(1/3)妖怪に追いかけられたサッカー部員
高校2年って割と暇だ。入学時のあたふたもなく、受験に狂うこともない。ある意味ダレる1年間だ。
そんな夏の昼休みの話。
「ねえ、枯尾花君、何か面白い話ない?」
と隣の席の遠山友梨、通称、委員長が聞いてくる。
まあ、いつもの事だ。
「ないよ」と事実だけ伝える。
「相変わらず、そっけないね。こんな可愛い私が声かけてるのに」
「委員長って、可愛いと言うよりクール系だろ」
「うーーん、そう見えているのか。それでもいいけど」
と、いつもの義務的会話をしているところに、クラスメートがやって来た。確かサッカー部だったか。
名前はそう、野村だ。
「なぁ、枯尾花って、陰陽師なんだろう。相談に乗ってくれよ」
と挨拶もなしに野村は言ってくる。
誰だよ、俺のこと陰陽師なんて言ってる奴は。家が寺だからかぁ。陰陽師と坊さんは全く違うぞ。
でも、面倒だから否定しない。これもいつもの事だ。話を聞いてやろう。
「今日、朝練のため、学校までジョギングで来たんだ。そしたら途中霧がかかってきて、不気味な雰囲気になってさ、何があったと思う」
「幽霊でも出たか?」と期待してそうな答を返してやる。
「そうなんだよ、走ってる俺の後から別の足音が聞こえ、振り向いたらいたんだ」
「幽霊か?」
「ああ、ぼんやりした姿で追いかけて来たんだ。死に物狂いで逃げたよ」
「じゃぁ、いいじゃん」
「でも、取り憑かれてないかな。気になって気になって、授業中も寝れないよ」
「授業中は起きとけよ」
隣で委員長が笑っているが無視しておく。
「じゃぁ、見に行くか」と野村に言う。
「え、どこ行くんだよ」
「お前が幽霊を見たって言う道さ」
「やだよ」と駄々をこねる野村を無視して放課後の時間を指定する。
すごすごと席に戻る野村を見送り隣に声をかける。
「委員長はどう思う?」
「普通に考えたら、思い込みとか、錯覚でしょう」
「そうだよな。それを証明しに行ってやるか」
「枯尾花君って、結局、面倒見がいいよね」
「そんなことあるかよ」と突き放しておく。
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放課後、校門を出て、幽霊が出たという道に向かう。そういえば校門脇に小さな花束があった。そうか、今日はあの日か。
困った事に委員長も付いてきた。俺一人じゃ頼りないとか言いやがる。
問題の道に着いたので野村に確認する。
「なあ、このあたりか。お前が変なものを見たってのは?」
「そうだよ。やっぱり帰ろうよ。日が暮れるよ」
「待てよ。分かったから」
「えっ」
面白い様に単純な反応を示す奴だ。
「朝、霧がかかってたと言ったろう。そして丁度この道は東西方向だから朝日が差す」
「だと、どうなるんだ」
「朝日で霧に野村の姿が写っただけさ。ブロッケンの妖怪っていう現象だ」
「じゃぁ、取り憑かれた心配はないんだよな」
「当たり前だろ。足音が聞こえたってのは反響だな」
「ありがとう、ありがとう」と野村が感動してるので放置しておく。
幽霊とか怪奇現象の類はこんなものさ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
翌日の昼休み、例によって委員長と無駄話をする。
「今日、野村はすっきりした顔してたぞ。これでいいよな」
「うん、本人の悩みが消えたからそれでいいんじゃない」
「なんか気になる言い方だな。まだ何かあるかな」
「あのね、枯尾花君。ブロッケンの妖怪現象は背後から太陽光が差して目の前の霧に姿が映るの」
「それで」
「あそこの道、朝、家から学校に向かう方向にジョギングしてたら逆光よ。妖怪は出ないよね」
そうか、放課後すなわち夕日で考えてしまったけど委員長の言うとおりだな。とは思ったが軽めに返す。
「いいんだよ。本人がスッキリすれば。病は気からって言うだろ」
委員長は軽く笑って肩をすくめた。
クール系だが可愛いな、と思ってしまったが口にはしない。
そろそろ昼休みも終わる頃だ。




