第8夜 騎獣
世の中には危険な場面がたくさんある。それを最も実感するのはやはり街の外で生活の糧を得る者達だ。
そう、俺達のような……!
「悪い、シャドウウルフがそっち行った!」
「見えてるよ! ちっ、これ以上ミスんなよっ……とぉ!」
冒険者という職がある。まぁ最底辺よりはマシと言える職だ。迷子探しから魔獣討伐まで手広い仕事が用意されている。有り体に言ってしまえば何でも屋。ヤクザよりは真っ当に見られるし個人で稼げる可能性もあるということで案外冒険者は多かった。
ただ、自分の命を担保にしているようなものなので仕事の選び方によってはリスキーな生活にならざるを得ないこともある。
そう、今の俺達のようにな……!
魔獣討伐は命がけだ。その分、リターンは大きい。討伐証明部位を提出すれば金が入るし、魔獣の素材も金になる。
だが、俺達のメインは魔獣討伐じゃない。
「おい、リク! まだ見つからないのか!?」
「こっちだって探してる! ちょっと待ってて、あと10分くらい!」
「どんだけのんびり探すつもりだよ、オイ! このままじゃ逃げられちまうぞ――せっかく見つけた騎獣、ペガサスだってのに!」
しかも、ムーン種といって普通のペガサスよりも稀少で価値が高い奴だ。夜のような黒い体躯に優美な翼。夜に紛れることに加え、ムーン種共通の特性として隠形能力がある。夜になると特に見つからないので仕方ないところもあるが、それで諦めてちゃ騎獣専門の冒険者なんてやってられない。
「シャドウウルフもしつこいな!」
「やっぱり狙いは同じなんだろ」
「ってことはまだ近くにいるな。リク! どうだ?」
「うーーー。あっ、見えた。東へ80m行ったところの樹の横!」
「よし、きた! 一回勝負だぞ、心して掛かれ!」
俺達は嬉々としてムーンペガサスの囲い込みに向かう。シャドウウルフは何とか散らしたのであとはペガサスを捕まえるだけ。ただこれも技術がないと難しい。なぜなら、魔獣討伐とは違って騎獣は捕まえる必要があるからだ。それに、高く売るには無傷であるのが望ましい。
「はっはー! 楽勝だぜ!(ヤケクソ)」
「おっとそこ、蹄くるぞ」
「なんでコイツこんな元気なの? 麻痺薬効いてないぞこれ」
「知〜る〜か〜!」
騎獣も最初は暴れるし抵抗する。だが、何らかのラインを突破したらソレも弱まったりする。今回のムーンペガサスもそのタイプだったようで、ふいに静かになるとそこにじっと佇んだ。
ムーンペガサスは貴族に引き渡され、俺達はひと月は豪遊できる程度の金を得た。
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前話から引き継いだ要素:騎獣
ムーンペガサス
夜のような黒い体躯に優美な翼を持つ。その美しさから所有しているだけでもステータスとなる。
ムーン種のもつ魔力は光魔力過敏症の特効となるため、その症状を抱える貴族は金を惜しまない。