21話 魔法戦④ 決着
更新が遅くなってしまい申し訳ありません
レイ、ユウ、共に魔力を溜めている
ユウ(全力の魔法のぶつかり合いだと、私はレイ君に勝てない)
(だから、レイ君の魔力が溜まる前に撃つ)
ユウ(この一撃に全てを込める)
ユウ【暴風】「ストーム・ミストラル!」
竜巻のように激しく螺旋状に回転する巨大な空気の塊が、レイに向け放たれる
レイ(やるしかない!)
【煉獄】「フレイム・インフェルノ!」
レイの目の前に、巨大な鳥の形をした炎が現れる
レイ「いけ!」
炎の鳥はユウの魔法に向かい直進する
その最中、炎の鳥の尾が爆発しその速度をあげる
魔法がぶつかり合う
膨大な熱気と衝撃波を発生させながら2つは鍔迫りあう
魔法の威力は魔力の消費量にある程度比例する
今回の魔法のぶつかり合い、ユウの消費魔力はレイよりも多い
故に本来ならこの勝負はユウの勝利である
だがレイは【炎】と【爆炎】の魔法を組み合わせることでその差を埋めていた
ユウ「っ!」
(私の魔法の方が強いはずなのに!)
2つの魔法は一進一退の攻防をみせる
ユウ「絶対!、負けない!」
-------------------------
今から8年前
小等教育学校 入学の日
15歳までの学校は人間と魔法使いが一緒に通うことになる
ユウ「おはよう、アベル君」
アベル「おはよう」
「どうした、昨日はあんなにはしゃいでたのに」
ユウ「色々考えちゃって…」
「友達できるかなとか」
アベル「そうだな、それは俺も不安だ」
「でも考えすぎても仕方ない」
「どうせ考えるなら楽しいことを考えたほうがいい」
ユウ「うん、そうだね」
「よし、がんばるぞー!」
学校に到着すると入学式やクラス分けが行われる
2人は違うクラスに振り分けられた
ユウの教室
担任「では、自己紹介をお願い」
ユウ「はい!、私の名前はユウ・ホルテンズです!」
「よろしくお願いします!」
担任「はい、ありがとう」
「ユウちゃんは魔法使いです」
「だけどみんな、仲良くしてあげて」
ユウは自分の席に戻り隣の子に話しかける
ユウ「これからよろしくね!笑」
クラスメイト「う、うん、よろしく」
魔法使いには、普通の人間からの差別が存在する
魔法使いへの人権が保証されたのは約200年前
だが、いまだに人間と魔法使いの溝は埋まりきってはいない
学校からの帰り道
ユウ「やっぱりみんな、あんまりお話してくれなかったな」
「アベル君のクラスはどうだった?」
アベル「こっちも同じようなものだった」
ユウ「そうだよね…」
アベル「いきなり仲良くは難しいさ、俺達は魔法使いだしな」
「あんまり焦らないほうがいいと思うぞ」
ユウ「うん…」
「そうだよね!、これからだよね!」
ユウはそれから積極的にクラスメイトに話しかけた
最初はあまりいい顔をしなかった生徒達だったがユウの明るさと素直さに徐々に仲を深めていった
クラスメイト「ユウちゃん、この問題分かる?」
ユウ「分かるよ!、ここはね・・・」
クラスメイト「なるほど!、ありがとう笑」
ユウ「うん!!、どういたしまして!!」
ユウ「もしよかったら、一緒にご飯食べてもいい?」
クラスメイト「もちろん!、食べよう食べよう笑」
ユウ「ありがとう!!笑」
クラスメイト「ユウちゃんの鞄かわいいね笑」
ユウ「かわいいでしょ!笑、お母さんからのプレゼントなんだ!笑」
アベル「ユウ、最近楽しそうだな」
ユウ「うん!、すっごく楽しい!笑」
「みんなと仲良くなれたから!笑」
「しかも遊ぶ約束もできたんだ!笑」
アベル「そうか笑」
「俺も見習わないとな」
このまま順調に日々を過ごせる
そう思っていた、ある日
ユウ「おはよー!」
クラスメイト「お…おはよう」
ユウ(?)
