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後始末(番外編)

こちらは後日談的番外編となります。

本編はハッピーエンドで終わっていますので、こちらは蛇足となる可能性があります。

また、恋愛要素はほとんどありません。ザマー要素を外出しにしたようなイメージです。

以上が問題ない方は、どうぞご覧いただければと思います。



 ◇神崎 一臣





 クソ! クソ! クソォォォォォォォッッッッッ!!!!!


 日本最高峰の病院で、最高の医者により、最高の機材で治療を受けたというのに、顔の痛みが治まることはなかった。

 麻薬に類する痛み止めでさえ、一時しのぎにすらならない。



「父さん!」


「っ!? 一臣か。何故ここにいる? 退院は一週間後と聞いたが」


「そんなことはどうだっていい! 俺をこんな目にあわせたアイツをどうにかしなきゃ、この痛みが消えることはないんだよ!」



 病院でいくら治療を受けようとも無駄だ。

 俺のこの怒りが収まらない限り……、そう、たとえこの傷が癒えようとも……!!!



「……病院を抜け出してくるほどに怒り心頭か。大方、私の力を借りて復讐をするつもりなのだろうが、今回に限ってそれは不可能だ」


「な……っ!? どういうことだよ!」


「これが何かわかるか?」



 そう言って父さんは、机の上に広げられた紙をまとめて俺に渡してくる。

 結構な量だが、一体なんだ…………っ!?



「こ、これは……! 父さん、なんだよこれ!?」


「見ての通りだ。これまでにお前たちが行った悪行が事細かに記載されている。ご丁寧に、私が裏でもみ消した件も拾い上げられているぞ? それに、私が把握していないこともいくつかあった。全く、我が息子ながらここまで外道だと呆れてものも言えん……」



 父さんの言う通り、まだ加減ができずやり過ぎてしまい神崎家の力でもみ消してもらった件や、上手く処理できて父さんにすら知られていないであろう件まで記載されている……

 一体、何故こんなモノが……?



「これは今朝この屋敷に届いたものだが、同じものが本社や他のメンバーの実家にも届いたそうだ。私も知っている島袋家や五十嵐家なんかは真っ先に泣きついてきたぞ?」


「と、父さん! 答えてくれ! これはなんだ!? 誰がこんなものを!?」


「これを屋敷に届けた者は、筬火(おさび)と名乗ったそうだ」



 筬火……?

 筬火といえば、ウチの有名な生徒と同じ苗字だが、どういうことだ……?



「お前は知らないだろうが、筬火家は怪火(かいか)に名を連ねる一族だ。恐れ入ったよ、まさか息子の通う学校に、怪火に名を連ねる一族が四家(・・)も通っているとはな……」


「怪火……って、一体なんなんだ?」


「……わかりやすく言えば、表に出てくることのない裏稼業の者達だ」



 裏稼業だって……?

 それって、殺し屋とかスパイみたいな奴等ってことか……?



「信じられないかもしれないが、実在している。そして、これは我々の業界において鉄則とされることだから覚えておけ。「怪火の者に手を出すな」」


「な、なんだよ、それ……。そんな奴等、ウチの力があればなんとでも――」


「ならない。これは神崎家どころか、五皇でも守っている鉄則だ。お前でも流石にその意味くらいはわかるだろう?」


「っ!?」



 五皇とは、子どもでも知っているこの国のトップに君臨する五大家系だ。

 怪火が五皇でも手を出せないレベルの存在なのであれば、確かにウチごときがどうにかできる存在じゃない。



「……ちょ、ちょっと待ってくれ! じゃあ、俺は、どうなるんだ……?」


「やっと今の状況が理解できたようだな。結論から言えば、被害者や遺族に対し莫大な金を支払うことで首だけは繋がった。ただ、これは我が家だけの話で、他の者達のことは知らない。だから奴等のことは忘れろ」


「そ、そんな……」



 他の奴等はともかく、島袋と五十嵐は旧知の仲だ。

 できることなら、救ってやりたい。



「と、父さん――」


「私は安心しろとは言っていないぞ。お前に他者を心配する余裕などないと知れ!」


「っ!」



 普段から落ち着いている父さんが、怒鳴り声をあげることは滅多にない。

 それだけ俺の立たされている状況が危ういということが、今のでハッキリと理解できた。



「今回の件で、神崎家は総資産の半分を失うこととなった。その影響は直系である我々だけでなく、分家にも及ぶことになる。それでも私が取引に応じたのは、当然だが私にも責任があるからだ……」



 そう言って父さんは俯き、頭を抱えてしまう。



「お前を自由にさせていたのは、人の使い方、操り方、口の封じ方や消し方を学ばせるためだった。中でも重要なのは、そういったことを感情を殺して行うことで、お前は上手くやっていると思っていた。……しかし、実際は快楽と享楽に溺れ、隠ぺいすることだけが上手くなっていたようだな」


