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第三話

あたしは入部届けにスラスラと名前を書いた。そして大きな文字で卓球部希望と書き記した。

「なあ、お前どこはいんの?」

ユウが落ち着かない様子でたずねる。こいつ、運動真剣ハンパねーからな。陸上とかはいんのかな?

「あたしは卓球」

カタン、席を立ち、入部届けを恵先生に差し出した。恵先生は意味深な笑みを浮かべ受け取った。

私もクスリと微笑み返した。

ユウを見ると、紙に即座に字を書き始めた。卓球部、と。

「へぇ、雄一くん楓に合わせたのね」

隣でマリがクスクス笑う。ちょっとした仕草が可愛い。

てゆーか、キャラ変わってない?

それ以前に、

「合わせてるわけないじゃん⁇たまたま、卓球入る予定だったのよ!きっと」

マリはあら、とつぶやきあたしを見つめた。

「雄一くんとあんた六年間同クラだったんでしょ?部活の話はしたハズ。だから雄一くん、体操部以外はいかなかったわよ。入部届けにも初めは体操部ってかいてあったし、体操部の部長とも世間話するくらい、仲良くなったって」

マリがスラスラと話を進める。

「ちょ、ちょっと待って。んな情報どこで…」

「ふふっ、私情報屋なのよね」

顔に人差し指を立てながらマリは教室を後にした。つーかまだ授業中ですが。美少女だと成績に関するダメージも減少だと。やれやれ、美少女はいいねえ。

あたしはマリに冷めた視線を送ると、再び席に戻った。


そして始めての部活動。あたしたち卓球部は自己紹介を行っていた。

「伊吹 楓です!卓球とは縁はありませんがどうぞよろしくお願いします」

ぺこりとお辞儀をし、あたしは床に座る。すると、どわっ!と歓声が男子の方から聞こえてきた。チラリと見ると、ユウがペコペコお辞儀しながら笑っていた。

「あの原野沢 雄一かよっ!」「運動界のバケモノ!」「コレで我が南丘中学校の強さは守られる」

「高中抜かせるんじゃね?」「うおー!」

などなど。へぇ、ユウって有名人なんだね。まあ、あれは並の身体能力ではないよなー。はっとすると女子もヒソヒソし始めた。

「ヘェ〜あれが『バケノ沢』!」

「すごおい」「てか、カッコいくない⁈」「イケメンだよっ」「本当!告白しよーかなあ?なんてー」

んんっ⁇だんだんしょーもない話に…って、ユウも何照れてんの⁈馬鹿たれ!すぐちょーし乗るんだから!

あたしは悠然としたフリをしながらチラチラ様子を伺っていた。しかし、部長の言葉と共に、目線は打ち切られた。

「ほらほら、みんな~前向こう?私と野苺ちゃんまだでしょう?ね?」

部長はそういうとすう、とひと息吹いた。

「私は部長の部長西田 美香です。みんなよろしくね」

ニコリ、部長はまあまあの美人で、その笑顔ときたら美しい。小さい顔に綺麗なピンク髪が胸の少し上くらいの位置で垂れ下がる。そして何といっても美しいひとみ!ああ、美香様~。と、危うくストーカーにまでなりたくなってしまうなぅ。

部長が座るとすぐ一人の生徒が立ち上がる。

「あたしは二年の宮原 野苺。よろしくね。厳しいかもだけど、それは上手くなるために必要なことよ。耐えなさい」

冷たく言い張り、一年生が少しざわめく。しかしあたしは素直に「かっこいい」と思えた。まるで先生みたいだなあ。

野苺センパイは名前通り紅い髪だ。その髪をサイドに一つで括っている。何処か冷たく魔の雰囲気を漂わせる紅色の瞳には燃える闘志も感じられた。

あたしは吸い寄せられるように野苺センパイの瞳を見つめた。

「野苺ちゃんは卓球部のエースなんだよっ!さてさて、練習しますか!一年生はー、」

「外周二十周。もちろん男女共に」

部長のセリフを遮るように、恵先生が叫んだ。って、はあ⁈

「「にっ二十周⁈」」

一年生全員が大合唱のように叫び返した。しかし、ユウとマリは落ち着いていた。そして水筒を掴み、失礼します。と、扉に手をかけた。

「ちょっ、ユウはともかくマリ⁈何でそんな冷静なのさ⁈」

「あら、言ったでしょう?マラソンが趣味だって。毎日20キロ走ってるわ、もちろん美容のために」

に、20⁈バケモノだよこいつ!すると、トドメを指すような一言が野苺センパイの口から発せられた。

「ついでに一周800mよ。つまり800×20で16キロになるわね」

じゅ、16ぅ⁈んだそらー⁈あたしがとんでもない顔をすると、ユウが励ますようにあたしの肩を叩いた。

「大丈夫だって!お前、体育系女子だろ?100m走、俺に勝った事あるじゃないか」

「それは短距離でしょー⁈」

「女子マラソン大会で見事に一位だったろ!」

「それは小学校で一キロだったもん!今回は16キロだよ⁈」

「うっ…」

あたしとユウが口論してる間、みんなその様子をおとなしく眺めていた。が、やっとここで部長が口を開いた。

「はいっ、やめ~!心配しなくても歩くの全然OKだよ?」

部長が微笑みながら有難い言葉を仰られた。ああ、女神様…。

「でもリタイアはなしね」

恵先生も同じく微笑みながら言葉をかける。ああ、悪魔め…。

しかしまあ、やるしかないか。普通に足が遅い子いるだろうし。その子はあたしより悲劇的だろう。

「あ、学年リーダー決めてね!男子は一人でいいけど女子は人数多いから二人ねっ」

「ンなもん私が決める。原野沢 雄一、上野 麻里奈、伊吹 楓!」

またまた、悪魔が叫ぶ。勝手に決めんなや!ボケ!

ともかく、一年生はグラウンドへと足を進めた。

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