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出発と序列一位と二位

 みんなでご飯食べて話あって、その後はお開きになった。部屋に戻ってから色んなことを考えた。S級クエストのこと、これから私はどうしていくか、これまでにないくらい考えた。深く深く考えた。その日は、そのまま考えて深い谷底に落ちるかのように眠った。次目を開いたときには、陽の光が明るく挨拶をしてくれているかのように、差し込んでいた。

「もう朝か……あのまま寝ちゃったんだ」

 寝起きの体を無理矢理起こして、服を着替える。今日からS級クエスト。オシャレをしたい気持ちを抑えて、動きやすい服を着る。冒険者らしい恰好だ。

「よし。準備万端!」

 荷物をまとめて下の階に向かう。下にはもうみんな集まって賑やかに話していた。相変わらずリカは、お酒を飲んでいる。

「おせぇぞ! 早く行こうぜ!」

「ガキはちょっと落ち着け。はしゃぎすぎだ」

「喧嘩はいいから、みんなで晩酌しな~い?」

「よし、全員揃ったな。詳しいことは昨日アーク話したとおりだ。これは、全員のレベルアップを兼ねてのS級クエストだ。だから、絶対に死ぬなよ。さぁ、行ってこい雛鳥ひなどり共! 強くなって帰ってこい!」

 マスターのクラウンが盛大に盛り上げ応援してくれた。その意気に当てられネオ、エレナ、レグルス、リカは勢いよく飛び出していった。

「お前は一緒に行かなくて良かったのか? 途中まで同じ道のりだろ?」

「若いあの子達の邪魔は出来ませんよ。それにマスターとアークに話したいことがあったので」

「何かあったのか?」

 アラクの顔が暗くなっていく。安い情報じゃないことがクラウンとアークに伝わる。

「先日、新聞で発表された序列の各国所属。その詳しい情報を得る為に評議会に潜入したときに得た情報なんですが。序列一位と序列二位の行方が分からなくなったと」

「序列のツートップが? 死んだのか?」

「いや、あの二人が死ぬとは思えない。何か事情があるはずだ。それに二人同時に行方不明というのが気になる」

 三人が頭の中では色んな考えが巡っている。誰一人喋らず自分の考えに集中している。

「駄目だ。何もまとまらん」

「情報が少なすぎる」

「……今は知らないことが多すぎる。この件は保留にしよう。情報が集まってくればいずれ分かることだ。まずは目の前のS級クエストだ。アラクお前も早く行け。集合日時に間に合わなくなるぞ」

「じゃ、行ってきまーす」

 アラクはちょっと呑気に出発した。アラクの身長が高いせいか離れていっているはずなのに、離れていっている気がしない。自分の身長を気にしているアークにとってその光景は、嫌でしょうがなかった。

「で、なんであんな事言ったの? ジョーカー族のあたしの目はごまかせないよ」

「ジョーカー族は嘘を見破る魔眼を持ってるんだったな。実は一つ思い当たる節がある。半年前くらい奇妙な依頼が来たって、行方不明の二人が言ってたのを思い出したんだ」

「どんな内容だったんだ?」

「確か、組織の制圧任務だったと思う。?」

「どうした?」

「思い出せない……あの二人は、一体なんの組織の制圧に行ったんだ? 一体誰からの依頼だ? 何か忘れちゃいけない事を忘れているような気がする」

 あのアークが重要な事を忘れる? こんなことは今まで無かった。これは只事じゃなさそうだな。

「アーク今考えるのはやめておこう。疑問が増えるだけだ」

「あぁ、すまない……僕もそろそろ依頼に向かうよ」

 アークには考えるなって言ったけど、考えないわけにはいかないよね。まず私は一位と二位に会ったことないから二人の事から調べていこうかな。


ギルドホームから出発して二時間後

「まだ着かないのかー? もう疲れて倒れそー」

「何言ってんのよ。ブルークレーターまでは歩いて三日はかかるのよ。まだ歩き始めて二時間しか経ってないわよ」

「いや、歩きでいかねぇぞ。俺らは汽車に乗ってブルークレーターまで向かう。ま、そこにいる蜘蛛人間アラクは船だろうけどな。目的地が違うから」

 アラクがエレナの方を見ながら笑顔でピースをしている。どうやらレグルスの考えは当たったようだ。

「でも、ブルークレーター行きの汽車なんてあるんですか? ブルークレーターのある所って辺境地だから駅とかないんじゃないですか?」

「そうだ。だから途中まで汽車に乗って、途中下車する。王都の汽車が良い感じにブルークレーターの近くを通るからな」

「へ?」

「つまりーレグが言いたいのはー走ってる汽車から降りるってことー」

 え? 走ってる汽車から飛び降りるの? この国の汽車のスピードって400キロ近くあるよね? そんなのから飛び降りるの? 私死なない?

