第61話.偽名
「なんかよく分からん機材がたくさんあるけど、使い方分かるのか?」
「うん! さっき使い方に目を通したしね!」
この兄妹、もといこの自身の強さを理解することができない兄妹は、一応頭は非常に柔らかいので説明書などを理解するのは一瞬なのだ。なお、なぜそれを世間一般の強さと自身の強さを比べるのに使えないかは不明である。
「ってことは、もしかしてもう?」
「まぁあとちょっと細かいセットがいるけど、午前中には終わるし、午後から初配信してみよっかなー!」
その言葉を聞いた瞬間、遥斗が午後からの予定が無かったかを思い出したのは言うまでもない。
その後、遥斗は紬に疑問、というより懸念点を聞く。
「そういえばさ、配信ってことは顔出しーとか名前ーとかあるんだろ? どうするんだ?」
「あーそれねー、今まで通り黒フードは被って、あとなんかかっこよくて顔が隠せそうなマスクみたいなやつをつけるつもりだよ。それも一緒に昨日注文しておいたんだよねー!」
「さすが紬すぎた」
「それで名前なんだけど、わたしたちって他の人みたいに偽名使ってこなかったじゃん?」
「必要性をあんま感じなかったしな」
「それでね、ちょうどいいしわたしたちも偽名決めたらいいんじゃないかなっておもったんだけど……」
「まぁ、スーザさんたちみたいに他人と関わる機会が増えるかもしれねえしなぁ。あの4人に関してはもう手遅れだとして、たしかに偽名あったほうがいいのかもな」
冒険者における偽名は、冒険者ランキングに名前がのることで個人情報がバレることを防ぐためや、チームメンバーを冒険者になってから知り合った人と組んでいる場合に本名がバレるのを防ぐためなど理由は様々だ。ちなみにガルムたちが今挙げた理由に当てはまる典型的な例となっている。
そのため遥斗たちは、Fランクパーティーだからランキングにのることもなければ、チームメンバーは妹だけなので気にする必要もない。だから今まで偽名は使わなかった、使う必要がなかったのだ。
「……思いつかなくね?」
「だと思って、わたしは予め考えておきました! わたしえらい!」
「さすが!」
「ミュウさんがわたしたちのことツムツムとはるって呼んでたじゃん? それでよくない?」
「た、たしかに……」
数秒で偽名が決まった。
「よしっ! それじゃ、チャンネルの名前は『ツムツムのダンジョン配信!』でいっかな!」
「おぉ……なんかMyTuberっぽい」
紬は残りの作業をするらしいので、遥斗は視界に映らない場所で剣を磨いたり、買い物に行ったりして時間を潰した。
2人で昼食を食べた後、紬は「てきとーなCランクダンジョンでやってくるね!」と言い家を出た。
遥斗は不参加なので家で見る準備を整え、その時を待つ。
【初配信!】Cランクダンジョンをやりながらお話します!!
間違えて投稿しちゃいました。
消し方わからないので、今日の分はこれということで……。




