35話 始動
シャルム帝国・・・主人公達が住む国
ゲーグナ・・・ナハト達が住む国
レイ達が誘拐された翌日
シャルム国内で厳戒態勢の下、捜査、探索が行われている
同時にゲーグナへ向けて船を出し、連絡を取ろうとしていた
ある病室
アベル(ユウ…レイ…ファイン…)
アベルは病院のベットで3人を心配していた
オルシュ「アベル!」
勢いよくドアが開かれる
アベル「っ!」
「父さんか、ビックリした」
オルシュ「大丈夫か?、怪我は?」
アベル「問題ない、大丈夫だ」
「俺はな…」
オルシュ「そうか」
「……」
「大丈夫だ、魔法軍が皆を探している」
「必ず無事に連れ戻す、信じて待っていればいい」
アベル「あぁ…頼むな」
その後、オルシュは仕事のため病室を後にする
そんな時だった
何かが突如地面から姿を現し、空に向かい伸びていく
それは、とてつもない速さで成長していく
ある場所では家を壊しながら、ある場所では人を巻き込みながら
それは瞬く間に、大木の姿となった
そんな光景が、国のあちこちで起こる
魔法軍の軍人「なんだこれ…」
木の周囲にいた軍人達が、余りの大きさに目を奪われている
アベル「なんだ…あれ…」
アベルも病室から巨大な木を見つけ、困惑している
アベル「あの木…魔力を纏ってる」
ナハト「準備完了だ」
「ブラッド、転送魔法を」
ブラッド「はい」
【転送】「エスパース・ヴェーゲン」
巨大な木の周囲に、転送ゲートが開く
その中からは
体長10m程、四足歩行で、狼のような頭が3つある
さながらケルベロスのような化物が出現した
それも、1体や2体ではない
ケルベロスは周りを見渡している
「でかい…」
「なんだ…」
「全員!、警戒態勢をとれ!」
魔法軍の軍人達の、声が響く
騒ぎを聞き、人間達も外に出てくる
すると、ケルベロス達は近くの魔法軍に見向きもせず、人間達に襲いかかっていく
魔法軍の軍人「?!」
一番近くにいた自分達が狙われない事に、彼らは驚いていた
その時、
ナハト「シャルムに住む魔法使いの皆さん、初めまして」
ナハトの声が、国中に響く
アベル「!」
(なんだこの声……何処から…)
アベルは声のする方を見る、
そこには、鳥がいた
どうやら、そこから声が聞こえるようだ
ナハト「私の名は、ナハト・シュレッケン」
魔法軍の軍人「!」
「ナハト事件を起こした魔法原理主義勢力のリーダーと…同じ名前…」
「そんな…まさか…」
ナハト「現在、シャルムに怪物を放ち、人間達を蹂躙させているのは、私です」
「ですが、安心してください」
「私の標的はあくまで人間であり、あなた方魔法使いではありません」
「魔法使いだけの世界を創る」
「私は今、その為に行動を起こしています」
「魔法使いの皆様は、どうかご静観願います」
ケルベロスが、人間達を次々と殺していく
魔法軍の軍人「黙って見てられるわけないだろ!」
【炎】「フレイム!」
魔法軍の軍人「その通りだ!」
【雷】「トール!」
魔法軍はナハトの言葉に構わず、ケルベロスに攻撃を仕掛ける
だが、
「嘘だろ…」
「効いてない…」
軍人達の魔法では、掠り傷すら与えられなかった
ケルベロスが、自分を攻撃した軍人達を睨む
そして、飛び掛かる
軍人「!」
反対に、
ケルベロスの攻撃は、いとも容易く軍人に致命傷を与えた
ナハト「私が送った刺客達は、魔法使いを攻撃しないよう、しつけてあります」
「だがそれは、あくまで皆さんが彼らの邪魔をしないことが条件です」
「彼らを妨害するなら、それ相応の仕返しが返ってきます」
「お気をつけて」
軍人達は、それでも勇敢にケルベロスに挑む
が、返り討ちにあっていく
勇気のある者から死んでいく、そんな状況
「キャーー!!」
「早く逃げろーー!」
「どけ!」
「ママーー!」
その間に、人間達の悲鳴が広がっていく
ナハト「今行われている出来事に、心を痛めている者もいるでしょう」
「ですが、その必要はありません」
「魔法使いはこれまで長い間、人間達に痛め付けられてきました」
「これは、それに対する正当な報復なのです」
「我々は、幾度となく歩みよった」
「共に生きようと、共に歩もうと」
「それを無下にしてきたのは人間達だ」
