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相手の思うままに処刑された悪役令嬢は、やり直して悪役令息を想う  作者: あーちゃんぬ
二章 友人だった令嬢は、少し苦手だった
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21話 罪悪感

 接客に行ったユナとカリンと別れ、ミリカールアは庭を見る。彼女たちの庭は自然がたくさんあり、ボーボーに生えている訳でもなく雑草は刈られていて、自分たちが植えたと思われる花々しかない。しかも整備されている。素敵な庭だなとミリカールアは改めて思った。


「でも、暇になっちゃった………」


 素敵な庭も、ミリカールアは夢中になって見た。だが、見過ぎて暇になってしまったというのが現状だ。どうするかと暫し悩み、ここに来た目的である花瓶を探すということを達成するため、ミリカールアは庭を出た。庭を出て店内に行ったことは、騎士の一人に、友達になったユナとカリンの母親に言ってもらおう。


「うわぁ………凄いわね」


 様々な食器、花瓶や日用品などが多く並べられている。そしてその全ての品々がピカピカで、細かく、かつ丁寧に、傷が付かずに磨かれているのだろう。


(そう言えば、カリンとユナが見つからない)


 辺りを見渡すと、レジカウンターにカリンが居た。そのことに嬉しくなるのも一瞬の出来事で、ミリカールアはすぐにカリンと話している令嬢を見付ける。


「嘘でしょう?」


 思わず呟いてしまうくらい、ミリカールアは焦燥に駆られていた。

 カリンと話している令嬢はループ前に自分の友人だった、彼女。


「……………っ、なん」


 令息には強気で言い、令嬢には優しくて気遣ってくれる。彼女は、コミナ・カッパル。カッパル伯爵家に生まれた、ミリカールアの一人の友人であった人。

 コミナは成績が良く、それでいて親しみやすい。そんな完璧な人だ。ミリカールアは、そんなコミナと自分で考えることの出来ない自分を比べ、落ち込み、そのせいでコミナを無視してしまったことだってある。


(あ………ごめんなさい。ごめっ)


 それはループ前の出来事であって、謝るべき相手は今のコミナではなく前のコミナだけれど、ミリカールアはその罪悪感に蝕まれその場から動けなくなってしまった。足が何かに繋がれたかのように。そして、いつの間にかカリンとコミナの会話に耳を傾けていた。


「——それで、縁が薄黄色の上品なお皿が欲しいの」

「そうですか………では、上品と言いますと、模様はついていますでしょうか」

「あ………そうね。じゃあ、白薔薇が良いかもしれないわ」

「分かりました。ご注文、承りました」

「ありがとう。お願いね」


 浅く呼吸をしミリカールアはコミナに、振り返らないで、と届くはずもないのに心の中で願い続ける。だが、カリンに注文を言い終えれば、彼女は後ろを向き店を出ようとして………視線が合った。


「あら?」

「———っ」


 何故、自分がこんなに彼女を恐れているのか分からない。けれど、自分が勝手に嫉妬していることだけはループ前から分かっている。

 ミリカールアよりも授業の理解が早く、それでいて正確に答えられる。

 なのに、ミリカールアは悪役令嬢と罵れられ、教師に気付かれない程度に令息には砂を足で掛けられたりした。ちゃんとした悪意を持って、お前なんか嫌いだと言うように。


(でもなんで。なんで、コミナ様は令息に色々と言ってるのに人気なのって)


 そう、単なる嫉妬。

 良い子ぶっても、どうしてか本性は隠し切れない。

 やり直し前は本当に辛くて、恋も進展しなくて、悪意を持たれた。

 何か、自分はしてしまったのか。そう問い掛けても、とある一人の令息は「そういうところだよ……!」そう言って、これ以上何も言うことはないと言うように立ち去ってしまった。


(よくある嫉妬、悪意。………だけどそれが、何よりも辛い)


 己がどう立ち回っても、人間関係や自分が見直されることは絶対になかった。授業中、川で溺れそうになっていたアルジュを救った時も、アルジュは何も覚えていなかったし、皆に見直されることも悪役令嬢と言ったことを謝ってくれたこともなかった。


(あぁもう、いけない。今は、今)


 婚約破棄され断罪された翌日は毒を飲んで死んだ。そのミリカールアが死んだ世界線では、あの後どんなことが起こり、皆はどんな反応を示していたのだろう。

 嘲笑われることなんて、容易く想像出来た。


「ねぇ、貴女も御令嬢なの? お名前は?」

「ミリカールア・キャル・カシラートでございます」


 伯爵令嬢と分かっていても、生きる価値は相手の方が上。身分は大切だ。だが、それは身を守るための一部に過ぎない。

 でも、身分があるからって上手く立ち回れる訳ではない。

 それが分かっているから、ミリカールアは丁寧に自己紹介をした。自分は公爵令嬢で相手は伯爵令嬢と二個下だが、理解も早く好かれている彼女の方が生きる価値は上だ。


「御丁寧な挨拶、ありがとうございます。カシラート公爵家の御令嬢でございましたか。失礼を。わたくしは、コミナ・カッパル。どうぞ、コミナとお呼びください」

「はい、コミナ()


 きっと、彼女が言っていたのは様付けではなくただ名前で呼んで欲しいということだったのだろう。だが、その意図が分かっていてもミリカールアは様付けをした。出来るだけ、彼女とは距離を取りたかったから。


「では、早速………」

「……はい」

「意見を聞きたいので、是非とも我が家へ来てくださいまし」

「………ええ。分かりました」


 ミリカールアはコミナより身分が上のため断ることも出来るが、ループ前の罪悪感で誘いを断る訳にはいかなかった。

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