第73話.夕食
「それでそれで？！ 隠しダンジョンどうだったの？！」
「逃げたが？」
「逃げたが？！」
主要ダンジョンを共に攻略した兄が逃げたことが信じられないのは無理もない。遥斗は料理の手を止めることなく続ける。
「いや条件がヤバかったんだわ」
「なるほど？」
「まず魔法が効かないだろ？」
「うん、わたしもう行けなくなったよ」
「特殊スキル使えないだろ？」
「あ〜、お兄ちゃん、剣が出せなかったってことね」
「んで、おそらくAランク以上」
「あ、お兄ちゃんって物理系魔法、中級までしか使えないんだっけ？ たしかにそれは逃げるね……」
スパゲッティが茹で上がる。それを皿に移し、茹でている間に準備しておいたトロトロの卵、にんにく、ベーコン、輪切り唐辛子を同じ皿に盛り付ける。本日の晩ごはん、ぺぺたまの完成だ。
「わぁ……！！」
紬は目をきらきらさせる。ぺぺたまは最近の紬の大好物である。
「はっ……！ 惑わされるところだった……！ それで、攻略できそうなの？」
「もう惑わされてると思うんだが……。まぁ、剣を取り出した状態で行けば問題ないと思うし、明日またスーザさんたちと行ってくるよ」
「ごめんねー。さすがに魔法が効かないならわたしは邪魔になるだけだからね……」
「気にすんな。それより冷めるぞ？」
「わわっ！ それだけはっ！ いただきますっ！」
卵とにんにくの香りが混ざりあって、食欲を掻き立てる。実は遥斗、かなり料理できるタイプの男子である。
紬がフォークでスパゲッティを巻き、口に入れる。
「ん〜っ！ おいし〜っ！」
「お粗末様。毎回美味しそうに食うな」
「実際おいしいからねっ！」
その様子を嬉しく思いながら、遥斗もフォークに巻いたスパゲッティを持ち上げる。見るだけで分かるような卵のふわふわ具合。
口に入れる。口の中ににんにくの香ばしさが広がる。やはり、スパゲッティと卵、にんにくのコンビは至福である。また、その味の中に唐辛子によってできるピリッとした辛さ。口の中がリセットされる。この繰り返し。
（ん。今日もまぁまぁの出来だな）
紬の満足そうな顔を見れた遥斗もまた満足する。そして、日をまたぐ。
よし、今週４時投稿守れた！←
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何もなければ４時投稿です！