ユウは歯切れの悪さに少し違和感を持つ
その後も
ユウ「ねぇねぇ!、今の問題ってこういうことかな?」
クラスメイト「…うん」
ユウ「…そうだよね!、ありがとう!笑」
クラスメイトの対応は振り出しに戻ってしまっていた
その日の帰り道
ユウ「なんか今日はあんまり話せなかったな…」
「なんでだろう…」
アベル「…」
「ユウ、今日の新聞は読んでないか?」
ユウ「え?、うん、読んでない」
アベル「そうか…」
「最近この辺りで強盗事件が起きたのは知ってるか?」
ユウ「あぁ、そういえばあったね」
「それがどうかしたの?」
アベル「どうやらその犯人は魔法使いだろうってことらしい」
ユウ「…え?」
アベル「だから魔法使いへの警戒心が高まってるんだろう」
ユウ「そんなの!、私達なんにも関係ないじゃん!」
アベル「みんなからすればあるんだろう」
ユウ「そんな…………」
アベル「………………………」
「犯人が捕まれば収まるかもしれない」
「それまでの辛抱だ」
ユウ「そっか…」
だがそんな希望も虚しく
ユウ「あの…」
クラスメイト「あー、ごめん」
そう言ってユウから離れる
ユウ「ね…ねえ」
クラスメイト「……」
無言で離れる
ユウは段々とクラスで孤立していく
強盗事件の犯人が捕まってもこの状況は終わらなかった
そればかりか、更に状況は悪化していく
クラスメイト「化物だー!、逃げろー!」
クラスメイト「返事しちゃだめだー!、殺されるぞー!」
ユウへの暴言が始まってしまう
そんな日々が続いたある日
ユウ(はぁ...)
ユウはため息をつきながら、学校への道を歩く
アベル「おはよう」
ユウ「…おはよう」
アベル「ユウ、何かあったらまた俺が行く」
「だからその時は言ってくれ」
ユウ(頼りたいな…けど…)
(アベル君も…見せないだけできっと大変だろうな)
(それにこれ以上いじめが酷くなったら…)
ユウ「うん…ありがとう」
ある時
ユウへの暴言を聞いたアベルは、その発言をした生徒と口論になった
その影響でアベルが近くにいる時は暴言などが無くなっていた
だが、アベルがいない時のいじめは、むしろ酷くなっていた
学校に到着しユウが教室に入る
クラスメイト「うわぁ」 「来た」 「目を合わせるな、殺されるぞ」
クラスメイト達の囁くような声がユウの耳に響く
ユウ(きこえないきこえないきこえないきこえない)
ユウは心の中でそう言い聞かせる
放課後、掃除の時間
クラスメイト「ゴミ捨ててきてよ」
ユウ「え?、わ、わかった」
ユウは学校の端にある大きなゴミ箱にゴミを捨てに行く
ユウ(面倒だから押し付けられたのかな…)
ユウは教室に戻る
バシャーン
ユウ(!…………)
ユウは驚き思考が止まる
ユウはバケツから水を全身に浴びた
クラスメイト「帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!」
この行為をしているのはクラスの数人である
だが今のユウには全てが敵に感じた
ユウ(帰ろ)
すぐにこの場を離れようとしたが、自分の鞄を置いていくわけにはいかないと考え自分の席に向かう
ユウ(あれ?、鞄は?)
