第68話.赤のスライム
ダンジョン内で魔物が湧く瞬間の目撃情報はほとんどなく、いつの間にか湧いているという印象だ。しかしそれは殲滅されることがあまりないからこそ起こる現象なのだ。
魔物を殲滅することが多々ある遥斗は数えきれないほどその瞬間を見ている。言ってみれば、魔物を倒した時の逆再生のようなものだ。
どこからともなく突然現れたホログラムの粒子が集まり、ある程度集まると魔法陣に入る時のような光が溢れる。それが落ち着くとその場所に湧いているのだ。
数十秒待ってやっとその現象が遥斗の目の前で起こり、それと一緒に遥斗は右手を前に出す。スライムの形ができると同時にあの技を放つ、これが遥斗の思う最速で簡単な討伐方法だ。
湧く瞬間が目撃されていないのだからしょうがないのだが、魔物が湧いた直後の1秒ほどはどうしても動けない。その瞬間に倒すことで、下級魔物なら絶対に倒せるのだ。
光が収まり始めたと同時に大気中の魔力を凝縮して放つ。そしてまた湧くまで待つ。
──そう思っていたのだが。
「おっ! やっと来たか!」
まだ姿は捉えられない。が、初級魔法の火炎壁であの技を防がれる。ただのスライムは魔法を打たず、ファストではスライムジェネラル以上は湧かないため、特異種、さらに言えば火魔法から赤のスライムと言っていいだろう。
あの技は魔力を集めて打つもの、言わば無属性魔法というものだ。つまり、魔法を使えば簡単に守れるという弱点がある。
「ま、今回のはわざと守れる程度の量にしたんだけどな。中級魔法・風籠、封!」
遥斗は火炎壁ごとスライムを閉じ込める。属性的には火の方が風より強いが、初級と中級の差は埋まらない。風籠が火炎壁をかき消す。
そこにいたのは、やはり赤のスライムだった。
「まさか本当にいるとは……」
変に抵抗しないことから、中級以上の魔法は使えないのだろう。特異種といっても、ただ魔法が使えるスライム、といったところのようだ。
十分に観察した後、突風で仕留める。が、なにも起こらない。
「けど、特異種が出たって事実には変わりないしな。もうちょっと探ってみるか」
隠し部屋が楽しみで仕方ない遥斗は、もう少し調べてみることにした。
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また、明日から5日間はとりあえず午後4時投稿で統一するのでお楽しみに!




