45話 生き方
ナハト「君の幸せとは何だい?」
レイ「俺の、幸せ…」
「俺は…ただ、誰も悲しまない世界が欲しくて…」
ナハト「本当に?」
レイ「……」
ナハト「それが君の、本当に望んでいる事かい?」
レイ「……」
ナハト「悪だと教育された感情と向き合うのは、苦しいことだろう」
「だが、よく考えてみてくれ」
「君は本当に、そんな世界を欲しているか?」
レイ「俺は…」
この時レイの脳裏には、何気ない日常が映し出されていた
新聞には毎日、誰かの不幸が載っている
だがそれを、本気で悲しんだ事が無いこと
道端に、居場所を失ったものが横たわっている
その現実を、見て見ぬふりをしたこと
心が傷付き、人目を憚らず泣いているものがいる
そんな者に、嘲笑の目を向けたこと
自分を傷付けてきたもの
彼らの不幸を、心の底から願ったこと
他人の不幸を見たとき
自分はあんな風にならなくて良かったと、安心感を覚えたこと
レイ「あぁ、そうだ」
「俺は、誰も悲しまない世界なんて望んではいない」
「俺は、自分とその周りが幸せならそれでいい」
「それ意外は、どうでもいいんだ」
レイは自覚した、己の欲求を
そしてこれまで、無意識にその欲求に従い生きてきた事を
レイの言葉を聞き、ナハトは笑顔を浮かべる
レイ「でも…」
ナハト「?」
レイ「俺にはどうしても…そんな世界が正しいとは思えない」
ナハト「!」
レイが突然、息を吐いた
それは溜め息とも呼べない、小さなものだった
レイ「ありがとうございます、ナハトさん」
「おかげで、自分の事が良く分かりました」
「俺は、幸せになってはいけないんです」
「幸せになったら俺は、その世界に満足してしまう」
「たとえそれが、どれだけ間違っていたとしても」
「だから、決めました」
「たとえ、自分が幸せになれなくても」
レイ「俺は、俺の正しさの為に生きる」
ナハト「……」
「そんな言葉遊びに意味は無い」
「他者に押し付けるものが、幸せから正しさに変わっただけだ」
「君は結局、私と同じ道を選んでいる」
レイ「過程は同じでも、結果は違います」
ナハト「…君の言う正しさとは何だ?」
レイ「誰も悲しまない世界です」
ナハト「…」
レイ「あなたは幸せを押し付けて、命を奪う」
「俺は正しさを押し付けて、悲しみを奪う」
「あなたとは違います」
ナハト「なら、私の悲しみも消してくれるのか?」
レイ「勿論、何とか解決法方を模索しましょう」
「人間と共存できないなら、しなくてもいい様にするんです」
「新しい、あなた専用の島を創るのはどうですか?」
「そこなら人間と共存せずとも生きていけます」
「それが嫌なら、いっそ別の惑星を目指すか…」
ナハト「……本気なのか?」
レイ「はい、本気です」
ナハト「正しさの為に、己の幸せを捨てるのか?」
レイ「はい」
ナハト「その生き方は、苦しいぞ」
レイ「覚悟の上です」
ナハト「そうか…」
「悪いけど、君の提案に乗ることは出来ない」
レイ「…何故ですか?」
ナハト「私は自分の力で、夢を手に入れたい」
「誰かから与えられた物では駄目なんだ」
「それでは、私は幸せになれない」
レイ「どうしても、止まることは出来ませんか?」
ナハト「あぁ」
レイ「…なら、」
レイ「戦うしかない」
ナハト「そうだな」