ユウの席には置いていたはずの鞄が無くなっていた
クラスメイト「早くかえ・・・」
ユウ「どこ!!」
クラスメイト「?!」
ユウ「私の鞄どこ!!」
「どこにやった!!」
その圧に1人がゴミ箱を指さす
ユウは怒気を纏いながらゴミ箱に近づく
そこには、足跡やゴミで汚れた鞄があった
ユウ「………」
ユウは、ただ鞄を見つめる
アベル「どうした!」
ユウの大声に反応しアベルがクラスの様子を見に来る
アベル「なっ!」
アベルの目には全身が濡れ、ゴミ箱を見つめ続けるユウの姿が写る
アベルはゴミ箱から鞄を取り出すとユウの手を引き教室を出ていく
アベルはユウの手を引き自分の家へと向かう
その間ユウの目には光が無く、一言も言葉を発しなかった
アベルは自宅に着くと使用人に事情を話し、すぐにユウをお風呂に案内した
そして、ボロボロになった鞄を使用人に見せる
アベル「これ直せる?」
アベルは汚れ、所々傷のある鞄を見せながら質問する
使用人「汚れを落とすことはできるかと…」
「でもこの傷は…完全に直すのは難しいと思います
アベル「…分かった、できるだけ頑張って直してほしい」
「お母さんにもらった大事な物だって前に言ってたから」
使用人「はい、もちろんです」
ユウ「あのー」
アベル「!」
使用人「!」
ユウ「ごめんなさい、迷惑かけて」
ユウは2人に頭を下げる
アベル「ユウが謝る必要なんてない」
使用人「そうですよ、誰も迷惑などと考えてはいません」
ユウ「でも・・・」
使用人「まぁまぁ、まずは一息つきましょう」
「私はお茶を用意するので、御二人はソファでお待ち下さい」
そう言って使用人は鞄と共に移動する
アベルとユウはソファに腰かける
アベル「怪我とかは…してないか?」
ユウ「うん、大丈夫」
「ごめんね笑、心配かけちゃって笑」
アベル「…謝る必要ないって言っただろ」
ユウ「うん…」
アベル「話にくいならいいんだが、何があったか教えてくれるか?」
ユウ「うーん笑、私にも何がなんだか分かんないんだよね笑」
「ゴミを捨てに行って帰ってきたらいきなり水をかけられて、鞄もあんなことになってて」
アベル「…そうか、そんなことが」
ユウ「ほんと、嫌になっちゃうよ笑」
「そうだ、私の鞄はどうなってる?」
アベル「あぁ、少し汚れてたから今洗濯してる」
ユウ「そっか、ありがとう笑」
「傷とかはついてた?」
アベル「…ほんの少しだけな」
「大丈夫、家の使用人ならすぐに直せる」
ユウ「分かった、じゃあお願いするね笑」
しばらく無言の時間が続く
ユウ「もうそろそろ帰るね」
アベル「もうか?、まだゆっくりしても・・・」
ユウ「家の人が心配しちゃうから」
「それに、やることもあるし」
アベル「やること?」
ユウ「うん、じゃあね」
アベル「あっ!、おい!」
そう言ってユウは走って出ていった
ユウの家
ガチャン
ドアが開く音が響く
使用人「おかえりな・・・え?」
「どうされたんですか?」
使用人は朝と服が変わり荷物を持っていないユウに驚く
ユウ「別にー、色々あって服が汚れたからアベル君に貸してもらったんだ」
使用人「色々っていったい・・・」
明らかにいつもと様子の違うユウに動揺が隠しきれないでいると
ユウ「ちょっと勉強に集中力したいからさ、しばらくそっとしておいてほしい笑」
使用人「は…はい」
ユウは母の部屋に入り本を探している
ユウ(うーーーん、あ、これだ)
ユウは魔法についての本を見つけるとページをめくる
ユウ(絶対に許さない)
アベルの家
鞄を直そうと裁縫をしている使用人にアベルが話しかける
アベル「やっぱり普通の人って、魔法使いのこと嫌いなのか?」
使用人「それは…」
使用人は魔力を持たない普通の人間である
「それに近い考えを持っている人は少なくないとは思います」
アベル「そうか」
「それはなぜなんだ?」
使用人「そうですね…」
「私の個人的な意見にはなってしまいますが、」
アベル「うん」
使用人「魔法に対する認識の違い…ですかね」
アベル「認識の違い?」
使用人「魔法使いにとって魔法はとても身近なものだと思います」
「ですが、普通の人間にとってはとても遠く、得体の知れないものに見えるんです」
「人はよく知らないものを怖がり、遠ざけてしまう生き物です」
「だから、魔法を使う魔法使いのことも怖がって遠ざけてしまう」
アベル「なるほど」
(じゃあ、魔法は怖いものじゃないってどうしたら分かってもらえるんだ)
アベルはそんなことを考える
アベル「使用人さんは魔法が怖い?」
使用人「いいえ、私は怖いとは思っていません」
アベル「どうして?」
使用人「昔、川で溺れているところを魔法使いの人に助けてもらったことがあるんです」
「恐らくは、そのおかげかと」
アベル「なるほど」
アベルはいつも母から言われている言葉を思い出す
母「魔法は人を助けるためにある、傷つけるためじゃない」
アベル(…)
翌日
アベルは1人で学校に向かう
朝
昨日の事があり、念のためユウの家に行くも今日は休むらしい
アベル(ユウ…大丈夫かな)
(帰りも家に行くか)
アベルは授業中、昨日の使用人との会話を思い出していた
アベル(魔法が怖い…か)
そして放課後になる
ユウ(やってやる…)
ユウは学校に来ていた
ユウは学校の門をくぐり、教室に向かう
アベルはゴミを捨てに行っており、ユウが来ているのに気づいていない
ユウは魔法の本を片手に、無言で教室に入る
担任「あれ?ユウちゃん、どうしたの?」
担任がユウに声をかける
だがユウはその声に反応せず本を開く
そして
ユウ【風】「ストーム!」
担任「?!」
クラスメイト「うわっ!」
ドンッ! ガンッ!
