第90話.その効果は
強靭な刃の4人全員と無名のFランクパーティーという、傍から見たら誰しもが羨む光景だろう。
この店、小春喫茶の店主──名前は山本朔というらしい──は副業として冒険者をやっているようだ。なんでも、スーザよりも先にBランクに到達したんだとか。
その時代に2人は知り合ってから、今でも仲良くしているらしい。
ちなみに、朔は今もBランクのままだという。冒険者をやっていた事自体、この喫茶店を開くための資金集めだったらしく、今ではお小遣い集め程度にしかやってないそう。
「ま、そういうわけだから」
「冒険者のよしみでどこに行っても注目されちゃう彼らに場所を提供してる、って感じだよ。情報が漏れることは一切気にしなくて大丈夫」
「スーザさんがそこまで信頼を置いている相手なら、なんの問題もなさそうですね」
「俺からの信頼度もバッチリだぜ!」
「あれ、ガルムっちが言うと急に不安が……」
「ひどくね?」
「ガルムは友達が少ないから、信頼する相手も少ないだけなのでは?」
「リアさんリアさん。君、この兄妹と会うときにそれしか言ってないから、俺ほんとに友達少ないって思われそうなんだけど?」
「「……あとで一緒にご飯行きます?」」
「ほらぁ!!!」
ガルムは泣きながらコーヒーをがぶ飲みする。
「いやそれお酒でするやつ……じゃなくて、そろそろ本題に入ったらどうだい?」
ガルムを除く5人がガルムをいじり続けてるのを見て、朔は苦笑いしながらそう助言する。
「それもそうだね」
「んじゃ、早速恩恵の効果確認するか!」
「いや立ち直りはや」
「効果しだいであたしたちも取りに行かないとだしね〜」
4人を代表して、スーザが全員に見えるようにステータスを開く。
名前 :スーザ
レベル :698
職業 :剣士
スキル :剣術スキル(MAX)、二刀流《★☆☆☆☆》
特殊スキル:なし
魔法 :なし
技術 :赫剣
恩恵 :裏のファスト
称号 :世界初の二刀流、裏のファストに踏み入りし者
(いやスーザさん、技術持ってんのかーい)
──技術。中級剣術スキルなどのような予め決められたものではなく、自身で開発した技が認められたものを技術としてステータス画面に表示される。要は自分専用の技である。
遥斗で言う、縮地と同じものだ。
ただ、技術に追加されるレベルまで完成させるのは至難の業。全世界で見ても技術を持っている冒険者は0.1%ほどである。
「おっ、ほんとに恩恵の欄に追加されてますね!」
「副業で冒険者をやってる私でもやっぱりこういうのは気になるね」
「じゃ、押すよー?」
一声かけてからスーザは”裏のファスト”の詳細を確認する。
恩恵:裏のファスト
・特殊スキル禁止エリアの効果を無力化する。
(※ただし常時発動系に限る)
「っしゃあああぁぁぁぁぁ!!!」
ガルムが全力で喜びの声を上げる。兄妹とスーザから「面白いから今日はそのままでいて。戻ったら隠れ家に入れない」と脅されて今もショタのままなので、その状態で叫ばれると思わず笑いそうになる。
それを無視した朔含め6人は、恩恵について話す。
「常時発動系……短距離転移みたいなスキルに近いやつは適応外、ってことですかね」
「だね。あのアイテムボックスみたいなやつは怪しい気もするけど」
「常時発動系かぁ……私もミュウも持ってないので、わざわざ取りに行くほどではないですかね」
「裏のファスト、という場所は難しかったようですが、やはりファストはファスト。重要度はあまり高くないような気がするね」
「わたしもガルムさんみたいな常時発動系は持ってないから別にいらなかったかな」
つまり、このスキルはガルムだけが嬉しいものとなったのである。
「って、ならなんであの時短距離転移使えたんですかね……」
「それだよねぇ。僕もあれ見てなんで? と思ったし……。誰か情報持ってそうな人がいればなぁ……」
スーザのその言葉を聞いた時、兄妹はある1人──1体?──を思い出す。そう、2人に教育をしてくれた。
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