「安心しろエレナ……骨は拾う」

「当り前よ! でも確か汽車って王都から出てたはず……私たちが居る場所は王都とは離れてる。どうやって汽車に?」

「そんなの決まってるだろ」

 遠くから汽笛の音が聞こえ始める。何かが、ものすごいスピードでこちらに向かってくる。そして、少しずつこちらに向かって来ている者の正体が露わになる。その正体はスピードが増し続ける汽車だった。

「あれに乗るんですか!?」

「あぁ」

「でも、ここら辺って駅無かったですよね? どうやって……まさか……!」

「王都から乗ったら金も取られるし、発車時間まで時間も潰さないといけなくなる」

「だから」

「無賃乗車する!」

 ネオ、レグルス、リカの三人の声が揃う。言葉に一切の迷いがない。常習犯のようだ。青春を楽しんでいる若者の雰囲気をまとっている。

「エレナは俺にちゃんと掴まってろ。髪はボサボサになるの覚悟しとけよ」

「気を付けていってらっしゃーい」

 汽車が段々と近づいてくる。そして、五人の前を物凄い速さで通過する。最後の車両が通り終えると、そこに、ネオ、レグルス、リカ、エレナ四人の姿は無く、アラクがポツンと立っているだけだった。

「あ、あれ? いつの間にか汽車に乗ってる!」

「ここからは、リーダーの俺に従えよ」

「なんでバカ猫がリーダーなんだよ!」

「朝ジャンケンで決めただろ!」

 その場にいなくて良かった。もし負けてたら、初任務でしかもS級クエストのリーダーをするところだった……危なかった。てか、リーダーってジャンケンで決めることじゃなくない? 軽すぎない?

「俺らが汽車を降りるのは二時間後だ。それまでは各自自由でいい。汽車の中には、カジノやレストランなどがある。それじゃあ一時解散だ」

 汽車の中にカジノやレストランがあるってことは貴族向きの汽車なのかな。んー私何しようかなー。レグルスさんは昼寝するって言ってて、リカさんはバーでお酒の飲み比べするって言って……あれ? ネオは?

 エレナはネオを探しに汽車の中を歩き周る。汽車には魔法がかけられていて外見より中の方が大きい。ギルドホームと似た魔法がかけられている。汽車に乗っている人達は皆ドレスを着飾ったり、宝石などの装飾品を身に着けている。エレナの予想通りこの汽車は貴族向きの汽車のようだ。

「あれ? ここにも居ない。どこ行ったんだろ」

「あ、エレナも来たのか?」

 ネオが気配を殺して近づいて来たためエレナは、ネオに気づかなかった。しかし、今のエレナには、殺気を放った状態で近づかれたとしても気付かないかもしれない。

「ギャアー! もう、驚かさないでよ!」

「そんなに驚くとは。向こうに美味しそうなメシあったから行こうぜ!」

 ネオはエレナの手を掴んで引っ張る。エレナは転ばないようネオの歩幅に合わせる。合わせようとするが、ネオの歩く速さに追いつけず転びそうになる。

「ちゃんと転ばずに付いて来いよ!」

「う、うん!」

 それからエレナとネオは二人で食事をしたりお土産を見たりして過ごした。気が付く頃にはあっという間に二時間が経とうとしていた。エレナとネオは集合場所へと向かった。集合場所は二時間前に解散した場所だ。

「お、やっと来たか」

「なんだみんなもう来てんじゃん。早くね?」

「お前らが遅いんだよ」

「す、すいません……初めての汽車だったので……」

「いや予定どおりだから問題ない。で、今から汽車降りるわけだが……怪我すんなよ」

 え? 汽車降りるだけなのに怪我すんの? え、もしかしてこの人達汽車から飛び降りようとしてる?

