第56話.隠し部屋
『──パーティー名ハイドのメンバー、冒険者佐藤遥斗、同じく佐藤紬。ストラ隠し部屋出現条件、”1度もダメージを受けずに断世の覇王を討伐する”の達成を確認。2名を隠し部屋へ転送します』
「はっ?! え、ちょっ!」
抵抗する間もなく兄妹は光に包まれる。スーザたちから見たらただ一緒に光に包まれただけなので、まさか自分たちだけが地上に行くとは思わないだろう。
光が収まり目を開けると、やはり地上ではなかった。アストラルの隠し部屋に似ている、石造りの小部屋にいた。
『隠し部屋出現条件の達成、おめでとうございます。ストラ専用自立生命体、ターノを召喚します』
「出たよ、自立生命体……」
まさかまた隠し部屋に来れるとは思っておらず、先程あの声を聞いた時はかなり驚いた遥斗だったが、すぐにその状況を理解し、今度はまた自立生命体が出てきたことに驚く。
「ダメージを受けなかっただけで隠し部屋これるってことは、やっぱり主要ダンジョンでここが一番簡単なのが関係してるのかなぁ?」
実際関係していないことはないが、本来はここを簡単に攻略できるものではないため、隠し部屋という存在を知らせるために出現条件は易しい難易度になっているのである。
サラのときと同じように、空中に小さな光が集まり、徐々にその大きさと量が増え、2人は思わず目を閉じる。目を開くと、これまたサラと同じような手のひらサイズの小さな妖精がいた。黒髪ボブに赤い目をしていて、純白のワンピースを着ていた。
「遥斗様に紬様、だよねっ! ストラ専用イ・ティニのターノって言いま〜す!」
紬以上の元気系で、満面の笑みを浮かべながら話し始める。
「遥斗様たちはたしかアストラルの隠し部屋に行っちゃったっていうイレギュラーな方だったよね! 1年とちょっとでここの隠し部屋まで来れちゃうなんてすごすぎますよっ!」
「ありがとな。それで、ここには何があるんだ?」
「えっとね、アストラルの方を見ちゃったなら少し見劣りしちゃうかもだけど、まず1つ目! 特殊スキルの浮遊ってのを差し上げまーす!」
浮遊スキル。名前の通り空を飛べるスキルで、無属性スキルとしても存在している。それは使用者の技術によって浮遊時間が異なると言われているが、遥斗たちのレベルでも3分ほどが限界だった。
「特殊スキルってことはもしかして……?」
「想像してる通りだよっ! 正式名称は特殊スキル・無限浮遊だよっ!」
「うっわ、何その地味に便利なやつ」
「だけどこれ、今はまだ必要度がちょっと低めなんだけどね! そして2つ目! ”ストラ隠し部屋に踏み入りし者”っていう称号の付与でーす!」
(はいきた、多分世界で俺たちくらいしか持ってない称号シリーズ)
効果は後で確認するとして、2人は称号だけをもらう。
「そして次がラスト! 白の指輪でーす!」
「「白の指輪?」」
「そー! 本来の効果は別なんだけど、2人に関係するサブ効果だとつけるだけで常時移動速度上昇があるよ! ほら、覇王くん早かったじゃん?!」
「ってことは、ボスの特徴の効果が得られるってことか」
2人は指輪を受け取る。紬にはそこまで関係ない効果だったが、遥斗にとっては神アイテムと言わざるを得ないものだった。
「それじゃ、あそこの魔法陣からどうぞー!」
「え、もう終わりなの?」
「早くないか?」
「いやいや、普通は1ヶ月もいるような場所じゃないのー! あ、でもでも! その指輪があればストラに入ってから転移といったら一応ここに来れますよ! ターノとお話しくらいしかすることないけどね!」
そうして2人は魔法陣をくぐり、今度こそ地上に帰るのだった。




