第99話.アナスターシャ 1
石造りの空間だった。
今いる部屋だけでも部屋と思えないほどの大きさである。球場がいくつ入るかわからないほどの大きさだ。
事前にホリーから聞いた話によると、左右と正面に扉があり、正面は開けれないようだ。左右の扉の先には今いる部屋よりも強力な魔物がいるらしい。
(※あとがきに参考図を載せています)
「たしかこの部屋はそこまで難しくないんだよね?」
『ああ。FランクとEランクの魔物しか出ない。だからほら、あそこは指導員と一緒にいる冒険者がいるだろう?』
ここで言う『指導員』とは、年齢や怪我により冒険者を引退したのち、初心者に基本的なこと教える人たちのことだ。
最近の冒険者のほとんどは、指導員による指導を受けている。
「……なんで無言でこっちを見てるのかな遥斗くん?」
「いや……小学生は指導受けたほうがいいんじゃないかな、と……」
「身長ネタをイジんな!」
「自分でネタって言うんだ……」
『え、ガルムは小学生だったのか……?』
「いーやホリー、勘違いすんなよ? これはこのガキンチョが勝手に言ってるだけでな?」
「ガルムさんにガキって言われても何も感じませんね」
「……なあ俺、結構前にいろいろ教えてあげたよな? なんでイジられてんの?」
冗談はさておき。
「ホリーさん、最初はどうすればいいんですか?」
「逃げたな? 遥斗逃げたな? まぁそりゃそうか。そりゃあいろいろ教えたことに関しては都合が悪いよなぁ」
「ちょっと、今小説だったら「冗談はさておき」とか地の文あって本題に入る流れでしたよ。もうガルムさんがツッコむターンは終わりましたよ」
「知らんわ! って、前もこのツッコみしたわ!」
『最初は左の部屋だ。そこにいるスターラビットを倒しまくったら、そいつの特異種が出る。まずはそいつを倒すところからだ』
「えっ俺ホリーにも無視されるレベルなの?」
「それじゃ、まずはそこに行こうか」
「ちょっあのスーザさん? 君も無視しないでもらえます?」
そうして11人は周りの視線を集めつつも、左の部屋に向かった。
「いやもう慣れてきたけど、ひどくねぇ……?」




