46話 結末
レイとナハトの戦いが、決着の時を迎える
ナハト【命操】「リブ・ロール・ディーネン」
ナハトは周囲の生物を操作し、レイを攻撃する
木の幹を槍に、微生物を怪物に
変異した命がレイに襲いかかる
レイ【重力】「ヴィゴーレ・グラシオン」
レイは重力を操り、自在に宙を舞う
その動きに翻弄され、ナハトの魔法は全て空を切る
レイ【氷】「アクア・グラース」
宙に浮いたまま、更に魔法を発動させる
レイの周囲に氷の槍が出現する
その数は数百…いや、数千はあるだろう
そのあまりの量に、地面に巨大な影ができる
レイ【加速】「ヴィゴーレ・ロイニング」
加えて、レイは氷の槍を加速させた
夥しい数の氷の槍が、高速でナハトに接近する
氷が地面に着弾する度に、土埃が上がる
そうして視界は、どんどん塞がれていくのだった
レイ「…」
土埃が晴れていく
目の前には、無数の穴が空いた地面が広がっている
もちろんナハトも例外ではなく、身体に多くの空洞ができていた
だがやはり、ナハトはその傷も簡単に治してしまう
しかし、
レイ「もう魔力が限界でしょう?」
ナハト「…」
ファーストシンボルの魔法使いレーヴェン
第三の目を宿すレイ
2人との戦闘により、ナハトの魔力は限界に近づいていた
ナハト「限界…確かにそうだね」
「でもそれは、君も同じようなものだろ?」
レイ「…っ!」
レイは吐血した
それだけではない、目、鼻、耳
あらゆる穴から出血している
服の隙間からも血が滴っている、身体にも傷があるのだろう
第三の目の力により、レイは膨大な魔力を使うことができる
しかし、一度に使える魔力量は変化していない
許容量以上の魔力に、身体が追い付いていなかった
ナハト「無理をしない方がいい、身体がもたないよ」
レイ「この程度…」
【命】「リブ」
レイは命の魔法で身体の傷を治していく
ナハト「君がどれだけ血の滲むような努力をしようと、誰も悲しまない世界など実現できない」
「分かっているだろう?」
レイ「……」
ナハト「そもそも君は誰を救おうとしている」
「人間?、魔法使い?、それとも、」
「全ての命とでも言うつもりかい?」
レイ「…人間と魔法使い、両方です」
ナハト「ならば、他の命は犠牲にするのか?」
レイ「はい…犠牲にします」
「だからその罪は、俺1人で背負います」
ナハト「…なに?」
レイ「人間と魔法使いが幸せになるために、必要な犠牲」
「それによって生まれる悲しみや憎しみは、俺が全て背負います」
ナハト「どうやって?」
レイ「犠牲になった命を、全て忘れない」
「自分の幸せを絶対に求めない」
「俺は、苦しみながら生きていきます」
ナハト「……」
ナハトは歯軋りし、怒りを露にした
ナハト「そんな自己満足がなんになる!」
「言ったはずだ!」
「奪われた命には、理由など関係ない!」
「全て理不尽な死だ!」
「そんなことに時間を費やすくらいなら、己の幸せを求めた方が遥かにましだ!」
「この世界を受け入れて生きるべきだ!」
「そうだろう?!」
「君は今の世界でも、幸せになれる存在のはずだ!」
「何故自ら不幸になろうとする?!」
レイ「…」
「…償いたいんです」
ナハト「…償いたい?」
レイ「はい…」
「俺は今まで、この世界が好きでした」
「この世界がずっと続けばいい、そう思って生きてきました」
「だから気づけなかった……いや、本当は気づいていたんです」
「なのに、見ないふりをした」
「この世界の理不尽に」
「よく考えれば、可笑しいことですよね?」
「他者の不幸を見て愉悦を感じる」
「毎日命が奪われているのに、全く見向きもしない」
「そんな奴が満足する世界が、良い物の筈がないのに」
「だから思ったんです」
「俺がどうでもいい、仕方無い、そうやって切り捨てた物こそが、本当は必要なんじゃないかって」
「俺はやらなきゃいけないんです」
「今さら遅いかもしれない」
「あなたの言う通り、ただの自己満足かもしれない」
「それでもせめて、力が及ぶ限り、俺は他者の為に生きなくちゃいけない」
「そうでもしないと…俺は…」
「自分で自分を許せません」
ナハト「償い…か」
「改めて言おう、その生き方は苦しいぞ」
レイ「はい」
「今まで切り捨てた命、これから切り捨てる命」
「その全ての苦しみは、俺が背負います」
レイが両腕を天に掲げる
するとレイの頭上に、巨大な火球が現れた
それは通常の炎と違い、白く輝いていた
ナハト(まさか…己の幸せを捨ててまで、他者の為に生きる道を選ぶなんて)
(そんな者が現れるとは…思いもよらなかったな)
(もしかしたら私にも…その生き方ができたんだろうか)
「いや、無理だな」
そう言いながら、口角を上げた
ナハト「私は彼ほど強くない」
彼は呟くように、声をもらした
レイ【不滅の炎】「フレイム・サーナトス」
レイの放った魔法が、ナハトに向かっていく
それをナハトは、
避けようとはしなかった
ナハトは火球の爆発と閃光に、飲み込まれていった




