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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

魔女と四人の王子様

作者: ささきいろ
掲載日:2025/11/12

 


 昔々とある小さな国に四人の王子様がいました。


 長男ラインハルトは王族として完璧で、国一番の頭脳を誇る叡智ある賢き王子。


 次男リカルドは剣の才能に長け、最強の剣技を誇る強き王子。


 末子ローズモンドは地上の天使と歌われる美貌と歌声を誇る美しき王子。


 そして三男のルカは特に秀でた才はなく見た目も極めて平凡だが、分け隔てなく人を助ける心優しき王子でした。


 四人の王子は支え合い、互いを敬い合い、穏やかに幸せに暮らしていました。




 ある日、この小さな国に隣の国の王女が訪れました。大陸一番の大国の王女は近隣諸国でも高名な小さな国の四王子に会いにきたのです。

 王女は連絡もなく突然王宮にやってくると、謁見の間に並ぶ王子を見て、次々と褒め称えました。



「ラインハルト様、なんて聡明なるオーラなの! 貴方を見ているだけでまるで極上の宝石を眺めているように思わせる気品だわ」


「リカルド様、なんてたくましい腕……! 貴方の剣に守られるのことこそ女に生まれた本望」


「ローズモンド様、なんて愛らしい姿。貴方の声を聞いているだけで天使に祝福されている気分よ」



 ただし隣に立つ地味な三男は、少し見ただけで嘲り笑いました。



「ルカ様……貴方は本当に血が繋がった兄弟なの? 凡庸の文字をそのまま人にしたような、見どころのない王子ね」



 そう言って嘲笑を浮かべる王女の姿に、三兄弟の中で何かが切れました。

 それぞれの従者が「抑えて」と必死に体を掴んで宥める中でも、空気を読まずに侮辱を続ける王女に兄弟たちは心底腹立せました。

 しかし相手は大国の王女、小国の王子に抗議など許されません。


 怒りの鎮まらない三人は、城の裏に広がる深い森に住む魔女に頼んで傲慢な王女を呪ってもらうことにしました。



「面白い、その依頼引き受けた。呪いの代償はお前たち三人のうちのひとりが私の永遠の奴隷となること」



 鬱蒼と木々の生い茂る森の奥深くに住む妖艶な黒髪の魔女は、棲家にやってきた王子に向かって笑いながら呪いの条件を告げました。

 永遠の奴隷と聞いて王子たちは臆しましたが、三人の王子はお互いの顔を見て、皆が頷くのを確認してその条件を呑みました。

 三人とも「自分が魔女の奴隷になれば良い」と考えていたのです。


 取引は成立。即座に呪いの魔法は発動、大国の城に帰ったわがまま姫の美貌は爛れ、髪は抜け落ち、体からは腐臭が立ち込めて、声はガラガラに枯れてしまいました。

 魔法の鏡に映った憎き王女が悶え苦しむ姿に三人の王子たちは大いに笑いました。

 大切な兄弟を馬鹿にした王女に相応な姿だと醜くなった彼女を見て胸がすく思いを感じました。



「呪いは成功した、さぁ……代償を!」



 そして続いた魔女の言葉に三者とも身を乗り出して立候補します。三兄弟の誰もが「自分が魔女の奴隷になる」と譲りませんでした。


 賢き王子ラインハルトは言いました。

「私が一番年長だ、それに私もローズのように幼い頃は天使と呼ばれていた」


 強き王子リカルドも負けじと主張します。

「俺が一番頑丈だ、戦いに対する知恵ならラインハルト兄上よりも上回る」


 美しき王子ローズモンドも引き下がりません。

「僕が一番可愛いし、兄弟でゴキブリを潰せる勇気があるのは僕だけ!」


 口々に自分が奴隷に選ばれようとアピールします。てっきり醜く奴隷の役を押し付け合う思っていた魔女も少し呆れています。


 そこに三男の凡庸王子のルカが慌てた顔をして魔女の棲家にやってきました。鏡に映る王女の恐ろしい姿に顔を青くした三男は、争い合う兄弟の横で膝をつき魔女に懇願しました。


「いくら家族が侮辱されたからって、こんな残酷な報復はよくない! 報いは自分が受けるから、王女の呪いは解除して、兄弟たちを解放してほしい」と願います。


 かねてからルカの善良さに目をつけていた魔女はニヤリと笑い、平凡な王子の望みを叶えてやることにしました。


「では凡庸な王子は私がいただいていく」


 魔女はそう言葉を残し、三男だけを連れて魔法でどこかに消えてしまいます。

 三人の王子が気がつくとそこはもう何もない空間が広がって、魔女とルカの姿は忽然と消え去っていました。

 三人の残された王子は自分たちの復讐心のせいで、心優しいルカが恐ろしい魔女の犠牲になったと落ち込みました。

 身の程に合わぬ力など求めなければ、大切な兄弟が永遠の奴隷になることなどなかったのです。

 三王子の悲しみで、小さな国の城や街は真っ暗な空気に包まれました。





 しかし数ヶ月後、小さな国の王城に第三王子の字で綴られた手紙がどこからともなく届きました。


『魔女さんはとても優しいし、凡庸な自分を心から慈しみ愛してくれています。二人で幸せに暮らしているので、兄上たちもどうか嘆かないでください』


 手紙を受け取った三兄弟は心から安堵して、世界のどこかで幸せに暮らしている優しい兄弟の幸福を祈り、兄弟で支え合い敬い合う穏やかな日々を再び送りました。




 なお、わがまま王女の呪いはルカの願い通りに消えましたが大国に災いを持ち込んだ罰として王女は父王に廃嫡され、国の辺境の塔に生涯幽閉されましたとさ。




 終わり

書いてみたかった童話風です。


ルカ推しの魔女さんの一人勝ちです。

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