法は簡単な物を燃やしたり、冷やしたりするいわば「家庭用」魔法で、実際、攻撃には全然使えないのだ。その肝心の攻撃魔法も、最下位級に属する「ファイヤー」と「アイス」がやっと使えると言ったほど。

 ………まぁ要は、ボクの力量は魔導養成スクールの入学実技試験を受けるには、とてつもなくへなちょこだということだ………。

 ……………自分で言うのも何だけど、本当にまともに試験を受けられるのか不安になってきた………………。 






 服を着替えて下に降りると、今度はおばあちゃんも朝食を食べにここへ来ていた。 

「あ、おばあちゃん! ねぇ、この服どう?」 

「まぁ、とってもよく似合ってるわよ」 

「へへ……ありがとう」

 お母さんも奥からこっちに来た。 

「あら、よく似合ってるじゃないの。小さな魔導師さんね。…………そう言えば、若い頃のお父さんにそっくり」

 いきなりお母さんがお父さんの話を持ち出してきて、びっくりした。……お父さんの若い頃って、一体どんなんだったんだろう? 

「………ちょっとこっちへおいで」

 ふいに、おばあちゃんがボクを呼んだ。 

「え、なあに?」

 すると、おばあちゃんは懐から少し古めいた赤いスカーフを取り出し、それをボクの頭にバンダナの様にして巻き付けた。 

「わぁ、そっちの方が似合ってるわよ」 

「へへ、そうかなぁ………」

 お母さんがまた褒めてくれて、ボクはちょっぴり嬉しかった。 

「それはお父さんがまだ新米の魔導師だったときによく付けていたんだよ。今日の試験のお守りだよ」

 おばあちゃんの予想外の言葉に、ボクはとってもびっくりした。スカーフは所々破れていたり、シミが付いている所が結構あった。でも、これを昔お父さんが付けていたんだって思うと、ボク、なんかとても嬉しくなってきた!

「……………よし! おばあちゃん、お母さん、ボク、がんばるよ!」 

 さっきの不安な気分はすっかり消え去った。よし! こうなったら、精一杯がんばらなくちゃ!   








「忘れ物はない? しっかり確認した?」 

「うん! 大丈夫だよ、お母さん」

 試験会場へと向かうワープの魔法陣の前で、お母さんはさっきから心配している。

 いよいよ、最終試験をボクは受けるんだ! もう迷いなんか無い。力の尽くす限り、やれる限りやってこなくちゃ! 

「お母さん達も応援してるから、しっかりがんばってね」 

「……しっかりやるのよ」

 お母さん、おばあちゃんの言葉、なんだかいつもより重い感じだ。 

「がんばってくるよ! じゃぁ……行ってくるね」

 ボクはバンダナをしっかりと締めると、ワープの魔法陣の上に乗った。

 ふっ、と軽い浮遊感が出てちょっと焦った束の間、目の前のお母さんとおばあちゃんが、ぐにゃりとゆがんで消え去った。

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