第一話
「へへ~♪今日から中学生かあ!楽しみぃ~」
あたしは伊吹 楓。新一年生だ。
この日をどれだけ楽しみにしていたか。もう表しきれないほどワクワクしている。
道を歩く一歩一歩が楽しい。
昨日入学式があり、今日は始めての授業となる。つっても説明だけどなっ!校門につくと見覚えのある人影が見えた。
「おーいっ、ユウ~」
「⁉…楓か。おはよ」
ユウこと、原野沢 雄一とは小学校六年間の付き合いだ。そして、今年も同クラだ。全く、いつまで一緒なんだか。
「今年も同クラだねーいつまでついてくんのさ?」
「ンなッ!お前がついてきてんだろー⁈本当最悪だよ!また同クラかよっ!」
ユウが必死に反論する。ユウは見た目によらずとんでもない負けず嫌いだ。しかし、とてもピュアで扱いやすい。
「えー、あたしは嬉しかったのになあ…ユウは嫌だったの?」
あたしはワザとうなだれる。もう泣く寸前みたいなかんじで。案の定、ユウが慌て始める。
「えっ、ちょ、泣くなよ!嫌じゃねーし!本当に‼」
ははっ、おっかしいー!ほんと、素直だねー。あたしはにかっと笑って見せた。
「はっはっはー!騙された~!ユウうけるーっ」
「!な、な、な、な、バカヤロー‼」
あたしはしばらく笑う。ユウは笑うなー!と、顔を赤くして怒っている。おちつきを取り戻し、あたしは改めてユウをみた。
あたしと同じの綺麗な金髪。美しい瞳。小学校では、あたしと身長が変わらなかったのに、今ではあたしを大きく上回る身長。そして学ラン。
すべてが新鮮に感じられた。ああ、ユウももう中学生なんだなあと実感する。
「ふふっ、学ラン似合ってんよ!」
バシバシと背中を叩きながらユウに笑いかける。いたっと聞こえたがとりあえずはスルーした。
「さ、さんきゅー…。か、楓もセーラ服、に、似合ってるぜ?」
‼ユウが珍しく人を褒めるもんだから驚いた。そして体が熱くなる。なんだ?どうしたんだ、あたし。
「とうぜんっ!ほらほら、きょーしついこっ!」
そのままユウを押して教室へ向かった。
そういえば昨日は誰とも話さなかった。入ったら知ってる人もいたけど元同クラはユウを含めて二人だった。もともと仲はそんなに言いわけでもなかった。他のクラスの子もいたけどせきが遠くてしゃべれなかった。てゆーか喋ろうも先生に静かにしましょうと止められた。席の周りは他の学校の生徒ばかりだった。
そんな事を考えながら教室の戸をガラリとあけると、まあ、そこは葬式のようだった。同クラの子としゃべる子もいたが、沈黙の生徒が多数だった。
あたしは自分の席にかばん投げ、準備をした。やれやれ、大丈夫か?このクラス。
後ろをチラリと見ると、透き通るような青く長い髪をもつ超美少女が勉強をしていた。
「えらっ」
思わず本音がでた。結構でかい声で。教室が一瞬静まり返る。
うわ、やっちゃった?
「全然えらくないよ!新入生テスト明日じゃん?私馬鹿だから勉強しないとアウトかなって」
意外にも女の子が言葉を返してくれた。おお、いいこ。
「げ、あたしじゃあアウトじゃん!てか名前は?」
「あっ、うん。私の名前は上野 麻里奈!マリって言われてるよっ!よろしく!」
「うん、よろしくなっマリ!あたしは伊吹 楓っ!まー楓でよろしく!」
そのまましばらく談笑をした。周りも自己紹介を始めた。うん、でだしとしては上出来っ!
キーンコーンカーンコーン…
鐘がなる。それと同時に教室の戸が開いた。
「よしっ、皆さん初めましてっ!5組担任の花坂 恵よ!よろしくね!んじゃー一時間目は自己紹介!名前、出身校、シュミ、一言!こんなもんね。じゃー、一番
から」
ショートカットで茶髪の先生はさらりと自己紹介をこなす。そして続けざまに自己紹介説明をした。急な先生だ。
「えっ、あっ、赤井 晴樹です!北小出身ですっ!趣味は読書…です、えっと、よろしくお願いします」
まあ、だいたいはこんな感じで男子一列が終了した。そこで討論になった。
「先生ー次は女子ですか?それとも男子が言ってその後女子ですか?」
男子の生徒が質問する。しかし先生より先にあたしが口を開いた。
「はあ⁈んなもん男子が先にきまってんじゃん!出席番号考えろよ!」
まだ自己紹介が終わってない男子が言い返す。
「不公平だろ‼席順でいいだろが!女子も交互だ!」
わーわー騒いでいると、先生が「静かにっ」と教卓を叩いた。言い争いが止まる。先生はこほんっと咳払いをすると叫んだ。
「男子女子交互にするっ!よって女子一番、伊吹!お前からだ!」
「えええええええ⁈」
「よっしゃああああ‼」
二つの声が混じり合う。無論、最初はあたし、次は男子だ。
「くっそお…。伊吹 楓!南小出身、趣味はひるねっ!ぶっちゃけ男子は頼りないっ!以上!」
男子を睨みながらガタン!と着席する。男子が何やら言っているが、思いきしスルーした。
「あー、上野 麻里奈です。東小出身で、趣味はランニングです。これから一年間よろしくお願いします」
マリが可愛らしい笑顔で自己紹介する。男子はほんわりした顔になっていた。まじ単純!
とまあ、どんどん自己紹介が続きー、
「原野沢 雄一。南小出身、趣味は運動。よろしく」
え、無愛想すぎない?あたしはかるーく口を挟んだ。
「ちょ、ユウ無愛想すぎだから!みんな~こいつ恥ずかしがり屋なだけだからねえ」
「な、何言うんだよ」
ユウが顔を染めながら答える。世話やけるなー。見ると周りがヒソヒソし、マリがニヤニヤしている。えっ、何々⁈
「ちょっと~どーゆー関係?」
マリがニヤニヤしたまんま問いかける。
「え、六年間同クラだったってだけだよ?どーしたのさ」
あたしはマリに聞いたが、マリは別っつにい~?と、はぐらかす。本当に何なんだよ!まあ、自己紹介はどんどん進みやがて終わった。
「はいっ、まー名前は頑張って覚えなっ!以上!」
それだけいい、先生は教室を後にした。まだ二十分あるのに…。自習ってことか。
マリを見ると勉強をし始めた。えらいなー、マジで。あたしもするかあ。あたしはノートと筆箱を机におき、シャーペンを走らせた。
「おっ、楓勉強?えらいじゃん!どれどれ、見せてみー…はあっ⁈」
マリが声を荒げる。そりゃそうだろう。あたしは勉強などせず、『マンガ』を書いていたのだから…。
「まじありえないっ!あーでもまあまあ上手いじゃん!」
マリが感心したようにノートをのぞく。あたしはニコリと笑い、読む?とノートを差し出した。
「お、サンキュー」
マリが笑いながら受け取った。そしてパラパラ読み始める。あたしは何気に緊張しながらマリの表情をうかがった。うん、面白そうだ。あたしはホッとため息をついた。
「うん、面白いっ!絵も可愛い!」
マリがニコニコしながらノートをあたしに返す。あたしは初めて人にマンガを見せたため、褒められたのが嬉しかった。ノートを受け取ると、早速続きを書き始めた。