4.天然母とアホな父
はい、というわけで宗島家です。本家です。ちょーお金持ちです。
わかっちゃいたが、俺、ものすごい場違いなところに来た気がするぞ?
・・・っていうか、門構えが普通じゃねぇ・・・どちらかというと、ヤのつく自由業的な雰囲気。あ、いや、全く真逆な職業の親戚がいるわけだし、実は~・・・なんてことはないんだろうが。
「弓弦さん?」
門の前で固まってしまった俺を振り返り、文音さんが首を傾げる。
ええ、貴方にとっちゃ普通の光景なんでしょうがね、こちとら一般ピープルなんですよ!
「今、行きますよ」
ええい!男は度胸だ!父親という名のラスボスに挨拶ぐらい軽くこなさないと、この先この人とは付き合って行けん!
と、腹をくくったものの・・・。
「「「お帰りなさいませ、文音お嬢様」」」
門から玄関までズラッと並んだ使用人達が一斉に頭を下げて出迎える様子を見たら、一気に血の気が引いた。
「ただいま戻りました、お父様はどちらにいらっしゃるの?」
「旦那様は応接間においでになります。それから・・・その、お嬢様の婚約者候補、という方が・・・」
あー、やっぱりそうかー・・・いきなりどこの骨ともわからない~とか言われるとは覚悟してたが、まさか、対抗馬を用意されているとは。なかなかにハードルが高そうだぞ。
「まぁ、お父様ったら・・・私は婚約者を連れて行くと申し上げたのに、婚約者を連れていらっしゃったの?・・・そろそろお歳なのかしら?」
文音さん、それは貴方のお父さんがかわいそうです。どう考えても俺への当て馬でしょうが。―――なんてことは言えず、俺はただ苦笑いをうかべるしかできない。
そんなこんなで通された応接間には、これまたちょーお金持ちそうなお坊ちゃまが3名と、壮齢の男女が談笑していた。
「お父様、ただいま戻りました」
文音さんのその声に彼等は一斉に振り返り、ビシッと笑顔のまま固まった。
ん?なんか固まるようなものがあったか?
俺は後ろを振り返るが、特に変わった様子もない。
「――――――まぁ、まぁっまぁっまぁっ!!文音ったら、その方、どこの王子様!?」
(おそらく)文音さんのお母さんがいち早く復活して、なんと言ったらいいか・・・その、ど天然な発言をした。
「お母様、弓弦さんは王子様ではありませんわ。確かに、王子様のように美麗なお顔ですが・・・カロリー学院の英語科の先生でいらっしゃるのよ、家庭部の顧問をしてらしてね、私の日本文化部との合同マナー講習でお会いして・・・私、弓弦さんに強く惹かれてしまいましたの」
「んっまぁ!なんて素敵!!・・・カロリー学院にお勤めなら、相当優秀でいらっしゃるのね!」
まぁ確かに、御曹子軍団が文句を言わずに受けるレベルの授業じゃないとウチの学院では教鞭をとることができないんだが・・・。
というか、どうしよう!このお母さんと話していると文音さんがまともに見えるんだが!!!
「しかも、理事長直々にスカウトされたそうですの、素晴らしい方でしょう?」
「いやいやいや、素晴らしいなんてとんでもない!私はしがない英語科教諭でして」
「謙遜なんてしなくても良いのよぉ!!だってあの理事長さんに認められるってことは大変なことなのよ?・・・ましてや、カロリー学院の方でしょう?」
え、ヘルシーよりカロリーの方がなんか問題でもあるのか?そんな風に感じたことはないんだが・・・。
「弓弦さん、カロリー学院の理事って生徒の父親が多いのをご存知?」
「え?そうなんですか?」
「ええ、その方々の監査で年に何名かの先生がクビになってますのよ」
く、クビ!?・・・いや、いつの間にか辞めている先生がいるってのは気付いてたけど、クビだったわけか!?
「え、じゃ、理事に嫌われたからクビ、とかなんですか?」
「そこまで大人気ないわけでは・・・おそらく、求められるレベルに達していなかったということでしょう」
「そ、そうなんですか・・・」
し、知らないうちに監査されてたのか・・・それって、どれくらいの先生が知っているんだろうか・・・。
「でも、弓弦さんは絶対に大丈夫ですわ。辞めさせられるのは最初の2,3年ですから」
あー・・・俺はもう5年になるもんなぁ・・・。
というか、お父さんと婚約者の人達はいつまで固まってるんだろうか。なんて考えていたら、
「ゆ・・・許さん!!許さんぞ!!」
お父さんが突然そう叫んで立ち上がった。
「あら、あなた。こんなステキな方のどこが気に入らないのかしら?」
全部だと思います、お母さん。男親って言いうのは総じて娘が彼氏を連れてきたら不機嫌になるもんです。・・・多分!
「全部だ!!」
あ、やっぱり・・・まぁ、対抗馬を用意するくらいだしな。
「まぁ!酷いわ!弓弦さんのことをろくに知ろうともなさらないで、全部気に入らないなんて!どうしてですの!?」
おお、文音さんが反論した!
「決まっているだろう!この男がお前の隣に立ってみろ!」
うーん・・・不釣合いだ、っていうことか?
「あら、私はお似合いだと思いますけれど」
お母さんがすかさずフォローを入れてくれる。・・・ああ、ありがとうございます。
「カロリー学院の教師で、そんなに美麗な顔をしていては、隣にいる文音が霞むだろう!!」
―――――――――――――――――――は?
霞むって・・・霞むって!!・・・・・・・・・・・・そんな理由で全部気にいらんとか、アンタはアホかッ!!!