「よし、エレナはネオに掴まっとけ。スリーカウントで降りるぞ」

 え、嘘もう降りるの? 早くない? まだ心の準備が出来てないんだけど! もう少し時間あると思ってたのに!

「エレナちゃんと掴まっとけよ!」

「行くぞ。サン……ニ……イチ……ゼロ!」

 四人は勢いよく飛び出した。最初は浮遊感があったが重力には抗えず下に落ちていく。エレナが勇気を出して目を開くとそこには、広大な自然が広がっていた。長い川や空を突き破るように大きい大樹。遠くには大きな火山も見えた。

「綺麗……本の世界みたい」

 あれ? なんでこんなに降りるのに時間がかかってるんの? 普通なら地面にすぐ着くと思うんだけど…… 

「リカ、そろそろ結界を頼む」

「りょーかーい」

 あぁーやっぱり、もしかしてとは思ったけど、私たちが下りた所って……橋の上だ! 結界張られて死なないとはいえ高い所から落ちるの怖い!

「【結界魔法】・『雲界うんかい』」

 エレナ達はリカの魔法で柔らかい結界に包まれた。結界のおかげで地面に着いたときの衝撃もなく無事に、地面に足をつけることが出来た。

「し、死ぬかと思った……」

「目的地まではまだ少しかかるぞ。それに今から魔物の生息する森を通るから注意しろよ」

 私目的地に着くまでに死にそうなんだけど。私S級の魔物にあったら泡吹いて死ぬかも……


フォレグラン王国

 ここは王国一の図書館〈ライブ〉。ここには童話から小説。禁書や聖典まで幅広い本が置かれている。そして、過去の依頼などをまとめた書類もある。ここは誰でも入ることが出来、家族連れや考古学者など王族も立ち寄ったりする場所だ。その図書館の中に、『悪戯な牙(シェルムファング)』団長の姿があった。

「ホームで大人しく留守番してるのもつまんなくて、ここまで来たけど……思ったより人が多いな。ま、それはさておき調べものでもしますか」

 クラウンは図書館の奥へと進んで行く。奥に進むにつれて人の姿が減っていく。クラウンが進み続けて少しすると、クラウンが目的の場所に着いた。

「この棚のどこかに報告書があるはずなんだけどな……あったあった」

 クラウンが一冊の本のような物を手に取り、ページをパラパラとめくる。一ページめくるごとに埃が舞う。そして、クラウンの本をめくる手が止まる。

 ん? 序列一位と二位が半年前に受けた依頼の事が書かれていない。組織の制圧という重大任務の資料を作らないなんておかしい。改ざんされた形跡も無いし、破られた跡も無い。

「誰かが裏で糸を引いてるのか? 暇だし少し探ってみますか」

「いーや、やめといた方が良いと思うよー」

 クラウンの後ろから誰かが話しかけてきた。クラウンは敵意を持たず、呆れた表情で後ろを振り向く。

「どうしてここに居るんだ? ハルコン」

 これは実体じゃなくて映像か? 魔道具を使って連絡をするということは急な用でもあるのか? そこまでして伝えたい事ってなんだ?

「姉さんにちょっとアドバイスをしたくて」

「アドバイスだと? この半年前の事のか?」

「そ、時間が無いからちゃんと聞いてねー」

 これまでクラウンに見せた事のない真剣な顔で

「姉さん、その件に首を突っ込んだら駄目だ。もし、突っ込んでしまったら逃げて。死ぬまで逃げ続けて。それでも、知りたいなら『()(みやこ)』に向かって。そこに全てを知っている人がいる。気を付けて」

 最後まで言い終えるとハルコンの姿が消えていった。魔道具の使用時間が切れてしまった。

 日の都だと? 〈ヤマト将国〉別名『日の都』。あそこは確か序列二位が拠点としていた国。もしかして、その国に何か理由があって姿を隠しているのか? 

生意気な弟(ハルコン)には首を突っ込むなって言われたけど、そう言われたら突っ込んじゃうのが『悪戯な牙(わたしたち)』だ!」


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