2.カウンセリングと姫の暴走
久々です・・・姫が暴走してますが・・・仕様です。
「――じゃあ、そもそもストーキングじゃないと思ってるってコトか?」
「ええ、そうだと思いますよ」
参之瀬先生が呆れたように言う。
そりゃそうだろう。ストーカーであることを自覚せずにつきまといをする人間はいるが、つきまとっているという自覚があるのに、それがストーキングという行為であることを知らないというのだから。
「さすが“姫”・・・ダントツで突きぬけてるなぁ」
「たぶん、護衛の延長線上に考えてるんでしょうねぇ・・・」
「あぁ、なるほど。姫には護衛が常についてて、動く壁だか柱だかと思ってるんだろ?」
「ええ、そんなこと言ってましたねぇ・・・ハイエナのごとく逆玉を狙ううちの部活の連中も、さすがに唖然としてましたよ・・・」
「あはは!あのガキどもがねぇ。まぁ、姫はちょっとばかり、ガキどもには荷が重いわな~・・・で、最首先生はどう思ってるわけ?」
「いや・・・ストーキングされているだけで、告白されたわけでもありませんし。なんとも言えないんですが」
「でもありゃ、完全に“恋する乙女”の行動だろ?」
「いや、あの人のコトだから、わかりませんよ?」
「・・・うーん・・・とりあえず、捕まえてみるとか?」
「逆に護衛に捕まりますよ、そんなことしたら」
「おぉう、打つ手がないなぁ・・・向こうが行動を起こせばまた違うんだろうが・・・そんな気配はあるか?」
「わかりませんよ、そんなの・・・」
俺がガックリと肩を落とすと、参之瀬先生はふぅん、と呟いて俺を眺めまわした。
「・・・一応、心配してたんだが・・・精神的に追い詰められてる風でもないし、悪気があるわけじゃないって理解してるみたいだし、諦め半分で受け入れてる時点で、最首先生も姫のことをそう憎からず想ってるんじゃないのか?」
「は!?」
俺はガバリ、と顔をあげて参之瀬先生の表情を見る。そして、冗談を言っているわけではないと気付いて愕然とした。
そう、見えるのか。
「あれ?違うのか?」
参之瀬先生が首を傾げる。
「自覚ありません・・・でも、傍から見てそう思えるなら、そうなのかもしれません・・・」
「・・・まぁ、最首先生は美麗すぎるからなぁ・・・女性のほうが遠慮しちまって遠巻きにされてるだけだったもんなぁ・・・初めての体験だよなぁ、女性の方から言い寄られるなんて」
「・・・美麗すぎるって・・・」
「なんだぁ、それも自覚なしか?・・・鏡見てみろ鏡」
「いや・・・いつも朝の支度の時には見てるんで・・・」
「見慣れてるってわけか・・・はぁ・・・」
参之瀬先生が呆れたように溜息をついた。え?今、溜息をつかれるところか?
「見慣れてるっていうか・・・まぁ、昔は女みたいだとからかわれたことはありますが・・・」
「・・・・・・はぁああ・・・」
また更に深い溜息をつかれた。一体、なんで参之瀬先生はこんなに疲れた表情をうかべているんだ?
「あの、参之瀬先生?」
「いや、いい・・・気にするな。うん。わかってたけどな、お前の中身はフツーのパンピーだってことは。外見だけなら王子様だから、つい、忘れがちだが」
外見が王子って・・・いや、そこまでのものじゃないだろうに(←無自覚)。
「外見とか中身とかよくわかりませんが・・・俺は徹頭徹尾一般人ですよ」
「・・・まぁ、最首先生がそれで良いなら、いいか。まぁ、心療内科は専門じゃないが、愚痴りたくなったらいつでも来ていいからな?溜めこみ過ぎるのはよくないし」
「あ、はい。ありがとうございます、参之瀬先生」
俺はぺこり、と頭を下げ、第三保健室を後にする。
途端に視線を感じて、フッとそちらに視線を向けるとあの人とバッチリ目があった。
「宗島先生・・・」
その名前を呼べば、彼女は微笑みをうかべたまま俺の傍に歩み寄ってきた。
「最首先生、責任・・・とってください」
ぎゃああああ!!突然何を言い出すんだ!!このお嬢様はっ!!
「は!?・・・な、何の話ですか!!!」
「貴方を見ているだけで胸がドキドキするんです、その、責任をとってください」
「せ、責任って・・・」
責任転嫁にもほどがある!!暴走しすぎだろ!?
あわあわと俺が慌てていたら、彼女はポ、と頬を赤らめてもじもじとしながら言った。
「・・・お、お付き合い、していただきたいんですの」
こ、告白?これ、告白だよな?
つか、告白すんのに相手を脅すなぁああああああッ!!!
今思い返せば、この時までの苦労など、それからの苦労に比べればどうってことのないものだった。ああ、comeback!俺の日常!!
最首先生の受難は続く。