「魔法使い達には、何の罪もない」
「私が、これまでの不当な歴史に終止符を打ち、新たな時代を創る」
「皆様は、それの目撃者であれば良い」
軍人「おい!、突っ立ってないで助けに行くぞ!」
軍人「………行きません」
軍人「最低5人だ!、5人一組で対処しろ!」
軍人「……」
軍人「どうしたんだ!?」
軍人「…出来ません」
少しずつ、軍人達から戦意が削がれていく
ケルベロスが人々を殺そうとする
が、そこへ
アベル【霧】「アクア・ルフト」
霧で、ケルベロスの視界を遮る
【氷】「アクア・グラース」
そして、ケルベロスの脚を凍らせ、機動力を奪う
そこへアベルが駆け付ける
「今の内に!、速く!」
アベルは人々に向かって叫ぶ
人々は、アベルのおかげで難を逃れることが出来た
だが、アベルはケルベロスと1対1になる
アベル「!」
【水】「アクア!」
アベルは、水の壁を自身の前に展開する
その直後、
アベルに向かって、莫大な量の炎が迫ってくる
アベルは、それを何とか水の壁でいなす
アベル「くそっ…熱い」
だがいなしきれず、アベルは負傷する
アベル「こいつ…炎が吐けるのか…」
アベルは汗をかき、肩で息をしながらケルベロスを睨む
ケルベロスは、歯軋りしながらアベルを睨む
アベル「!」
ケルベロスが、アベルに飛び掛かる
その時、
ローゼ「アベル!」
ローゼが駆け付ける
【空間】「エスパース」
ローゼはそう唱える
すると、ケルベロスは無数の槍のような物で全身を貫かれた
空間魔法は、結界術の様な使い方が出来る
壁を創り相手を閉じ込めたり、攻撃を防いだり
その上に乗り、空中を移動したり
今ローゼは、空間を槍上に変化させ、貫いた
ケルベロスは断末魔の様な雄叫びを上げ、絶命した
アベル「ありがとうごさいます、先生」
ローゼ「…礼などいらない」
「それよりアベル、お前も早く避難しなさい」
アベル「…今は緊急事態です」
「動ける者は動くべきです」
ローゼ「…今のお前は動ける者じゃないだろう」
「火傷に加えて……腕もまだ完治していない」
アベル「…」
アベルは魔法戦で片腕を失っている
それに加え、先程負った火傷
アベル自身も、自分の状況は理解していた
アベル「それでも…俺は戦います」
「命を賭けてでも」
ローゼ「駄目だ」
ローゼはアベルに近づき、目線を合わせる
「お前が今、命を賭ける必要はない」
「ただ、生き残ってくれればいい」
アベル「それだけじゃ、何の意味も無い」
ローゼ「いいや、意味はある」
「お前の様な若者が生きていてくれるから、」
「私達大人は、命を賭けられる」
アベル「!」
ローゼ「ここは、私達に任せてほしい」
「いいか?」
アベル「…」
「はい」
アベルは、避難することを選ぶ
アベル「避難はこっちです!」
「俺に付いてきて!」
アベルはその場を離れていく
ローゼが敵の処理に再度向かおうとした時、
レーヴェン「ローゼ」
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シャルム南部都市、インデリア
ここにも大木が現れ、ゲートが開く
レーヴェン【力】「ヴィゴーレ」
レーヴェンは、ケルベロス達を一掃する
ファーストシンボルの魔法使い、レーヴェン・ファイル
レーヴェン(元を断つ)
レーヴェンはゲートの先に敵がいると考え、飛び込もうとする
レーヴェン「!」
しかし、ゲートは閉じられてしまう
レーヴェンは仕方無く、大木を破壊する
レーヴェン(おそらくこの木はマーキング、だが元を断たねば次があるかもしれない)
レーヴェン「南部都市インデリア、攻撃を受けている」
レーヴェンは、通信用転送ゲートで現状を報告する
ナハト「シャルムに住む魔法使いの皆さん、初めまして」
ここで、ナハトの演説が始まる
レーヴェンは鳥から声が発せられているのに気付き、それを操っている者の魔力を探す
ナハトの演説が終わる頃、
レーヴェン「そこか」
レーヴェンは、ナハトの位置を捕捉する
レーヴェン「ローゼ」
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通信用転送ゲートから、レーヴェンの声がする
