第81話.ゴブリンジェネラル・邪
その後のスーザの二刀流スキルの活躍によって、順調に攻略を進めた。そのおかげで、10分ほどでボス部屋に辿り着く。
二刀流スキルの持続時間は20分。
「今更だけど、明らかにダンジョン自体の大きさも変わってるよね」
「ですね。スーザさんのおかげでゴブリンは瞬殺できるので、魔物討伐時間的にはいつものファストと同じくらいのはずなのに、ボス部屋に辿り着くまでの時間が2倍近くになってます」
「まぁでも、これで終わりかな?」
スーザがボス部屋の扉を開く。
中には黒のオーラを纏っている遥斗たちと同じくらいの身長のゴブリンジェネラルが待ち構えていた。
ただのゴブリンとゴブリンジェネラルとの違いは装備の質である。ゴブリンは布切れ1枚で最低限腰のあたりを隠し、貧相な剣を構えているのに対して、ゴブリンジェネラルは金属製の鎧を身につけ、手にはゴブリン・邪が持っていたものよりも黒く染まり、一層鋭そうな剣を構えていた。
さらに、通常のゴブリンジェネラルとは違い、左手には剣と同じくらい黒く染まった盾を構えていた。
「片手剣に盾……マジか……」
「世界で見ても、人類であの組み合わせをしてる人はほとんどいないのにね……」
片手剣に盾。一見オーソドックスな装備に思える。なんせ、今どきのアニメやゲームの聖騎士といった人たちは皆このような装備をしているからだ。
当然、それに影響された人々も初期はそれをする人も多かった。が、間もなくして、盾を構えながら剣で攻撃することの難しさに気づき始めた。
今ではほとんど見かけることのなくなったその組み合わせを、ゴブリンジェネラルはしていたのだ。
「えっと……魔法は試すかい?」
「いや、どうせ切られるどころか盾で弾かれそうなんで大丈夫っす」
「それじゃ、早速……っと?」
スーザが姿勢を低くし、一気に距離を詰めようとしたその時。ゴブリンジェネラルが盾を自身の前に立てるようにおろし、魔力を貯め始めた。
何の魔法を使うか予測できないため、無闇に飛び込むことはできず、何の魔法だろうとすぐに対応できるように構える。
少しずつ盾に無属性の魔力が溜まってきたかと思うと、何色にも染めず魔法を発動した。
盾を起点として発動させた魔法、それは防護結界だった。
つまり、左手に盾を構えているゴブリンジェネラルにとっては、自身の前方に常時2m×2mの動く結界ができたことになる。
「……マジ?」
「……スーザさん、一応言っておきますと、今人類が使える装備に魔法を付与することは不可能なので。なんなら、そもそも人類は結界を動かせませんので」
スーザに倒してもらおうと考えていた遥斗だったが、スーザと遥斗、その両者が剣を構えた。