アベル「!」
アベルは魔力を感じ、その方へ急いで向かう
(まさか…)
アベルは教室のドアを開ける
アベル「?!」
そこには椅子や机が散乱している教室と、怯えているクラスメイトと担任
そして1人佇むユウの姿があった
アベル「ユウ!」
アベルはクラスメイトとユウの間に入る
ユウ「どいて!」
アベル「どかない」
ユウ「いいから!」
アベル「ユウ」
ユウ「私はやられたぶんを返してるだけ!」
アベル「落ち着いて」
ユウ「私は何も悪くない!」
アベル「そうだな、ユウは悪くない」
ユウ「じゃあ!」
アベル「でも」
「ここで誰かを傷つけるのは、悪いことだ」
ユウ「なら私は…私だけが我慢すればいいの?」
「そんなのおかしいよ!」
アベル「うん、そうだな」
ユウ「なら!」
アベル「でも!」
ユウ「!?」
アベル「ユウが怒るのは当たり前だよ」
「でも、ユウの中には怒り以外の思いもあるはずだ」
ユウ「…」
アベル「お願いだ、今、今だけでいい」
「それを教えてくれないか?」
ユウ「…」
アベル「頼む」
ユウ「悪口を言われて悲しかった…」
アベル「うん」
ユウ「無視されて苦しかった…」
アベル「うん」
ユウ「私…謝るから」
「私が何かしちゃったなら謝るから…」
「だから…これ以上傷つけないで」
ユウは地面に膝をつき、手で顔を覆いながら涙を流す
アベルはユウに近づき背中をさする
アベル「ありがとう、教えてくれて」
そしてアベルはクラスメイトのほうを向く
アベル「みんな、教えてくれ」
「なんであんなことをしたんだ?」
クラスメイトの1人が口を開く
クラスメイト「…そいつが魔法使いだから」
アベル「それだけか?」
クラスメイト「…」
アベル「じゃあ、ユウが何かみんなにした訳じゃないんだな」
クラスメイト「…」
ユウ「そうか…、じゃあなんで、魔法使いだから虐めるんだ?」
クラスメイト「…」
アベル「…」
「みんなは、魔法使いの事をどう思ってる」
クラスメイト「怖い」「気持ち悪い」「変」
数人が声を発する
アベル「なんでそう思うんだ?」
先程声を発したクラスメイト達が答える
クラスメイト「魔法が使えるから」
アベル「そうか…」
「でもなんで、魔法が使えるからってその感情になる?」
クラスメイト「人から火とか水とか出てくるの、気持ち悪いだろ」
「新聞とかに、毎日魔法使いがおこした事件とかが書いてある、だから怖い」
アベル「俺は、トマトが嫌いなんだよ」
クラスメイト「?」
アベル「だからさ、トマトが好きな人のことが理解できない」
「正直、気持ち悪いなと思う」
クラスメイト「…」
アベル「みんなにもそういうものがあると思う」
「でもそれだけで虐めたりしないだろ?」
「魔法も、それと同じだって考えてくれないか?」
クラスメイト「…」
アベル「新聞には確かに、魔法使いが起こした事件が書いてある」
「でもそれは、人間も同じだろ?」
クラスメイト「…」
アベル「人間だってたくさん事件を起こしてる」
「だからって自分とか、親とか、友達とかをそいつらと同じだとは思はないだろ?」
クラスメイト「…」
アベル「どうしても理解できないことはあると思う」
「だから、理解してくれとは言わない」
アベル「でもせめて、否定はしないでくれ」
「頼む」
教師「どうした!」
騒ぎを聞きつけ、数人の教師が教室に入ってくる
教師「これは…いったい何があったんですか?」
1人の教師が担任に質問する
担任「え?……あ、あの」
教師「まさか…こいつらが魔法を使ったんですか?」
アベルとユウが魔法使いなのは勿論知られている
担任「いや…」
教師「どうなんですか?」
担任「あの」
「暴発しちゃったんです!」
教師「は?」
担任「暴発したんです!、魔法が!、いきなり!」
「それにみんな驚いてるだけなんです!」