「と、父さん! 違う、違うんだ!」


「今更何を言ってももう遅い……。ただ、少なくともこれだけは安心しろ。……命の保証だけはしてもらった」



 その言葉と同時に、背後から何者かによって口が塞がれてしまった。

 そして、押し当てられた布地から漂う何かを吸い込んだ瞬間、意識が遠のいて――





 ◇筬火 氷支離





「――以上が現状の報告となります」


「ありがとう、氷支離。神崎先輩については少し甘い気もするが、まあ落としどころとしてはこんなところか」



 今回の件、神崎家という多少権力のある家系を相手にすることもあって、彼らの過去の所業についても徹底的に調査を行った。

 結果わかったことは、彼らが人間の皮を被っただけの悪魔だったということだ。


 恐喝やイジメ、レイプは基本として、被害にあった女子は校内だけでも10人以上存在する。

 10人以上と数字が曖昧なのは、怪火の情報収集能力をもってしても確証が得られなかったからである。

 原因は主に二つで、一つは当人に被害者意識がないケースと、関係者が既にこの世に存在しないケースだ。


 被害者意識がない理由は、彼らにより言葉巧みに先導――あるいは洗脳されてしまい、恋人だと思い込んでしまっているからだ。

 これが最近の主流だったようで、彼らはローテーションと呼び複数の女子をシェアしあっていたのである。


 この世に存在しない理由については単純で、被害者と、加害者に仕立て上げられたと思われる人物が自殺してしまっていただけの話だ。

 被害者については文字通りの自殺と思いたいところだが、加害者については神崎家が手を回してスケープゴートを用意したであろう痕跡を既に掴んでいる。

 神崎家が取引に素直に応じたことからも、突かれて痛いところであったことは間違いない。



「2名は意識が戻っていませんが、他の者達については準備が完了しています。すぐに残りの被害者についても吐くことになるでしょう」


「……その2名って、氷支離がやったヤツだろ」


「そうですね」



 視聴覚室のドアを封鎖していた男と、視聴各準備室にいた撮影担当は私が処理した。

 (かがり)様の言うように、意識が戻っていないのはその2名である。



「やり過ぎだ。死んだらどうするつもりだ?」


「死なないようには手加減しました」



 もっとも、私は篝様のようにお優しくはないため、後遺症が残っても構わないくらいの手加減しかしないが。

 ……いや、そういう意味では、今回の篝様は少なくとも二人の睾丸を潰しているのか。

 それ程に、あの小野寺という女子のことを……



「はぁ……、まあいいや。でも、その二人しか知らない情報だってあるかもしれないんだから、扱いは慎重にな」


「承知いたしました。それで神崎については如何(いかが)いたしましょう? 篝様も参加しますか?」



 契約上、神崎の命を奪ったり部位欠損のような不可逆性の怪我を負わすことはできない取り決めだ。

 そのため、今回は文字通り希望者による袋叩きを行ったうえで、最後に専門家により処女(・・)を散らされる手筈になっている。



「……何故?」


「篝様も被害者と言えば被害者でしょう?」


「……いや、憤りがないとは言えないが直接拳をぶち込んだから十分だよ」


「そうですか」



 やはり、篝様はお優しい。

 しかし、不知火家の正統後継者としては――



「言っておくが、情けをかけているワケじゃないぞ? 打ち込んだのは『蝕み』だ。神崎先輩は恐らく、今も痛みで苦しんでいることだろう」



 訂正しましょう。

 やはり篝様はお優しく、そして厳しさの使い分けもできている素晴らしいお方だ。

 この方について行けば、いずれ怪火も……



「……失礼いたしました。私の浅慮をお詫びいたします。どうか、今夜はこの身をお使いいただければ――」


「っていきなり脱ぎだすな! なんで氷支離はそうやってすぐに脱ごうとするんだよ!? もう勘弁してくれ……、俺はゆっくり寝たいんだ……」


「承知いたしました。では、朝にまた起こしに来ますので」


「服は来て来いよ」


「……」


「黙るな!」


「それでは、おやすみなさいませ」



 今日も色仕掛けは失敗してしまったが、篝様もようやく女を意識し始めたのだ。

 このまま攻め続ければ、いずれ落とすことも可能だろう。


 ……しかし、純情な篝様であればもしかしたら、あの小野寺という少女を裏切る行為はしないかもしれない。

 今は篝様が望んだ青春を謳歌すればいいでしょう。

 しかし、いずれは――






ということで裏で色々処理がされましたという番外編でした。

本当は後書きに記載予定だったのですが、一人で盛り上がってボリュームアップしてしまったので本編の番外編として投稿することに……


