44話 幸せのため
シャルム帝国、主人公達が住む国
ゲーグナ、ナハト達がいる国
第三の眼の力
・使える魔法の制限が無くなる
・無限に近い魔力量を得られる
・先人の知識を知ることが出来る
レイはゲーグナの地下洞窟で、魔力蓄積装置に魔力を流し込んでいる
同時に、第三の眼で過去の魔法使いの記憶を探り、ナハトに対抗するための魔法を探していた
しかし、レイの脳裏には"なにか"との会話が頭から離れないでいた
魔法使いには、魔力を消費したい本能がある
それゆえ、魔法に強く興味を引かれる
レイ自身も例外ではなく、魔法に強く惹かれていた
確かに、現実としてシャルムの魔法使いの殆どが、魔法軍か魔戦士として働いてる
どちらも魔法を主に使い、働く事が許されている場所である
その事実を思い出し、レイは"なにか"との会話内容に現実味を感じていた
その時
レイ「!」
ファイン「!」
2人は巨体な魔力がぶつかり合うのを感じる
この場にいるのは、レイとファインの2人だけである
レイ(ナハトと誰かが戦っている…)
(動くなら、今しかないな)
レイ【雷】「トール」
レイは高速で移動し、ファインの口元を掴む
ファイン「うぐっ!」
レイ「ごめん」
レイ【命】「リブ」
レイは命の魔法を使い、ファインを眠らせた
ファインは力が抜けたように、地面に倒れ混む
レイはファインを支え、そっと地面に寝かせた
仰向けに横たわるファインの額に、レイは触れる
そして命の魔法を使い、ファインの記憶を覗き見た
レイ「ファイン…、また後で」
そう言うと、レイはその場を後にした
ゲーグナのとある地下施設
ブラッド「チッ」
「マーキングが破壊されたか」
ブラッドは、シャルムにケルベロスを転送していた魔法使いである
しかし、シャルムにあった転送ゲートを開くためのマーカーが壊されたため、今は何もできずにいた
ブラッド(まぁいい、直にナハト様がまたマーカーを設置して下さるだろう)
(私はそれを待てばいい)
ブラッドは気づいていなかった、自分に忍び寄る影があることを、
レイ【命】「リブ」
ブラッド「なっ!…」
レイは、ファインの記憶を命の魔法で読み取り、この場所を知った
ブラッドは背後から近づくレイに気付かず、呆気なく眠らされた
そしてレイは、ブラッドの記憶を命の魔法で探る
レイ(見つけた、これでやっと…)
だがここで、ナハトとレーヴェンの戦いが決着してしまう
レイ(……先にナハトを止めるしかない)
ナハトは、最大の障害と考えていたファーストシンボルを打ち倒し、次の工程に意識を向けていた
ナハト(後はレイが魔力を溜めきるのを待つだけ)
(ようやく最後が見えてきたな)
ナハト「ここまで長かったなぁ」
ナハトは物思いにふけっている
そこへ、
ナハト「?!」
バーン!
巨大な炎の塊がナハト目掛けて急接近してくる
ナハトは何とか直撃を回避するも、目の前の地面に着弾した炎の熱と衝撃波をもろに受けた
だがそのダメージも、ナハトは命の魔法で容易く回復する
レイ【遮断空間】「エスパース・ブローク」
レイとナハトの周囲に、巨大な立方体の壁が形成される
と同時に、ナハトが自身を完全に回復し終える
ナハト「いいのかい?、ユウが死んでも」
「私はここからでも殺せるよ?」
レイ「そうさせない為の壁だ」
レイは自身が発生させた壁を指差す
ナハト「…確かに、私の命令が阻まれている」
「さすが、本物の第三の眼」
レイ「俺はもう何も気にせずにあなたと戦える」
「あなたに勝ち目はない、降伏してください」
ナハト「私がユウに施したのが魔法だけだと思うかい?」
レイ「なに?」
ナハト「彼女には毒を飲んでもらった」
レイ「?!」
ナハト「私が作った特別な毒だ」
「解毒剤の作り方を知っているのは、世界で私だけ」
レイ「…そんなもの、命の魔法でどうにでもなる」
ナハト「初見であの毒を解析し、解毒剤まで作るのは私でも不可能だ」
「100年以上命の魔法を磨いてきた、私でもね」
レイ「…俺には1500年分の魔法の知識がある」
ナハト「君は過去の魔法使いの記憶から魔法の知識を得て、それをそのまま使っている」
「言わば、答えを見ながら問題を解いているようなもの」
「未知の物への対処は、たかが知れている」
レイ「……なら、あなたの記憶を見させてもらう」
ナハト「そうなる前に記憶を消す」
レイ「……」
ナハト「もう分かっただろう?」
「もし彼女を救いたいなら、私を殺す他ない」
「私が消せるのは、あくまで脳にある記憶だ」
「魔力に染み込んだ記憶や感情は消せない」
「私が死んだ後、奴が回収した私の魔力から記憶を見るしかない」