教師「はい?、そんなの聞いたことな・・・」
担任「本当なんです!、だからこの子達は悪くないんです!」
「ねぇ!、みんな!」
担任はクラスメイトに呼び掛ける
教師「本当か?」
クラスメイト「…うん、そうだよ」
クラスメイト達は首を縦にふった
アベル「先生、ユウを保健室に連れていきます」
担任「う、うん、お願い」
アベルはユウを持ち上げ保健室に向かう
ユウ「アベル君、わたし・・・」
アベル「無理に話さなくていい」
ユウ「…うん、ありがとう」
ユウはその後、学校に来た使用人に連れられ家に帰った
ユウの家
母「ユウー!」
ユウ「え?!」
母はユウに一目散に近づき抱きしめる
ユウ「なんで?、帰ってくるのはもっと先じゃ」
母「そんなことより、怪我とかは?、してない?」
ユウ「うん…してないよ」
「それより…ごめんなさい」
母「何が?」
ユウ「大事にするって約束した鞄…だめにしちゃった」
母「そんなの、ユウは悪くないのよ」
ユウ「でも…」
母「ユウが約束を守ろうとしてくれるのは嬉しい」
「でも私は、あなたが生きてるならそれだけでいいの」
母は抱き締める力を強くする
ユウ「うん…、ありがとう」
その後、ユウは母の胸の中で泣き続けた
数日後
アベルは使用人が直したユウの鞄を返しに行く
アベル「これ、お返しします」
母「ありがとう」
アベル「では、」
母「アベル君、本当にありがとう」
母は頭を下げる
アベル「いや、そんな」
「そもそも鞄を直したのは使用人なので」
母「鞄も勿論だけど、娘の側にいてくれてありがとう」
「あなたがいなかったらどうなっていたか」
アベル「そんな…俺は何も」
ユウ「あれ?、どうしたのアベル君?」
アベル「あ、いや」
母「お茶淹れるから、ゆっくりしていったら?」
ユウ「ちょうどいい!、話したいことあるんだ」
アベル「…じゃあ、お言葉に甘えて」
ユウとアベルはソファに座る
ユウ「ありがとう、アベル君」
アベル「そんな…俺は何も出来てないよ」
ユウ「私の味方でいてくれたじゃん笑」
アベル「それは…友達なら当たり前だ」
ユウ「笑、私はその当たり前にすごく感謝してるんだよ」
アベル「そうか」
ユウ「うん笑」
ユウ「それでね、アベル君に言わなきゃ行けないことがあって」
アベル「…なんだ?」
ユウ「あのね、私」
ユウ「もう学校に行かない」
アベル「そうか…」
ユウ「反応薄くない?!」
アベル「そんなことは無い」
ユウ「寂しくないの?!、もう一緒にいれないのに?!」
アベル「寂しくはない」
ユウ「もーー」
アベル「家庭教師を雇うのか?」
ユウ「うん」
アベル「そうか」
「ちゃんと話し合って決めたんだろ?」
ユウ「もちろん」
「お母さんとお父さん、担任の先生とも話し合ったし」
アベル「なら俺が何か言う権利は無いよ」
ユウ「そっか笑」
アベル「話したいことは話せたか?」
ユウ「あと1つだけ!」
「私が捕まらないように皆にお願いしてくれたのアベル君だよね?」
アベル「え?」
緊急時を除き、普通の人間への魔法の使用は法律で禁じられている
ユウがクラスメイトに魔法を使ってしまったことが何処からか知られ、クラスメイトの親達はユウを通報しようとした
だが、当事者であるクラスメイト達が親を説得しユウは逮捕を免れた
ユウ「アベル君が皆を説得してくれたんでしょ?」
アベル「…してない」
ユウ「?」
アベル「あれは…あいつらが勝手にやったことだ」
ユウ「?!」
「そっか…そうなんだ」
アベル「…」
「許さなくていいと思うぞ」
ユウ「え?」
アベル「ユウがおった傷が、この程度で帳消しに出来るわけがない」
「だから、無理に許さなくていい」
ユウ「うん…」
アベル「でも…」
「その事実を覚えておく位は、してやった方がいいのかもな」