後日活動報告の方で簡単なキャラクター設定なども公開しようと思いますので、興味のある方は遊びに来てみてください。


それでは、お読みいただきありがとうございました<(_ _)>


※追記

活動報告に設定を公開したのですが、あまりにも不親切過ぎるのでこちらにも一応貼り付けておきます。

ご興味のある方は↓を見てみてください。


<登場人物>

不知火しらぬい がかり

本作の主人公で不知火流体術正統後継者。

幼少時代に父を亡くし、140代目の当主となる。

その際初めて当主として口にしたのが「学校に通いたい」だった。

結果、裏の世界で生きてきた不知火一族は、新当主の方針で表世界に出ることとなる。

しかし、一般常識やコミュニケーション方法を学んでなかった篝がいきなり集団生活に溶け込めるワケもなく、しっかり孤立してしまった。

イジメの標的にされることもあったが、眼鏡を奪われた際にキレてイジメっ子全員を半殺しにしたことで誰も近づかなくなった。

その際に散眼を披露したせいで『カメレオン』などのあだ名が付けられた。


小野寺おのでら 雪花せっか

本作のヒロイン。

かつては黒髪おさげに黒ぶち眼鏡の、外見も内面も大人しい少女だった。

不良漫画のイケメンを推しキャラにしており、そんな理由から少し治安の悪い学校を選んでしまったのが悲劇の始まり。

大人しそうな見た目に目を付けられ、三年の不良達に襲われかけたところ不知火 篝に助けられる。

その日を境に自分の中の推しが全て塗り替えられ、篝に近づくために自分を磨き始めた。

中学時代、アニメにハマったことで声優や脚本家を目指すが挫折。

しかし、その経験により内気でコミュ障気味な自分を偽る仮面を作ることに成功した。

篝とは住む世界が違うため今後も色々と苦労することとなるが、それを愛の力で乗り越えていく第二の主人公……というか真の主人公かもしれない。


筬火おさび 氷支離ひじり

本作の準ヒロイン。筬火流忍術のほとんどを体得している、族長の娘。

筬火家は800年以上前から不知火家に仕える一族で、主な役割はサポート。

裏稼業だが表世界にも精通しており、不知火家の表世界進出のフォローもしている。

氷支離は幼少期から篝に仕えており、陰ながら身の回りの世話や後始末を担当していた。

そのために男として一緒の学校に通っている。

篝に対して並々ならぬ愛情を抱いており、隙あらば肉体関係を迫る。

そのせいで中学時代はホモ疑惑が生まれたため、高校では他人を装うように命じられてしまった。


神崎かんざき 一臣かずおみ

本作の敵キャラの一人。

神崎家は日本のトップ10には入る権力を持つ家柄で、そのお坊ちゃんである一臣はこれまで好き放題やって生きてきた。

しかし、不知火家を敵に回した結果、その責任を取るカタチで麻袋に包まれ被害者親族から文字通り袋叩きにされる。

その後、ボロボロになったところを専門家たちによって色々と念入りに犯された。

一応その後の構想としては、恨みから復讐心を燃やし最終的に中ボスくらいの立ち位置にしようかなと思ったような、そうじゃなかったような?



<用語説明>

・怪火

暗殺、諜報などといった裏稼業を専門とする集団の総称。

不知火家、筬火家、金火家、蜘蛛火家などが存在する。

不知火家はその中でも最も位の高い位置づけだったが、表世界への進出により一部の怪火からは印象が悪くなったようで……?


・不知火流体術

表向きには古流武術として知る人ぞ知るようなマイナー流派。

しかし、裏では暗殺を含む殺傷に特化した武術。

便宜上、表門と裏門に分かれている。


表門:咢の型など型式で管理。

裏門:呪拳と呼ばれる文字通り人を呪うことに特化した業(技ではなく業と表記)


神崎先輩に叩き込んだのは呪拳の『蝕み』と呼ばれる業で、呪いというよくわからない概念によるダメージのため現代医療では治療不可能。


・五皇

表世界における五大家系の総称。

天皇家、神皇家......etc みたいなのを考えていたけど怒られそうなので考えるのをやめた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最初の最初期は「灰色の青春を送りたくない」みたいなこと言ってるくせに、なんでコイツ他人と関わる気ありませーん的な態度してるんだ?と思っていたのですが、チー牛どころではない本性がすぐに発揮され…
[一言] アッー!
[良い点] どう見ても普通のチー牛ではないというツッコミは置いといて、なかなかに厨2感溢れる設定ですね! でもって、ざまぁ好きな人は、神崎先輩が専門の変態におぞましくやられる場面をご所望な気もしますけ…
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