ローゼ「なんだ?、レーヴェン」
レーヴェン「ナハト・シュレッケンの居場所が分かった」
ローゼ「!」
レーヴェン「奴はゲーグナにいる」
ローゼ「やはりか…」
レーヴェン「私が奴を制圧する」
「こちらは任せるぞ」
ローゼ「あぁ、任せろ」
「幸運を祈る」
総督「ローゼ」
レーヴェンとの通信が終わると、次に魔法軍のトップからも連絡が来る
総督「私の声を、国中に届けてほしい」
「出来るか?」
ローゼ「勿論です」
ローゼは通信用転送ゲートを応用し、広範囲に声を届けることを可能にする
総督「魔法軍の諸君」
総督の声が、国中の魔法軍の耳に届く
「現在シャルムは、ナハトを名乗るものから攻撃を受けている」
「既に、国中で多くの死傷者が出ている」
「人間、魔法使い、双方にだ」
「だが、奴が話した通り、戦うことを止めた魔法使い達は無事だ」
「人々を見殺しにすれば、私達は明日を迎えることが出来るだろう」
「だが、そんな世界に未来はあるのか?」
「その世界はまさに、人間達が我々に抱く恐怖や不信感の証明ではないのか?」
「私達は所詮、自分とは違う者を排除し殺す獣であると」
「私はそんなものに成り果てるつもりはない」
「命を賭けてでも、魔法使いとしての道を選ぶ」
「そして願わくば、人間達と手をとり合い、生きていきたい」
「その為に、皆の力を貸してくれ」
「頼む」
魔法軍の軍人達「…魔法使いとしての道…か」
「そうだよな…見殺しなんて…」
1人の魔法使いが、再度歩み始める
「おい!、何処に!」
「決まってるだろ、助けにいく」
「…怖くないのか?」
「怖いさ…でも、」
「軍人として、魔法使いとして、人として、正しくありたい」
そう言い、彼はもう一度立ち向かう
その姿を目の当たりにし、1人、また1人と戦いに加わっていくのだった
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シャルム東部都市、ノリッジ
「迂闊に近寄るな!」
「常に周囲をかこめ!、1人に的を絞らせるな!」
魔法軍の軍人達は再度奮起し、ケルベロスに立ち向かう
だが、
ケルベロスも簡単には倒れない
10人がかりで、要約均衡が保たれている
そこへ、
フルギア【風】「ストーム」
空気を圧縮し、弾丸のように発射する
それは、ケルベロスを一撃で仕留めた
フルギア(さっさと終わらせて、早く研究の続きがしたいな)
サードシンボルの魔法使い フルギア・スマインニヒト
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シャルム西部都市、バース
セイ【水】「アクア」
巨大な水の槍を創ると、それをケルベロスに突き立てる
それはケルベロスの強靭な肉体を、容易く貫通した
セイ「所詮は獣だな」
サードシンボル、セイ・アシン
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シャルム中央都市、チェスター
ゲンゼブ【再生】「リプロレーション」
ケルベロスの動きが停止する
その間に、彼はゆっくりと首を切り落としていく
ゲンゼブ「こんなものか、もう少し強いと期待したんじゃがのぉ」
サードシンボル、ヒエン・ゲンゼブ
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シャルム北部都市、ミンガム
マグノーリエ【質量付与】「マイス・グランデ」
彼女は、ケルベロスに拳での一撃をいれる
見た目は普通の打撃である、だがケルベロスの頭は潰れ行動不能になった
マグノーリエ「適度な運動は、美しさに不可欠ですわ」
サードシンボル、マグノーリエ・ラヴェンデル
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シャルム首都、ロンドニア
ディアス【影】「イスキオル」
影を実体化させ、ケルベロス達を串刺しにしていった
ディアス(このパン、旨いな)
彼は片手にパンを持ちながら、片手間に敵を蹂躙していた
セカンドシンボルの魔法使い、ディアス・メーリエ