ユウ「そう…かもね」
帰り際
ユウ「じゃあね!、またいつでも来て!」
アベル「あぁ、またな」
家に向かい歩こうとするも、アベルが振り向く
アベル「ユウ」
ユウ「何?」
アベル「俺はこれからも、何があっても」
「ユウの友達だ」
「だから、いつでも頼ってくれ」
ユウ「うん!笑、ありがとう!笑」
それからも、
ユウとアベルは定期的に合い続け仲を深めていった
そして今から2年前、ユウとアベルが13歳の時
アベルの母が仕事中に殉職する
アベルの母のお葬式が行われる
その間、アベルが涙を見せる事はなかった
葬式後
ユウはアベルに声をかけようとするも見失ってしまう
ユウ(アベル…何処に行ったんだろう)
ユウはアベルを探すため、町に出る
数分後
ユウ「あっ!」
「アベル!、心配したよ!」
アベル「ユウ…」
ユウ「こんなところで何してるの?」
アベル「特に何も…」
アベルは芝生の上に座りながら夕日を眺めてそう言う
ユウ「そっか…」
ユウはアベルの隣に座る
アベル「悪い、もう戻るよ」
そう言って立ち上がろうとする
ユウは、そんなアベルの手を握る
ユウ「まだ、大丈夫だよ」
「もう少し2人でいようよ」
アベル「…分かった」
少し悩む素振りを見せるも、もう一度座る
ユウはそのままアベルの手を握り続ける
無言の時間が流れる
ユウ「昔、言ってくれたよね」
「いつでも頼れって」
アベル「あぁ」
ユウ「私も、同じ気持ちだから」
「私はどんな時も、アベルの味方だから」
アベル「…」
ユウ「だから、アベルの今の気持ち」
「教えてほしい」
「私が全部、受け止めるから」
アベルは静かに、俯きながら涙を流す
ユウは、そんなアベルの側に居続けた
日が落ち、辺りに暗がりが増えていく
アベル「ありがとう、ユウ」
ユウ「全然、こんなのお安いご用だよ」
アベル「帰ろうか」
ユウ「うん」
帰り道
アベル「母さんはさ、」
ユウ「うん」
アベル「ずっと人間と魔法使いが分かり合う事を願ってた」
ユウ「…うん」
アベル「最初はそれができるって信じてたんだ、でもいつからか…」
「無理だって…少なくとも俺達が生きている間には無理だろうって」
「母さんの願いは叶わずに終わるんだろうと思ってた」
アベル「でも、その夢に近づくこと位は出来ると思ってたんだ」
「でも…あんな、あんな終わり方になってさ…」
ユウ「……」
アベル「俺は納得できないんだ」
ユウ「…うん」
アベル「だから、俺決めたよ」
ユウ「…何を?」
アベル「母さんの願いは俺が引き継ぐ」
ユウ「!」
アベル「人間と魔法使いが分かり合える世界を実現させる」
ユウ「そっか…」
「じゃあ、一緒に頑張ろう!」
アベル「え?、いや、ユウは別に・・・」
ユウ「一緒に!、頑張ろう!笑」
アベル「笑」
「頼むな」
ユウ「うん!」
-------------------------
ユウ「アベルの夢をこんなところで終わらせない!」
「いけーーーーーーー!!」
レイ「!」
保たれていた均衡が遂に崩れる
炎の鳥は風に掻き消される
そして暴風がレイを飲み込む
はずだった
ユウ「え……」
レイ【煉獄】「フレイム・インフェルノ」
レイは先程と同じ魔法を発動し再度ユウの魔法にぶつける
炎の鳥が再度暴風に向かい飛んでいく
1度発動した魔法は時間がたつにつれ威力が減っていく
先程よりも弱まったユウの魔法にレイの魔法がぶつかる
ユウ(あ……)
弱くなった風では炎の鳥は受け止めきれなかった
ドカーーーーン!
炎の鳥が爆発する
ユウが浮かんでいた空中付近に煙が立ち込める
レイ(どうなった…)
レイは万が一に備え警戒を緩めない
すると、煙からユウを抱きかかえる審判のローゼが姿を現す
ローゼ「ユウ・ホルテンズ、戦闘不能」
「勝者!、レイ・ブルーメ!」




