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1.ストーカーじゃないですよ?

 教師恋物語第2弾は、第1弾でも登場した最首先生がいろいろと“姫”に振り回されるお話です!

 一応、第1弾を読んでいなくても大丈夫なようにしてあります!

――side 文音(あやね)


 出会いは部活動の顧問打ち合わせの時でしたわ。


 その時はわかりませんでしたが・・・たぶん、一目惚れというものだったのでしょう。


 その方の東洋と西洋が交じり合った容貌が、まるで絵画から飛び出してきたかのように美麗(びれい)で・・・私は表面に出さないようにするのが精一杯でしたの。


 そして、カロリー学院家庭部と私達ヘルシー女学園日本文化部との合同マナー講座(和食)での見た目だけではない美しい所作に、私はすっかり参ってしまったのです。


 それからの私は確かに異常だったと自覚しておりますわ。なにせ初恋というものでしたので、どのように行動すれば良いのかわからなかったのです。


 そんなわけで、同僚である古和 純(ふるわ じゅん)先生に相談したのですが・・・。


「ちょ、ちょっと!それはまるっきりストーカーじゃないの!!ダメダメ!そんなことしたら、相手を(おび)えさせるだけ!・・・そうね・・・とにかく、告白してらっしゃい!!」


 と、すっかりお説教(せっきょう)をされてしまいましたの。


 あら、この行為ってストーカーというのですか?護衛の真似をしてあの方の行動をずっと見ていただけですのに。


 でも、どうしましょう?告白って、なんて言えば良いのか、わからないのですけれど・・・。


 とりあえず、告白するタイミングを計らないといけませんわね。すっかり日課となってしまっているあの方の観察に行くことにしましょう。



――side 弓弦(ゆずる)


 最近やたらと視線を感じるとは思っていた。


 ちらりと黒いモノが視界の端に映り、うっかりそちらを見てしまった時にその視線が誰ものかわかってしまった。


 それから1週間。放課後になるとあの人は俺の元にやってくる。っていうか、俺をじっと見つめているのだ。


「ゆ、弓弦・・・い、いいの?」


 ああ、繊細(せんさい)冬芽(とうが)にはキツイよな。


 たぶん、あの人にストーカーという意識はないだろう。なにせ、やんごとなきお家の出身で、常に護衛がはりついているような人だ。


「いや・・・まぁ、大丈夫だ。あの人には俺達パンピー(一般人)の常識は通じないだけで・・・」


「それは、まぁ、この学校に勤務しているから“ああいう人達”とは感覚が違うっていうのはわかってるけど・・・こうと思ったら突っ走る人が多いから気をつけた方が良いよ?」


 どうも俺の事を心配してくれているらしい。普段はピーピー泣いていることが多い冬芽だが、たまに年上らしい余裕を見せることがある。


しかも、塾講師から理事長に引っ張られてこの学校に赴任した俺と違い、大学新卒で奇人変人天才の巣窟(そうくつ)であるこの学校に赴任しているから危機察知能力は高い。


 その冬芽が気にするくらいに危険、なのか?まさかとは思うが、本気でストーカーになりかけているのだろうか?いや、ただパンピーの生活に興味があるだけ?


 “姫”なんていうあだ名がつくくらいの根っからのお嬢様だから、加減を知らないのかもしれない。いや、むしろ、常に護衛にはりつかれている人だからこそ、この異常性に気付いていないのだ。たぶん・・・いや、きっと。


「とりあえず様子見する・・・」


「うん、僕でよかったら話くらいは聞くよ」


 冬芽にそんなことを言われる日が来るとは思わなかった。


 そう。ちょうど俺があの人のストーキングに気付いた1週間前に、鴻崎(こうざき)先生とお付き合いすることになったと宣言されて以降、冬芽の精神は見る間に落ち付いたものに変わったのだ。


 ああ、俺の保護者の役割も終わりかと思うと、嬉しい半面寂しさもあった。 


 しかも、食べることすら忘れることもある冬芽に、鴻崎先生は様々な工夫をして食事をとらせるようになった。これでますます俺の出番はなくなる。


 むしろ、朝の弱い俺が冬芽に起こされるという日課だけが残って、今じゃ俺の方が冬芽に世話になっているような状態だ。


「・・・ああ」


 俺は頷いて、冬芽と別れる。


 やっと幸せを掴んだ冬芽にこれ以上心配をかけさせたくはない。


 そろそろちゃんと話し合った方が良いんだろうか?


「・・・おお、今日もまたバレバレだなぁ」


「!?」


 全く気配を感じなかった背後からの声に、俺はビクッと反応してしまう。


「よ!最首(さいしゅ)先生。噂になってるぞ~、彼・女」


「さ・・・参之瀬(さんのせ)先生・・・」


 ニヤリ、と笑って俺をからかってくるこの人は、参之瀬 毅(さんのせ つよし)先生。カロリー学院の保健医で、元はどこかの大学病院で外科をしていたらしい。


 外科医が保健医ってどういう心境の変化だったかは知らないが、やっぱり俺と同じく理事長に熱心に口説(くど)かれたのだろう。ちなみに誤解のないように説明するが、口説くっていうのはそういう意味ではなく、ぜひウチで働いて欲しい、という勧誘のことだ。


「大丈夫か?参ってないか?・・・この学院の生徒・教職員の健康を守る保健医のおにーさんに、ちーっと話してみないか?」


 つまり、カウンセリング、というわけだ。


 参之瀬先生は3人いる保健医の中で唯一の男性だ。2人の女性の先生には相談しにくいことも参之瀬先生になら言えるという生徒も多くいる。


「―――お世話になります」


 というか、マジで話を聞いてください!!


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