レイ「どうして…そこまでするんですか?」
「そんなに人間が気に食わないですか?」
ナハト「あぁ、勿論」
レイ「…なぜ?」
ナハト「人間は我々より劣っている」
「にも関わらず、この世界を支配している」
「私はそれが我慢ならない」
「より優れた存在が、世界を統べるべきだ」
レイ「人間と魔法使いの間に、優劣なんて存在しない」
ナハト「いいや、存在する」
「魔法の有無、これはれっきとした私達と人間との差だ」
「人間に出来ることは、魔法使いにも出来る」
「魔法使いに出来ることは、人間にも出来る」
「だか魔法はそうはいかない」
「この先人間がどんな進化を遂げようと、魔法を使うことは不可能だ」
「これを優劣と言わず何と言うんだい?」
レイ「それを言うなら、人間は皆自分の意思で生きている」
「でも魔法使いは違うだろ?」
ナハト「…」
レイ「魔法使いは、本能に支配されてる」
「魔力を消費したい本能に...」
「知ってましたか?」
「俺達魔法使いは、魔力を消費したい本能を持ってる」
「その為の手段として、魔法に強く興味を引かれる」
「しかもこれは…生まれつき持ってた訳じゃない」
「宇宙から来た訳の分からない奴が、俺達の先祖に植え付けた物だ」
「魔法使いはそんなものに支配されて生きている」
「これのどこが優れた存在なんですか?!」
ナハト「その話は勿論知っているよ」
「でもそれは、人間だって似たようなものだろう?」
レイ「…はい?」
ナハト「人間はそれぞれ、独自の思考や価値観を持っている様にみえる」
「だがそれは間違いだ」
「人間は…いや、人間だけではない」
「この世界の命あるものは全て、己の幸せを求めて生きている」
「人間はその手段が多岐に渡っているから、意志があるように見えるだけだ」
レイ「…」
ナハト「確かに魔法使いは、本能によって魔法を求めているのかもしれない」
「だが皆それぞれ、好きな魔法、得意な魔法」
「それを使って何をしたいか等には、多くの差異がある」
「これは人間の生き方と、そんなに違うものかい?」
「君の主張では、魔法使いが人間より優れているという考えを否定するのは難しいように思えるが」
「どうだい?」
レイ「……」
レイはそれに何も言い返すことが出来なかった
ナハト「私も1つ、聞きたい事がある」
「どうしてそこまで人間を守りたいんだい?」
レイ「…人を殺す事が、許されていい訳が無い」
ナハト「どうして?」
レイ「は?どうして?そんなの……」
「…命を理不尽に奪ってはいけないからだ」
ナハト「そうか」
「なら、他の生き物は?」
レイ「え?」
ナハト「君が食べてきた動物や植物達、それだけじゃない」
「ただ外を歩くだけでも小さな命を奪っているだろう」
「それは許されるのかい?」
レイ「それは……生きる上で仕方の無いことで…」
ナハト「関係ない」
レイ「!」
ナハト「命を奪われたものにとっては、君達の事情など関係ない」
「彼らにとっては全て、理不尽な死だ」
「君はこれをどう考える?」
「多くの命を奪ってきた君に、私のする事を否定する権利があるのか?」
「それとも、人の命は特別で他の命とは区別するべきだと言うかい?」
「それならそれでいい」
「命に優劣を認めるなら、それこそ私を否定できなくなる」
レイ「…………」
ナハト「…………」
レイ「他の生き物は……何か思っている事があるんでしょうか?」
ナハト「…」
レイ「俺達は…恨まれてますか?、憎まれてますか?」
ナハト「いいや、安心していい」
「彼らはそんな事、微塵も感じてはいない」
「私は昔、命の魔法で彼らの思考や感情を読み取った」
「私達は憎まれても、恨まれてもいないよ」
レイ「……」
ナハト「ただ、恐怖していた」
レイ「!」
ナハト「身の危険を感じ、恐怖し、その場から逃げようとしていた」
「最後の最後まで、生きようと踠いていた」
「いいかい?、私達は生きようとする者から命を奪い、生きているんだ」
レイ「なら…どうすればいいって言うんですか…」
「何もせず、ただ俺達は死んだ方がいいって事ですか?」
ナハト「それは違う」
「私が言いたいのは、この世界に絶対的な善悪は存在しないって事だよ」
「命を奪う事は、時として悪では無い」
「命を救う事は、必ずしも善では無い」
「どれだけ法律や道徳で縛ろうと、私達は最終的に自らの欲求を優先してしまう」
「だが、それでいいんだ」
「命なんて所詮は、理性の下で生きていける程、高尚な物では無いんだから」
「私は私の幸せのために、魔法使いだけの世界を創る」
「君の幸せとは何だい?」




